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2021.04.09
医科外来等感染症対策実施加算について
本記事では「医科外来等感染症対策実施加算」について、小児科コンサルタントの池田が医師のために記載した文書です。
より詳しく知りたい先生はこちらからお問い合わせください。
<目次>
- 医科外来等感染症対策実施加算とは
- 医科外来等感染症対策実施加算の算定要件
- 医科外来等感染症対策実施加算の対象者
- 医科外来等感染症対策実施加算の算定できる期間
- 必要な感染予防策とは
- 医科外来等感染症対策実施加算と電話再診
- 医科外来等感染症対策実施加算算定時の注意点 (併算定できる・できないについて)
1.医科外来等感染症対策実施加算とは
新型コロナウイルス感染拡大に伴い発出された
「新型コロナウイルス感染症にかかる診療報酬上の臨時的な取り扱いについて(その35)(厚生労働省保健局医療課, 2021.2.26)」
における時限的な加算であり、
外来受診の患者に対して、特に必要な感染予防策を講じた上で診療を行う場合、診療報酬に5点(「A001 再診料」注 10 に規定する時間外対応加算1に相当する点数)を加算するというものです。
2.医科外来等感染症対策実施加算の算定要件
医科外来等感染症対策実施加算については、特別な届け出は不要ですが、
「その診療等に当たっては、患者及び利用者又はその家族等に対して、院内感染防止等に留意した対応を行っている旨を十分に説明すること」が義務付けられています。
院内の掲示や配布資料を使用するなど、受付時に患者に説明を行うことが必要です。
3.医科外来等感染症対策実施加算の対象者
基本的な算定対象は、外来受診を主としているクリニックでは、初診、再診の患者となります。
さらに在宅訪問診療を行う場合にも算定が可能です。押し並べて言うとほとんどの患者に算定が可能ということです。
医科外来等感染症対策実施加算は下記の算定を行う際に、算定が可能です。
※ただし、コ、 サ、スからチまで及びテについては、アからウまでに該当する点数と併算定しない場合にのみ加算が可能です。
ア 初診料
イ 再診料(注9に規定する電話等による再診を除く。)
ウ 外来診療料
エ 小児科外来診療料
オ 外来リハビリテーション診療料
カ 外来放射線照射診療料
キ 地域包括診療料
ク 認知症地域包括診療料
ケ 小児かかりつけ診療料
コ 救急救命管理料
サ 退院後訪問指導料
シ 在宅患者訪問診療料(Ⅰ)(Ⅱ)
ス 在宅患者訪問看護・指導料、同一建物居住者訪問看護・指導料
セ 在宅患者訪問点滴注射管理指導料
ソ 在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料
タ 在宅患者訪問薬剤管理指導料
チ 在宅患者訪問栄養食事指導料
ツ 在宅患者緊急時等カンファレンス料
テ 精神科訪問看護・指導料
4.医科外来等感染症対策実施加算の算定できる期間
医科外来等感染症対策実施加算(5点)は、令和3年4月1日から令和3年9月30日まで算定可能となっています(2021年4月1日時点)。
※但し、今後の感染症流行状況によっては、算定可能期間が変更となる可能性もありますので、変更となった場合には本項でも最新情報に更新をします。
5.必要な感染予防策とは
多くの先生方が算定にあたり迷われる点が、「特に必要な感染予防策を講じた上で診療を行う」とあるが、具体的にどのような感染予防策を取らなければならないのかという点です。
こちらは、『「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」等を参考に、感染防止等に 留意した対応を行うこと(別添)』とされています。
具体例として、
「状況に応じて、飛沫予防策や接触予防策を適切に行う等、感染防止に十分配慮して患者及び利用者への診療等を実施すること。」
「新型コロナウイルス感染症の感染予防策に関する職員への周知を行うこと。」
「病室や施設等の運用について、感染防止に資するよう、変更等に係る検討を行うこと。」
が挙げられていますが、実際に診療を行う際の具体的な予防策が不明瞭な印象を受けます。
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き(第4.1版)」に基づくと、初期対応時には、標準予防策を講じるとされていますが、この“標準予防策とは何か”という点で多くの先生が迷われています。
「新型コロナウイルス感染症に対する感染管理(国立感染症研究所, 2020.10.2)」では、「医療従事者は、標準予防策を遵守する。つまり、呼吸器症状のある患者の診察時にはサージカルマスクを着用し、手指衛生を遵守する。COVID-19 が流行している地域では、呼吸器症状の有無に関わらず患者診察時にサージカルマスクを着用することを考慮する。(後略)」
とあるため、端的に言うとサージカルマスクの着用、手指衛生の遵守が一つの基準と考えられます。
参照元「厚労省|新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き(PDF)」
新型コロナウイルス感染症を疑った場合には、COVID-19(疑い含む)患者に検体採取などの手技を行う際には、サージカルマスクに加えてフェイスガードやガウンなどの着用が求められます。
検体採取の方法によって、求められる個人防護具の基準は異なるため、注意が必要です。
さらに気道吸引、気管挿管・抜管、 NPPV装着、気管切開術、心肺蘇生、用手換気、気管支鏡検査、ネブライザー療法、誘発採痰といったエアロゾルの発生しやすい場面においては、ゴーグルやマスク、手袋、長袖ガウン、帽子などの着用が求められるだけでなく、N95マスクの着用が推奨されています。
6.医科外来等感染症対策実施加算と電話再診
医科外来等感染症対策実施加算については、外来診療や在宅医療における体制整備を評価する加算のため、「本節3.医科外来等感染症対策実施加算の対象者」に「イ 再診料(注9に規定する電話等による再診を除く。)」と記載の通り、電話再診時には算定ができません。
また、現在時限的に初診患者に対しても可能となっている、電話や情報通信機器を用いた診療についても同様に算定ができません。
7.医科外来等感染症対策実施加算算定時の注意点
加算可能な基本診療料、管理料については本節3.説明した通りですが、医科外来等感染症対策実施加算は「院内トリアージ実施料(300点)」「乳幼児感染予防加算(100点)」と併算定が可能なため、それぞれ要件を満たす場合には、合計で405点の加算となります。
看護職員が電話等で病状確認や療養指導等を行い訪問看護・指導体制充実加算のみを算定した場合、医科外来等感染症対策実施加算を算定することはできません。
やはり電話での対応のみの場合は、算定ができないということです。
医科外来等感染症対策実施加算をはじめ、院内トリアージ実施料、乳幼児感染予防加算といった特例的な加算については、患者の理解を求めるだけでなく、スタッフ側の理解も重要です。
スタッフが理解しておらず、患者から説明を求められた場合にはクレームやトラブルの原因となる危険性があります。
こうしたリスクを避けるためにも、算定を行う場合には患者にどのように説明するのか、オペレーションを崩さないように説明するにはどうすればよいかを検討することも重要です。
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