厚生労働省は今回の診療報酬改定での小児かかりつけ診療料の変更点について具体的な内容を以下のように示しています。
1.発達障害を疑う児の診察等を行うこと、不適切な養育にも繋がりうる育児不安等の相談に乗ること、医師が発達障害等に関する適切な研修及び虐待に関する適切な研修を受講していることが望ましいことを要件に追加する。
2.上記の見直し、新型コロナウイルスの検査の取扱いの変更及び処方等に係る評価体系の見直し等を踏まえ、小児かかりつけ診療料の評価を見直す。
評価料の見直しについて、改定前と改定後の点数比較を以下の表に示します。
■ 小児かかりつけ診療料の診療報酬点数1
(改定前)
処方箋交付する場合 初診時641点 再診時448点
処方箋交付しない場合 初診時758点 再診時566点
(改定後)
処方箋交付する場合 初診時652点 再診時458点
処方箋交付しない場合 初診時769点 再診時576点
■ 小児かかりつけ診療料の診療報酬点数2
(改定前)
処方箋交付する場合 初診時630点 再診時437点
処方箋交付しない場合 初診時747点 再診時555点
(改定後)
処方箋交付する場合 初診時641点 再診時447点
処方箋交付しない場合 初診時758点 再診時565点
すなわち、今回の診療報酬改定を受けて、
初診料は11点、再診料は10点がそれぞれ加点となりました。
小児かかりつけ診療料は同じ保険医療機関を4回以上受診した未就学児を対象としています。
この4回以上受診とは予防接種、乳幼児健診等の保険外の受診も含みます。
また未就学児とは6歳未満から(5歳のうちに)小児かかりつけ診療料を算定している場合に限っては小学校入学(3月末)まで算定することができます。
同日に、同一患者を2回以上診療した場合でも、1日につき小児かかりつけ診療料1回分の点数しか算定できません。
同月に、院外処方箋を交付した日がある場合は、該当月においては、「処方箋を交付する場合」の 点数で算定します。
ただし、院外処方箋を交付している患者に対し、夜間緊急の受診の場合等やむを得ない場合において院内投薬を行う場合は、「処方箋を交付しない場合」の点数を算定できるが、理由を診療報酬明細書の摘要欄に記載しなければなりません。
そして保険医療機関において院内処方を行わない場合は、「処方箋を交付する場合」 の点数を算定します。
もちろん小児かかりつけ診療料を算定した場合は、小児科外来診療料の算定はできません。
また、今回の診療報酬改定では算定要件が追加となり、施設基準も変更になっているため注意が必要です。
まずは、算定要件の変更点について解説します。
2.小児かかりつけ診療料の算定要件、追加点
今回の診療報酬改定では、算定にあたり必要な指導の内容が追加されました。
従来は以下の内容でしたが、今回からは2件の要件が追加となります。
(改定前)
a)急性疾患を発症した際の対応、アトピー性皮膚炎、喘息、その他乳幼児期に頻繁にみられる慢性疾患の管理等について、かかりつけ医として療養上必要な指導及び診療を行うこと。
b)他の保険医療機関と連携し、患者が受診している医療機関を全て把握するとともに、必要に応じて専門的な医療を必要とする際の紹介等を行うこと。
c)患者の健康診査の受診状況及び受診結果を把握し、発達段階に応じた助言・指導を行い、保護者からの健康相談に応じること。
d)患者の予防接種の実施状況を把握するとともに、予防接種の有効性・安全性に関する指導やスケジュール管理等に関する指導を行うこと。
e)小児かかりつけ診療料を算定する患者からの電話等による緊急の相談等に対しては、原則として当該保険医療機関において、常時対応を行うこと。ただし、以下のいずれかの要件を満たす常勤の小児科医が配置された医療機関においては、夜間(深夜を含む)及び休日の相談等について、当該保険医療機関での対応に代えて、地域において夜間・休日の小児科外来診療を担当する医療機関又は都道府県等が設置する小児医療に関する 電話相談の窓口(#8000 等)を案内することでも可能であること。
1)在宅当番医制等により地域における夜間・休日の小児科外来診療に月1回以上の頻度で協力する常勤の小児科医である。
2)直近1年間に、都道府県等が設置する小児医療に関する電話相談の窓口(#8000等)において、相談対応者として1回以上協力したことのある常勤の小児科医である。
・かかりつけ医として、上記a)からe)までに掲げる指導等を行うことを患者に対して各医療機関において作成した書面を交付して説明し、同意を得ること。また、小児かかりつけ医として上記a)からe)までに掲げる指導等を行っている旨を、当該保険医療機関の外来受付等の見やすい場所に掲示していること。
上記が従来の指導内容ですが、今回の診療報酬改定では以下の2点が追加となりました。
(算定要件に追加された指導内容)
・発達障害の疑いがある患者について、診療及び保護者からの相談に対応するとともに、必要に応じて専門的な医療を要する際の紹介等を行うこと。
・不適切な養育にも繋がりうる育児不安等の相談に適切に対応すること。
また、施設基準にも新設の内容が追加されました。
3.小児かかりつけ診療料 1.2 の施設基準、追加点
■小児かかりつけ診療料1の施設基準
(改定前)
(1)a)小児科を標榜している医療機関であること。
b)当該保険医療機関において、小児の患者のかかりつけ医として療養上必要な指導等を行うに
つき必要な体制が整備されていること。
c)当該保険医療機関の表示する診療時間以外の時間において、患者又はその家族等から電話等
により療養に関する意見を求められた場合に、十分な対応ができる体制が整備されていること。
(2)時間外対応加算1又は2の届出保険医療機関であること。
(3)(1)に掲げる医師が、以下の項目のうち、2つ以上に該当すること。
①市町村を実施主体とする乳幼児の健康診査を実施していること
②定期予防接種を実施していること
③過去 1 年間に 15 歳未満の超重症児又は準超重症児に対して在宅医療を提供した実績を有して
いること
④幼稚園の園医、保育所の嘱託医又は小学校若しくは中学校の学校医に就任していること
※一般の小児科医院を①、②を満たしているため算定要件が緩和された。
※④において2020年の診療報酬改定から幼稚園の園医又は保育所の嘱託医の他、小学校若しく
は中学校の学校医が加わった。
(改定後)
(1) 変更なし
(2) 区分番号「B001-2」小児科外来診療料を算定していること。
(3)・(4) 変更なし
(5) (1)に掲げる医師は、発達障害等に関する適切な研修及び虐待に関する適切な研修を修了していることが望ましい。
■小児かかりつけ診療料2の施設基準
(改定前)
(1)a)小児科を標榜している医療機関であること。
b)当該保険医療機関において、小児の患者のかかりつけ医として療養上必要な指導等を行うに
つき必要な体制が整備されていること。
c)当該保険医療機関の表示する診療時間以外の時間において、患者又はその家族等から電話等
により療養に関する意見を求められた場合に、必要な対応ができる体制が整備されていること。
(2)次のいずれかの基準を満たしていること。
①時間外対応加算3に係る届出を行っていること。
②在宅当番医制等により、初期小児救急医療に参加し、休日又は夜間の診療を年6回以上の頻度
で行っていること。
(改定後)
(1)小児かかりつけ診療料1の施設基準(1),(2),(4)及び(5)の基準を満たしていること
(2)変更なし
上記のように、施設基準として小児科外来診療料を算定していることが追加されたことで、出来高の小児科医院では小児かかりつけ診療料を算定することはできなくなりました。
また、発達障害等に関する適切な研修及び虐待に関する適切な研修の修了に関しては「望ましい」との記載のため、現状必須では無いようですが、受講された方が安心と言えるでしょう。
4.小児かかりつけ診療料と同時に算定できる点数、追加されたもの
赤字のものが2024年の診療報酬改定で追加された内容です。
- 小児抗菌薬適正使用支援加算
- 時間外加算・深夜加算・休日加算
- 小児特例時間外加算
- 機能強化加算
- 地域連携小児夜間・休日診療料
- 院内トリアージ実施料
- 夜間休日救急搬送医学管理料
- 診療情報提供料(Ⅰ)
- 診療情報提供料(Ⅱ)
- 連携強化診療情報提供料
- 電子的診療情報評価料
- 往診料(注1~3までに規定する加算を含む)
-
第14部その他(外来・在宅ベースアップ評価料等)
-
医療情報取得加算1.2.3.4
-
医療DX推進体制整備加算
5.小児抗菌薬適正使用支援加算
小児科を担当する専任の医師が急性気道感染症又は急性下痢症により受診した患者で診察の結果、抗菌薬の投与の必要性が認められないため、抗菌薬を処方せず、療養上必要な指導及び検査結果の説明を行い、文書により説明内容を提供した場合小児かかりつけ診療料の初診時に、小児抗菌薬適正使用支援加算として、月1回に限り80点を加算できます。
なお、インフルエンザウイルス感染の患者又はインフルエンザウイルス感染の疑われる患者については算定できません。
そのため小児かかりつけ診療料を算定する場合、抗菌薬の適正な使用を推進するため、「抗微生物薬適正使用の手引き」(厚生労働省健康局結核感染症課)を参考に、抗菌薬の適正な使用の普及啓発に取り組まなければいけません。
6.まとめ
最後に小児かかりつけ診療料のおさらいです。
2024年度(令和6年)の診療報酬改定で小児かかりつけ診療料の点数は従来と比べて初診時11点、再診時10点が加点されました。
また、算定要件には、指導すべき内容として「発達障害の疑いがある患者について、診療及び保護者からの相談に対応するとともに、必要に応じて専門的な医療を要する際の紹介等を行うこと。」「不適切な養育にも繋がりうる育児不安等の相談に適切に対応すること。」が追加されました。
最後に施設基準として、「小児科外来診療料を算定していること」「発達障害等に関する適切な研修及び虐待に関する適切な研修を修了していることが望ましい。」ことが追加されました。
今回の改定により、小児かかりつけ診療料を算定するためには、小児科外来診療料の算定をすることが前提条件となりました。
そのため、これまで小児かかりつけ診療料のみを算定していた小児科医院では注意が必要です。
今後も小児かかりつけ診療料の算定をお考えの院長先生におかれましては、6月までに小児科外来診療料の届出をご提出いただきご準備ください。
小児科外来診療料のより詳しい情報はこちらのコラムで解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。
この記事が今後の医院経営にお役立てできれば幸いでございます。
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