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2025.03.13

医療機関におけるカスタマーハラスメントの対応

本記事は「クリニックにおけるカスタマーハラスメントの対応」について、主任経営コンサルタントの竹下が医師のために記載した文書です。

 

 

<目次>

  1. カスタマーハラスメント(ペイシェントハラスメント)とは
  2. カスタマーハラスメント(ペイシェントハラスメント)の対応
  3. カスタマーハラスメント対策に取り組むことのメリット
  4. まとめ

クリニックでは、日々多くの患者やスタッフ間での関わりが生じ、様々なハラスメント問題が発生するリスクがあります。
特に、カスタマーハラスメント(ペイシェントハラスメント)は従業員に大きな精神的負担を与え、医療サービスの質にも影響を及ぼしてしまう可能性もあります。

 

本コラムでは、クリニックにおけるカスタマーハラスメントの具体的な対処法についてお伝えします。

 

1.カスタマーハラスメント(ペイシェントハラスメント)とは

 

通常のクレームや苦情は、診療や医療接遇に関する不満を指摘するものであり、そのような患者の意見は必ずしも問題ではなく、クリニックの改善やサービス向上につながることがあります。

しかし、不適切または過度な主張は、日常業務やクリニックの運営に支障をきたし、従業員に過度な精神的ストレスを与えます。

 

このようなペイシェントハラスメントに対して、従業員を守るための適切な対応が重要です。

 

尚、カスタマーハラスメントは、厚生労働省のカスタマーハラスメント対策リーフレットにおいて、具体的に以下の通り定義されています。

顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの。

クリニックにおける患者対応方法や基準は異なると想定されますが、カスタマーハラスメントの定義に関する具体例としては、以下のようなものが考えられます。

 

●「患者の要求の内容が妥当性を欠くもの」

・クリニックの提供する医療サービスに過失が認められない場合
・クリニックが提供する医療サービスと患者の要求が無関係な場合

 

●「要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なもの」

<要求内容の妥当性に関わらず不相当と判断される可能性が高いもの>
・継続的(繰り返し)、執拗(しつこい)な言動
・拘束的(不退去、居座り、監禁、長時間の電話対応)などの行動
・職員個人への攻撃や要求
・身体的な攻撃(暴行、傷害)
・精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉棄損、侮辱、暴言)
・土下座の要求
・性的な職員個人への攻撃や要求 等

<要求内容の妥当性によって不相当と判断される可能性が高いもの>
・診療請求の不払い要求
・クリニックまでの通院交通費の請求 等

 

(参考)厚生労働省:カスタマーハラスメント対策リーフレット
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000899376.pdf

 

 

2.カスタマーハラスメント(ペイシェントハラスメント)の対応

 

カスタマーハラスメント(ペイシェントハラスメント)を想定した事前の準備として、クリニックの基本方針や基本姿勢の明確化とともに、従業員の皆様への周知・啓発が重要です。

 

クリニックによっては「迷惑行為と判断した場合、診療をお断りする場合があります」といった貼り紙を掲示しているケースも見受けられます。
予めクリニックの方針を明確にし、不当な要求に対する毅然とした姿勢を示すことが大切です。

 

実際にカスタマーハラスメントが起こってしまった際の対応として、
・事実関係の正確な確認
・従業員へのメンタルヘルスなどの配慮措置
・再発防止のための取り組み 等が挙げられます。

 

さらに近年、インターネット上での悪質な書き込みが増加し、医療機関にとって無視できない問題となっています。
特にGoogle口コミやSNSでの否定的な投稿は、広義でカスタマーハラスメントに該当する場合があります。
万が一、Googleのポリシーに違反する口コミ(人種差別的表現、脅迫、誹謗中傷、迷惑行為、攻撃的表現など)が見つかった場合は、Googleビジネスプロフィールマネージャーから無料で削除要請を行うことができます。

 

このような不適切な口コミに備え、対応ガイドラインの作成や迅速な対応体制を整えましょう。

 

3.カスタマーハラスメント対策に取り組むことのメリット

 

カスタマーハラスメントに対する適切な対策を講じることは、従業員を守るという姿勢を明確に示す重要な行動です。
これはクリニックの運営において極めて重要な要素となります。

 

現代の少子高齢化社会においては、優れた人材の確保が困難になってきています。
そのため、職場環境を改善するためにカスタマーハラスメントへの対応を強化することは、従業員の離職を防ぎ、職場全体の士気を高める手段ともなります。

 

4.まとめ

 

カスタマーハラスメントへの効果的な対策を行うためには、まずどのような行為がカスタマーハラスメントに該当するかを明確に定義し、それをクリニックの基準として設定することが重要です。
これにより、クリニックとしての方針を明確にし、スタッフ全員に周知・啓蒙することが第一歩となります。

 

その上で、ハラスメント問題に対しては、法的対応策を事前に準備しておくことも欠かせません。
深刻なハラスメントが発生した場合には、速やかに法的手段を検討し、適切な対応を取れるようにすることが求められます。
これにより、ハラスメントに対する職場全体での予防策が強化され、安心して働くことができる環境作りが推進されます。

 

 

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