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2021.09.24

地域包括診療加算の届出や算定要件【2024年6月更新】

本記事は「地域包括診療加算」について、マネージャーの池田が医師のために記載した文書です。

令和6年度診療報酬改定について詳しく知りたい先生は小冊子もご覧ください。

 

 

<目次>

  1. 地域包括診療加算とは
  2. 地域包括診療加算1・2の違い
  3. 地域包括診療加算の算定対象の患者
  4. 地域包括診療加算の算定要件
  5. 地域包括診療加算の届出要件
  6. 地域包括診療加算の算定上の注意点
  7. まとめ

 

1.地域包括診療加算とは

 

地域包括診療加算はかかりつけ医機能を評価する点数で、診療所が対象となる加算です。かかりつけ医機能を評価する点数は様々ありますが、地域包括診療加算は複数の慢性疾患を有する患者に対して、継続的・全人的な診療を行うことを評価する点数です。

 

必要な施設基準を満たしたうえで、届け出をすることで対象患者に算定が可能であり、地域包括診療加算1、地域包括診療加算2の2種類があります。それぞれ点数は下記となります(2024年6月時点)。

 

地域包括診療加算の診療報酬点数

地域包括診療加算(1) 28点
地域包括診療加算(2) 21点

 

2.地域包括診療加算1・2の違い

 

地域包括診療加算1と2は点数だけでなく、施設基準も異なります。
詳しくは後述しますが、地域包括診療加算1では往診・訪問診療の提供可能な体制を確保していることが必要となり、地域包括診療加算2では在宅医療の提供と当該患者に対して24時間の連絡体制を確保していることが必要となります。

 

3.地域包括診療加算の算定対象の患者

 

高血圧症、糖尿病、脂質異常症、慢性心不全、慢性腎臓病(慢性維持透析を行っていないものに限る。)、認知症のうち、2つ以上の疾患を有する患者が算定対象となります。
ただし、各疾患の疑いである場合は算定対象とはなりません。

 

4.地域包括診療加算の算定要件

 

地域包括診療加算1または2を算定する場合には、算定対象となる患者に対して初回算定時に書面で同意を得ることが必要です。
また当該患者に対して担当医を決定したうえで、担当医が診察をした場合に限り算定が可能となります。

 

地域包括診療加算は再診料を算定時に算定可能な加算であり、初診時や訪問診療時には算定できません。
また、再診である場合でも、電話再診料を算定する場合には算定ができません。

 

5.地域包括診療加算の届出要件

 

地域包括診療加算の届け出にかかる施設基準は下記となります。

 

■地域包括診療加算1・2共通

 

  • 慢性疾患の指導にかかる適切な研修を修了
    こちらは「日本医師会生涯教育制度」にかかる研修(日本医師会主催)が該当します。研修は20時間の講習であり、カリキュラムの中に「29 認知能の障害」「74 高血圧症」「75 脂質異常症」「76 糖尿病」を含んでいることが要件となります。
    また「担当医は認知症に係る適切な研修を修了していることが望ましい。」とされています。
    さらに研修については初回届け出を行ったあと、継続算定を行う場合には診療報酬を算定する月の1日から起算して2年毎に20時間の講習を継続して受ける必要があります。2年毎に講習の受講記録の提出が必要です。
  • 健康相談を実施している旨の掲示
  • 介護支援専門員及び相談支援専門員からの相談に適切に対応することが可能である旨の掲示

  • 患者の状態に応じ、28日以上の長期の投薬を行うこと又はリフィル処方箋を交付することについて、当該対応が可能である旨の掲示

  • 介護保険制度の利用等に関する相談実施の旨の掲示
  • 掲示事項について、原則として、ウェブサイトに掲載していること

  • 要介護認定にかかる主治医意見書の作成
  • 下記いずれかを満たすこと
    ・居宅療養管理指導または短期入所療養介護等の提供
    ・地域ケア会議に年1回以上出席
    ・居宅介護支援事業所の指定
    ・介護保険による通所リハビリテーション等の提供
    ・介護サービス事業所の併設
    ・介護認定審査会に参加
    ・主治医意見書に関する研修会を受講
    ・医師が介護支援専門員の資格を有している
    ・担当医が、「認知症初期集中支援チーム」等、市区町村が実施する認知症施策に協力している実績があること
  • 下記いずれかを満たすこと
    ・時間外対応加算1,2,3または4の届け出を行っていること
    ・常勤換算2名以上の医師が配置されており、うち1名以上が常勤医師であること
    ・在宅療養支援診療所であること(退院時共同指導料1規定)
  • 下記いずれかを満たすこと

    ・担当医が、指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)第13条第9号に規定するサービス担当者会議に参加した実績があること

    ・担当医が、地域ケア会議に出席した実績があること

    ・当該保険医療機関において、介護支援専門員と対面あるいはICT等を用いた相談の機会を設けていること。
    なお、対面で相談できる体制を構築していることが望ましい

    ・厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決  定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえ、適切な意思決定支援に関する指針を定めていること

■地域包括診療加算1

 

地域包括診療加算1の届出を行う場合、上記要件に加えて下記要件が施設基準となります。
・往診または訪問診療が提供可能な体制および実績があること。
以下の2点を満たすことが必要となります。

  1. 直近1年間に、当該保険医療機関での継続的な外来診療を経て、在宅患者訪問診療料(Ⅰ)の「1」、在宅患者訪問診療料(Ⅱ) (C001-2 注1のイを満たす場合のみ)又は往診料を算定した患者数の合計人数が在宅療養支援診療所では10名以上、在宅療養支援診療所以外の診療所では3名以上いること。
  2. 直近1か月に初診、再診、往診又は訪問診療を実施した患者のうち、往診又は訪問診療を実施した患者の割合が70%未満であること。
    往診または訪問診療で対象となる患者に対して24時間対応可能な連絡先を提供し、連絡を受けた場合には、往診や外来受診の指示など速やかに対応すること。
    ・在宅医療の提供および当該患者に対して24時間の往診等の体制を確保していること。ただし、在宅療養支援診療所以外の診療所については他医療機関との連携も可能です。

 

■地域包括診療加算2

 

・在宅医療の提供および当該患者に対して24時間の連絡体制を確保している。

 

6.地域包括診療加算の算定上の注意点

 

地域包括診療加算を算定する場合、いくつか注意しなければならない点があります。
まず届け出に係る注意事項として、

  • 該当の施設基準を満たして地方厚生局へ届け出を行っている
  • 2年ごとに20時間の当該研修を受講しており、2年毎に受講記録の提出を行う

の2点です。2年経過後に受講記録が提出されていない場合、届け出が取り消しとなり再度届け出が必要となる場合があります。

 

また算定対象・算定方法にも気を付けるべき点があり、

  • 高血圧症、糖尿病、脂質異常症、慢性心不全、慢性腎臓病(慢性維持透析を行っていないものに限る。)、認知症のうち、2つ以上の疾患を有する患者であり、治療について説明を行い同意を得ていること。こちらについては同意書など書面で確認し記録として残しておくと良いでしょう。
  • 対象患者に対して担当医が外来診療で再診料を算定した際に算定が可能。初診料算定時や往診料、訪問診療料、電話再診を算定した際には算定できません。

 

7.まとめ

 

今回ご紹介した地域包括診療加算は、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、慢性心不全、慢性腎臓病(慢性維持透析を行っていないものに限る。)、認知症のうち、2つ以上の疾患を有する患者の再診時に算定可能な加算です。
2つ以上となるとクリニックによっては、該当患者が限られる場合もあります。
また24時間の往診や連絡体制などクリニックにおける負担が増大しやすい施設基準があるため、届け出を悩むケースも少なくありません。

 

しかし、地域包括診療加算を届け出ていると初診料算定時に算定可能な機能強化加算(80点)の施設基準を満たすことができるため、診療単価の増加につながりやすい取り組みでもあると言えます。クリニックでどの程度の対応が可能なのか、体制をどこまで整える必要があるのかに注意しながら、地域包括診療加算の届出を検討することで診療所経営の強化を図ってみてはいかがでしょうか。

 

 

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