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2023.10.13

クリニックはインボイス制度への登録が必要?

本記事は「クリニックはインボイス制度への登録が必要?」について株式会社クレドメディカルの西山が医師のために税理士監修のもと記載した文書です。
より詳しく知りたい先生はこちらからお問い合わせください。

 

 

 

 
この記事の監修者
クレド税理士事務所 代表税理士 後藤 景氏

AGSコンサルティング、AGS税理士法人にて、国立病院機構の会計監査・上場企業税務顧問・事業承継対策・相続対策を中心に従事。また、メガバンクに事業承継アドバイザーとして出向し、年商500億円規模の会社や医療法人・クリニックの事業承継案件を多数担当。
現在は、クレド税理士事務所の代表税理士として、クリニック向けの税務サービスや、相続・事業承継対策業務を中心に行っている。

 

〈目次〉

  1. インボイス制度とは
  2. クリニックはインボイス制度への登録が必要?
  3. クリニックがすべきインボイス制度への対応
  4. まとめ

 

1. インボイス制度とは

 

2023年10月1日以降、「インボイス(適格請求書)」をもらって保存しておかないと、仕入税額控除(納税の際に事前に支払った消費税を差し引く)を受けることができなくなるという制度です。

 

ここで気になるのが、“クリニックでインボイス制度が関与する時はどんな場面か?”ということではないでしょうか。

 

クリニックでインボイス制度が関与する場面、つまり消費税のやり取りが発生する場面は、健診や予防接種などの自費診療です。
「公費の予防接種は消費税が関係ないのでは?」という声をクリニックの先生方からお聞きすることがありますが、インフルエンザなど任意の予防接種と同様、公費で助成されているヒブワクチン等の定期予防接種も本来は自費診療のため消費税の対象となります。

 


図1.クリニックでの消費税取引

 

図1の消費税の受け渡しにおいて、クリニックと患者さん間ではインボイス制度は関与しませんが(注1)、クリニックと企業間の場合では、インボイス制度が関与します。
※注1:患者さんが個人の課税事業者である、会社の福利厚生で受診している場合を除く

 

図2. インボイス登録を行っていない場合

 

・クリニックがインボイス登録を行ってない場合
企業や医師会などから健診や予防接種の依頼を受けて、企業または医師会から支払いを受ける場合、クリニックがインボイス登録を行っていないと依頼側の企業または医師会が仕入税額控除を受けることができなくなります。
この場合、受注側(クリニック)は特に影響はありませんが、依頼側(企業や医師会)が控除を受けれないため、納税額が増えることになります。

 

・医薬品卸や経費支払い先がインボイス登録を行ってない場合
図2のように、クリニックが健診や予防接種のために医薬品卸から医薬品を仕入れた際に、医薬品卸がインボイス登録を行っていれば、仕入税額控除を適用して支払い時の消費税(10万円)を企業や患者さんから受け取った料金の消費税(20万円+2万円=22万円)から差し引くことができるので、課税対象は差額の12万円となります。一方で、医薬品卸がインボイス登録を行っていなければ、仕入税額控除を適用できず、22万円が課税対象になります。

 

2. クリニックはインボイス制度への登録が必要?

 

クリニックのインボイス登録の必要性を検討する際に確認すべきポイントは2つです。

 

1) クリニックが免税事業者、課税事業者のどちらに該当するか?

 

インボイス制度は消費税の納税を行っている事業者が控除を受けるための制度ですので、クリニックが消費税の納税を行っている(課税事業者)か、納税していない(免税事業者)か、まず確認する必要があります。

 

クリニックの顧問税理士の方に聞いていただくのが最も確かですが、「基準期間(前々年または前々年度)の自費診療の売上高が1,000万円超え」であれば課税事業者に該当します。

 

免税事業者の場合、消費税の申告・納税をしていないのでインボイス登録の必要はありません(そもそも消費税の納税がないため、消費税の納税に関する控除は関係ない)。

 

一方で、消費税の申告・納税をおこなっている課税事業者だった場合は、インボイス登録をした方が控除を受けることができるので、インボイス登録の必要性が生じます。

 

2) インボイス制度に登録しないことのデメリットはないか?

 

この点に関して特に検討が必要なのは、免税事業者のクリニックです。
課税事業者に該当するクリニックについては基本的にインボイス制度の登録をお勧めしますが(注2)、免税事業者がインボイス登録をする場合はこれまで支払わなくてよかった消費税の納税が必要になるため、税金の支払いが増えることになるでしょう。

 

そして、免税事業者のクリニックがインボイス登録をしないことでインボイス制度を利用したい企業や個人事業主(芸能人なども含む)からの自費診療の受診が減る可能性もあります。

 

こういったインボイス登録をしないことによるデメリットも考慮した上で、今後のクリニックの方針を踏まえてインボイス登録をするか否かを検討していただく必要があるかと存じます。
※注2:今後免税事業者に変更する予定がある課税事業者は手続きの関係上、注意が必要

 

3.クリニックがすべきインボイス制度への対応

 

クリニックがすべきインボイス制度への対応としては次の3点です。

 

1) クリニックがインボイス登録をするか検討
検討の結果、インボイス登録をする場合は税務署に届出書を提出して登録番号を取得する必要があります。

 

2) クリニックが発行する請求書や領収書をインボイス対応のものにする
登録番号を取得しただけでは、インボイス制度が適用されるわけでありません。クリニックが発行する請求書や領収書をインボイス対応のものにする必要があります。
下記を参考に①~⑥の条件を満たすようにしてください。

 

 

図3. 適格請求書の対応例
(引用元:国税庁、適格請求書等保存方式の概要 -インボイス制度の理解のために-)

 

3) 仕入先、経費請求先がインボイス登録をしているか確認する
クリニックがインボイス制度を活用するには、支払い先の医薬品卸や経費支払い先(飲食店なども含む)が発行する請求書・領収書がインボイス対応になっている必要があります。
もし、受け取った請求書・領収書がインボイス対応になってない場合(図3の①~⑥の条件を満たしていない場合)は先方にインボイス登録状況を確認することをお勧めします。

 

4.まとめ

 

ここまで、クリニック向けにインボイス制度について解説をしてきました。開業医の中でも特に自費診療を展開しておられるクリニック(内科、ファミリークリニック、小児科、美容皮膚科、皮膚科、形成外科など)の院長先生におかれましては、インボイス制度への登録状況や経費精算書を一度ご確認いただければと存じます。
また、免税事業者(保険診療のみ、あるいは自費診療の売上が年間1,000万円以下)のクリニックは課税対象から外れるため、仕入れ税額控除などは基本的に関係のない話になります。
ただし、患者さんが会社の福利厚生でインフルエンザの予防接種を希望する場合など、請求先が企業や個人事業主になるとインボイス対応の請求書を求められる可能性があります。
このような事態に備えて、免税事業者のクリニックにおいては自費診療の予約受付時の段階で自院がインボイス登録をしていないことを明示するのも一つの手段かと存じます。

 

 

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▼クリニック向けにインボイス制度解説!

 

▼インボイス登録クリニック向けに経費支払い時の注意事例をご紹介!

 

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