外来・在宅ベースアップ評価料について【2024年6月更新】
本記事は「外来・在宅ベースアップ評価料」について、取締役の尾﨑が医師のために記載した文書です。
より詳しく知りたい先生はこちらからお問い合わせください。
〈目次〉
1. 外来・在宅ベースアップ評価料とは
2024年の診療報酬改定で看護師等の医療関係職種(対象は32職種)について、賃上げを実施している医療機関が初診・再診時に1日ごとに算定することができます。
本コラムは無床診療所(クリニック)向けについて解説していきます。
2. 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)
外来医療又は在宅医療を実施している医療機関(医科)において、勤務する看護職員、薬剤師その他の医療関係職種の『賃金の改善を実施している場合』に算定できる。
1初診時 6点
2再診時 2点
3訪問診療時
イ 同一建物居住者以外の場合 28点
ロ 同一建物居住者の場合 7点
〔算定要件〕
・医師を除く医療に従事する職員の賃金改善を図る体制が必要。
・1と2について厚生労働省が定める施設基準に適合している場合に算定する。
〔施設基準〕
・外来医療又は在宅医療を実施している保険医療機関
・医師を除く主として医療に従事する職員(※対象職員)が勤務していること。
・対象職員は別表1に示す職員。専ら事務作業を行うものは含まれないが、医師事務作業補助者、看護補助者等が医療を専門とする職員の補助として行う事務作業をする者は含まれる。
・令和6年度及び令和7年度において対象職員の賃金の改善を実施しなければならない。
ただし、令和6年度において、翌年度の賃金の改善のために繰り越しを行う場合においてはこの限りではない。
※対象職員の賃金に役員報酬は除かれる
※定期昇給での改善は認められない
・基本給又は決まって毎月支払われる手当(※基本給)の引上げにより改善を図ることを原則とする。賞与での引上げは対象外です。
・対象職員の基本給等を令和5年度と比較して一定水準以上引き上げた場合は、『40歳未満の勤務医』及び『事務職員』等の保険医療機関に勤務する職員の賃金の改善を行うことができる。
※対象職員の賃金に役員報酬は除かれる
※定期昇給での改善は認められない
・令和6年度及び令和7年度は勤務する職員の賃金の改善計画を作成していること。
・前号の計画に基づく職員の賃金の改善状況について、定期的に地方厚生局長等に報告すること。
3. 外来・在宅ベースアップ評価料の対象職員とは
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)に記載される賃上げ対象職員とは
薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、看護補助者、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、言語聴覚士、義肢装具士、歯科衛生士、歯科技工士、歯科業務補助者、診療放射線技師、診療エックス線技師、臨床検査技師、衛生検査技師、臨床工学技士、管理栄養士、栄養士、精神保健福祉士、社会福祉士、介護福祉士、保育士、救急救命士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師、柔道整復師、公認心理師、診療情報管理士、医師事務作業補助者、その他医療に従事する職員(医師、歯科医師を除く)
の32職種が該当します。
4. 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)
無床診療所(クリニック)において、勤務する看護職員、薬剤師その他の医療関係職種の『賃金の改善を強化する必要がある医療機関において、賃金の改善を実施している場合』に算定できる。
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)(1日につき)
1外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)1
イ初診又は訪問診療を行った場合 8点
ロ再診時 1点
2外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)2
イ初診又は訪問診療を行った場合 16点
ロ再診時 2点
↓
8外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)8
イ初診又は訪問診療を行った場合 64点
ロ再診時 8点
〔算定要件〕
・医師を除く医療に従事する職員の賃金の改善を図る体制が必要。
・厚生労働省が定める施設基準に適合している場合、当該基準に係る区分に従い算定する。
・初診については外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の1又は3を算定している患者について、再診については外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の2を算定している患者について、それぞれの所定点数を算定する。
〔施設基準〕
・入院基本料、特定入院料又は短期滞在手術等基本料1を除く短期滞在手術等基本料の届出を行っていない保険医療機関であること。
・外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の届出を行っている保険医療機関であること。
・外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)により算定される点数の見込みの10倍の数が、対象職員の給与総額の1分2厘未満であること。
・外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)の保険医療機関ごとの区分は、保険医療機関における対象職員の給与総額、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)により算定される点数の見込み並びに外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)の算定回数の見込みを用いて算出した数【A】に基づき、別表2に従い該当する区分のいずれかを届け出ること。
・上記について、「対象職員の給与総額」は、直近12か月の1月あたりの平均の数値を用いること。
・外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)の算定回数の見込みは、初診料等の算定回数を用いて計算し、直近3か月の1月あたりの平均の数値を用いること。
・毎年3、6、9、12月に上記の算定式により新たに算出を行い、区分に変更がある場合は地方厚生局長等に届け出ること。
・ただし、前回届け出た時点と比較して、直近3か月の【A】、対象職員の給与総額、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)により算定される点数の見込み並びに外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)の算定回数の見込みのいずれの変化も1割以内である場合においては、区分の変更を行わないものとする。
・当該評価料を算定する場合は、令和6年度及び令和7年度においては、対象職員の賃金の改善を実施しなければならない。ただし、令和6年度において、翌年度の賃金の改善のために繰り越しを行う場合においてはこの限りではない。
※対象職員の賃金に役員報酬は除かれる
※定期昇給での改善は認められない
・上記について、基本給、手当、賞与等のうち対象とする賃金項目を特定した上で行い、基本給又は決まって毎月支払われる手当(※基本給)の引上げにより改善を図ることを原則とする。賞与での引上げは対象外です。
・前号の計画に基づく職員の賃金の改善状況について、定期的に地方厚生局長等に報告すること。
・対象職員が常勤換算で2人以上勤務していること。ただし、特定地域に所在する保険医療機関にあっては、当該規定を満たしているものとする。
・主として保険診療等から収入を得る保険医療機関であること。
5.外来・在宅ベースアップ評価料の疑義解釈
外来・在宅ベースアップ評価料に関する疑義解釈で主にクリニック(無床診療所)に関係する内容を抜粋してご紹介します*注1。
【疑義解釈(その1)より】
Q.「看護職員処遇改善評価料の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について(その1)」(令和4年9月5日事務連絡)別添の問 18 において、「A500」看護職員処遇改善評価料について、賃金改善に伴い増加する賞与、時間外勤務手当等、法定福利費等の事業者負担分及び退職手当については、「基本給等の引き上げにより増加した分については、賃金改善の実績額に含めてよい。ただし、ベア等には含めないこと。」とされていたが、ベースアップ評価料についても同様か。
A.ベースアップ評価料は、対象職員のベア等及びそれに伴う賞与、時間外手当、法定福利費(事業者負担分等を含む)等の増加分に用いること。
Q.ベースアップ評価料において、賃金改善に伴い増加する法定福利費等について、どのような範囲を指すのか。
A.次の①及び②を想定している。
① 健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、児童手当拠出金、雇用保険料、労災保険料等における、賃金改善に応じた増加分(事業者負担分を含む。)
② 退職手当共済制度等における掛金等が増加する場合の増加分(事業者負担分を含む。)
Q.ベースアップ評価料の施設基準において、「決まって毎月支払われる手当」を支払う場合に、その金額を割増賃金(超過勤務手当)や賞与に反映させる必要はあるのか。
A.労働基準法第 37 条第5項及び労働基準法施行規則第 21 条で列挙されている手当に該当しない限り、割増賃金の基礎となる賃金に算入して割増賃金を支払う必要がある。当該評価料に係る「決まって毎月支払われる手当」については、その性質上、上記手当には該当しないことから、割増賃金の基礎となる賃金に算入して割増賃金を支払う必要がある。 なお、「決まって毎月支払われる手当」をいわゆる賞与の算定に際して反映させるか否かは、各医療機関の定めによる。
Q.ベースアップ評価料において、対象職員の賃金の改善措置を実施する具体的方法(金額・割合等)について、職員に応じて区分することは可能か。
A.可能。各保険医療機関又は訪問看護ステーションの実情に応じて、賃金の改善措置の方法を決定すること。
Q.ベースアップ評価料において、基本給等について、常勤職員へは当月払いし、非常勤職員へは翌月払いしている場合、賃金の実績額及び改善実施期間はどのように判断すべきか。
A.いずれについても、基本給等の支払われた月ではなく、対象となった月で判断する。
Q.ベースアップ評価料についての施設基準における対象職員には、「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」別表4に含まれる職種であって、派遣職員など、当該保険医療機関又は当該訪問看護ステーションに直接雇用されていないものも含むのか。
A.対象とすることは可能。 ただし、賃金改善を行う方法等について派遣元と相談した上で、「賃金改善計画書」や「賃金改善実績報告書」について、対象とする派遣労働者を含めて作成すること。
Q.ベースアップ評価料において、賃金の改善については、算定開始月から実施する必要があるか。
A.原則算定開始月から賃金改善を実施し、算定する月においては実施する必要がある。なお、令和6年4月より賃金の改善を行った保険医療機関又は訪問看護ステーションについては、令和6年4月以降の賃金の改善分についても、当該評価料による賃金改善の実績の対象に含めてよい。
ただし、届出時点において「賃金改善計画書」の作成を行っているものの、条例の改正が必要であること等やむを得ない理由により算定開始月からの賃金改善が実施困難な場合は、令和6年 12 月までに算定開始月まで遡及して賃金改善を実施する場合に限り、算定開始月から賃金改善を実施したものとみなすことができる。
Q.ベースアップ評価料の施設基準において、対象職員に対して、賃金改善を実施する方法等について、『賃金改善計画書』の内容を用いて周知するとともに、就業規則等の内容についても周知することとされているが、周知の具体的方法如何。
A.例えば、「賃金改善計画書」及び就業規則等を書面で配布する方法や職員が確認できる箇所に掲示する方法が挙げられる。
Q.外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の施設基準において、令和6年度に対象職員の基本給等を令和5年度と比較して2分5厘以上引き上げ、令和7年度に対象職員の基本給等を令和5年度と比較して4分5厘以上引き上げた場合については、40 歳未満の勤務医、勤務歯科医、事務職員等の当該保険医療機関又は当該訪問看護ステーションに勤務する職員の賃金(役員報酬を除く。)の改善(定期昇給によるものを除く。)を実績に含めることができることとされているが、基本給等の引き上げ率についてどのように考えればよいか。
A.引き上げ率の確認については、次のいずれかの方法で行うこと。
① 給与表等に定める対象職員の基本給等について、令和5年度と比較し、令和6年度に 2.5%又は令和7年度に 4.5%の引き上げになっているかを確認する。
② 以下の計算式により基本給等の改善率を算出する。
{(当該年度において基本給等が引き上げられた後の対象職員の1月当たりの基本給等の総額)- (令和5年度における1月当たりの対象職員の基本給等の総額)- (定期昇給がある場合にあっては1月あたりの対象職員の基本給等の引き上げ額のうち定期昇給相当額の総額)}÷(令和5年度における1月当たりの基本給等の総額)×100(%)
Q.ベースアップ評価料において、「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和6年3月5日保医発 0305第6号)の別表4のミ「その他医療に従事する職員(医師及び歯科医師を除く。)」とは、具体的にどのような職員か。
A.別表4のア~マに該当しない職種の職員であって、医療機関における業務実態として、主として医療に従事しているものを指す。ただし、専ら事務作業(医師事務作業補助者、歯科業務補助者、看護補助者等が医療を専門とする職員の補助として行う事務作業を除く。)を行うものは含まれない。
Q.ベースアップ評価料の施設基準において、「対象医療機関は、当該評価料の趣旨を踏まえ、労働基準法等を遵守すること。」とあるが、具体的にどのような対応が必要か。
A.当該評価料による賃金改善を行うための就業規則等の変更について労働者の過半数を代表する者の意見を聴くことや、賃金改善に当たって正当な理由なく差別的な取扱いをしないことなど、労働基準法やその他関係法令を遵守した対応が必要である。 その他、賃金改善を行うための具体的な方法については、労使で適切に話し合った上で決定することが望ましい。
Q.ベースアップ評価料について、区分変更を行う場合はどのような届出が必要か。
A.保険医療機関(医科)については、「特掲診療料の施設基準等に係る届出書」及び「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)に係る届出書添付書類」の届出が必要。
Q.給与表等の存在しない医療機関において、令和5年度と令和6年度及び令和7年度を比較して対象職員の変動がある場合、計算式中の対象職員の基本給等の総額について、どのように考えたらよいか。
A.令和5年度及び令和6年度又は令和7年度のいずれの年度においても在籍している対象職員について、計算式に則り算出を行う。 ただし、いずれの年度においても在籍している対象職員が存在しない等の理由でこの方法による算出が困難な場合においては、各年度における全ての対象職員の基本給等の総額を用いて算出を行ってもよい。
Q.外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)の施設基準において、「常勤換算2名以上の対象職員が勤務していること。」とされているが、当該保険医療機関又は当該訪問看護ステーションの職員の退職又は休職等により、要件を満たさなくなった場合についてどのように考えれば良いか。
A.常勤換算の職員が2名を下回った場合は、速やかに地方厚生(支)局長に届出の変更を行い、当該変更の届出を行った日の属する月の翌月から算定を行わないこと。ただし、暦月で3か月を超えない期間の一時的な変動の場合はこの限りではない。
Q.外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)の対象となる職員には、労働基準法(昭和 22 年法律第 49 号)第 65 条に規定する休業、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第 76 号。以下「育児・介護休業法」という。)第2条第1号に規定する育児休業、同条第2号に規定する介護休業又は育児・介護休業法第 23 条第2項に規定する育児休業に関する制度に準ずる措置若しくは育児・介護休業法第 24 条第1項の規定により同項第2号に規定する育児休業に関する制度に準じて講ずる措置による休業を取得中の職員等も含むのか。
A.含まない。
【疑義解釈(その2)より】
Q.「診療報酬の算定方法」別表第一医科診療報酬点数表(以下「医科点数表」という。)における「O000」及び医科点数表における「O100」外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)、「O101」外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)の施設基準における「賃金の改善を実施する項目以外の賃金項目(業績等に応じて変動するものを除く。)の水準を低下させてはならないこと。」について、新型コロナウイルス感染症対応を行った場合における手当について、感染状況を踏まえて減額・廃止する場合は、業績等に応じて変動するものとして賃金項目の水準低下には当たらないものと考えてよいか。
A.差し支えない。
Q.「O101」外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)の施設基準において「常勤換算2名以上の対象職員が勤務していること。」とあるが、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第 76 号)第 23 条第1項若しくは第3項又は第 24 条の規定による措置が講じられ、当該労働者の所定労働時間が短縮された者の場合、常勤とみなしてよいか。
A.週 30 時間以上勤務している者であれば、常勤とみなすこと。
Q.ベースアップ評価料の施設基準において、「対象職員のベア等及びそれに伴う賞与、時間外手当、法定福利費(事業者負担分等を含む)等の増加分に用いること。」とあるが、時給制で労働する対象職員について、時給の引き上げによって賃上げを実施してもよいか。
A.差し支えない。また、この場合において、労働時間が短縮したことにより月の給与総額が減少していても、差し支えない。
ただし、届出等に係る「対象職員の給与総額」の記入においては、実際に対象職員に対し支払った給与総額を用いること。
【疑義解釈(その3)より】
Q.新設した医療機関において、「診療報酬の算定方法」別表第一医科診療報酬点数表(以下「医科点数表」という。)における「O100」外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)、「O101」外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)の届出を行うに当たって、対象職員に対する給与の支払い実績は必要か。
A.必要。ベースアップ評価料の種類に応じて、給与の支払い実績として必要な期間は以下のとおりとする。
○ 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)については届出前の最低1月における給与の支払い実績が必要。
○ 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)については、届出様式における「前年3月~2月」、「前年6月~5月」、「前年9月~8月」、「前年 12 月~11 月」とあるのは、それぞれ「前年 12月~2月」、「3月~5月」、「6月~8月」、「9月~11 月」と読み替え、当該期間の給与の支払い実績が必要。
Q.保険医療機関が合併又は分割等を行ったために、ベースアップ評価料の届出に当たって対象職員の人数及び給与総額が実態と大きく異なる場合について、どのように考えたらよいか。
A.ベースアップ評価料の届出に当たっては、原則として合併又は分割等を行った後の保険医療機関における対象職員の人数及び給与総額に基づくこと。ただし、合併又は分割する前の対象職員の人数及び給与総額を合算又は按分することにより、当該保険医療機関の実態に応じた人数及び給与総額を計算できる場合には、当該人数及び給与総額を用いて差し支えない。
Q.ベースアップ評価料と政府目標(令和6年度+2.5%、令和7年度+2.0%のベースアップ)の関係如何。
A.当該評価料の算定にあたっては、施設基準において、その収入の全額を対象職員のベースアップ等及びそれに伴う賞与、時間外手当、法定福利費(事業者負担分等を含む)等の増加分に用いることが要件とされている。その上で、さらに当該評価料以外の収入や、賃上げ促進税制などの活用により、政府目標の達成を目指すことが望ましい。
Q.ベースアップ評価料による収入を対象職員の賃上げに用いる場合、例えば現行の賃金水準が低い職員・職種に重点的に配分するなど、対象職員ごとに賃金改善額に差をつけてよいか。
A.差し支えない。
Q.ベースアップ評価料の届出及び賃金改善計画書若しくは賃金改善実績報告書の作成を行うに当たり、対象職員の給与総額に法定福利費等の事業主負担分を含めて計上するに当たって、「O000」看護職員処遇改善評価料と同様に、法定福利費が必要な対象職員の給与総額に 16.5%(事業主負担相当額)を含めて計上してもよいか。
A.差し支えない。
【疑義解釈(その4)より】
Q.外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の施設基準において、令和6年度に対象職員の基本給等を令和5年度と比較して2分5厘以上引き上げ、令和7年度に対象職員の基本給等を令和5年度と比較して4分5厘以上引き上げた場合については、40 歳未満の勤務医、勤務歯科医、事務職員等の当該医療機関に勤務する職員の賃金(役員報酬を除く。)の改善(定期昇給によるものを除く。)を実績に含めることができることとされているが、どの時点から 40 歳未満の勤務医、勤務歯科医、事務職員等の賃金の改善を行うことができるのか。
A.令和6年度に対象職員の基本給等を令和5年度と比較して 2.5%以上引き上げた月又は令和7年度に対象職員の基本給等を令和5年度と比較して4.5%以上引き上げた月以降に可能となる。具体的には、以下の時点以降から 40 歳未満の勤務医、勤務歯科医、事務職員等の賃金の改善を行うことが考えられる。
①令和6年度において、「賃金改善計画書」の「Ⅳ.対象職員(全体)の基本給等に係る事項」に示す「(19)ベア等による賃金増率」で算出される値を 2.5%以上として、当該計画書を地方厚生(支)局長に届け出た上で、算定を開始した月。
②患者数等の変動等により当該評価料による収入が、「賃金改善計画書」において予定していた額を上回った場合において、ベースアップ評価料を算定した月まで遡及して、対象職員の基本給等を令和5年度と比較して令和6年度に 2.5%以上引き上げ、令和7年度に 4.5%以上引き上げた時点。
なお、令和6年4月より賃金の改善を行った保険医療機関については、令和6年4月以降の賃金の改善分についても、当該評価料による賃金改善の実績の対象に含めてよい。
Q.「ベースアップ評価料」を算定する医療機関に勤務する職員が、介護報酬における「介護職員等処遇改善加算」又は障害福祉サービス等報酬における「福祉・介護職員等処遇改善加算」を算定する介護サービス事業所等の従事者を兼務している場合であって、当該加算を原資とする賃金改善の対象となっている場合について、ベースアップ評価料における対象職員及び給与総額はどのように考えればよいか。
A.当該医療機関における業務実態として、主として医療に従事しているものについて、対象職員として含めて差し支えない。
ただし、対象職員ごとの給与総額について、業務実態に応じて常勤換算方法等により按分して計算することを想定している。
また、「介護職員等処遇改善加算」及び「福祉・介護職員等処遇改善加算」による賃上げ分については、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)の算出の際に用いる「対象職員の給与総額」の計算にあたり、含めないものとする。 なお、当該「介護職員等処遇改善加算」及び「福祉・介護職員等処遇改善加算」による賃上げ分については、ベースアップ評価料に係る「賃金改善計画書」及び「賃金改善実績報告書」における賃金改善の見込み額及び実績額の記載において、ベースアップ評価料による算定金額以外の適切な欄に記載することとする。
なお、令和6年4月及び5月分の「介護職員処遇改善加算」、「介護職員等特定処遇改善加算」、「介護職員等ベースアップ等加算」、「福祉・介護職員処遇改善加算」、「福祉・介護職員等特定処遇改善加算」及び「福祉・介護職員等ベースアップ等加算」についても、同様の取扱いとする。
【疑義解釈(その7)より】
Q.ベースアップ評価料について、患者等に対して説明する場合は、どのような対応をすればよいか。
A.厚生労働省のホームページに掲載しているリーフレット等を活用し、適切な対応をお願いしたい。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00053.html
【疑義解釈(その8)より】
Q.「疑義解釈資料の送付について(その1)」(令和6年3月 28 日事務連絡)別添2の問6において、「届出時点において『賃金改善計画書』の作成を行っているものの、条例の改正が必要であること等やむを得ない理由により算定開始月からの賃金改善が実施困難な場合は、令和6年 12 月までに算定開始月まで遡及して賃金改善を実施する場合に限り、算定開始月から賃金改善を実施したものとみなすことができる。」とあるが、「条例の改正が必要であること等やむを得ない理由」に労使交渉を行っているものの、やむを得ず妥結していない場合も含まれるか。
A.含まれるが、届出時点において「賃金改善計画書」の提出が必要。ただし、「疑義解釈資料の送付について(その2)」(令和6年4月 12 日事務連絡)別添2の問5のとおり、労使交渉妥結後に修正した場合は、「賃金改善計画書」含む届出様式一式を速やかに再度地方厚生(支)局長に届け出ること。
Q.「疑義解釈資料の送付について(その1)」(令和6年3月 28 日事務連絡)別添2の問6において、「原則算定開始月から賃金改善を実施し、算定する月においては実施する必要がある。なお、令和6年4月より賃金の改善を行った保険医療機関又は訪問看護ステーションについては、令和6年4月以降の賃金の改善分についても、当該評価料による賃金改善の実績の対象に含めてよい。」とあるが、令和6年7月以降に届出を行った場合も令和6年4月以降の賃金改善分について、当該評価料による賃金改善の実績の対象に含めてよいか。
A.令和6年6月から令和7年3月までに算定を開始した場合、令和6年4月以降の賃金改善分について、当該評価料による賃金改善の実績の対象に含めてよい。
※注1:疑義解釈の内容は令和6年6月20日時点「疑義解釈(その9)」までの情報となります。
疑義解釈その5、9には主にクリニックに関する外来・在宅ベースアップ評価料の記載がなかったため、本コラムに記載しておりません。疑義解釈資料の最新情報は以下のURLよりご確認いただけます。
参考資料:厚生労働省HP「令和6年度診療報酬改定について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00045.html
6. まとめ
外来・在宅ベースアップ評価料は、初診・再診時に算定できます。対象職員の給与総額の1.2%が外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)でできない場合は、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)の算定が可能になります。
対象職員の賃金には役員報酬が除かれていたり、通常の定期昇給や賞与での賃上げが認められていないなど注意しなければならないポイントがいくつもあります。算定する医院は正確な対応が求められます。
この記事が今後の医院経営にお役立てできれば幸いでございます。
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