2025年4月に施行されるかかりつけ医機能報告制度について
本記事は「かかりつけ医機能報告制度」について、経営コンサルタントの千馬が医師のために記載した文書です。
より詳しく知りたい先生はこちらからお問い合わせください。
<目次>
1.かかりつけ医機能報告制度とは
2023年の医療法改正によって、「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」が発足され、3つの取り組みが新たに施行されることとなりました。
かかりつけ医機能報告制度はその3つ取り組みのうちの1つで、全ての医療機関(特定機能病院、歯科診療所を除く)が、「各医院が持つかかりつけ医機能を都道府県に報告する」という制度です。(2025年4月から施行開始予定)
「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」下ではかかりつけ医機能報告制度の他に、以下の2つの取り組みが施行されます。
●「医療機能情報提供制度」の刷新(2024年4月施行済)
● 慢性疾患患者等に対する書面交付・説明の努力義務化(2025年4月から施行開始予定)
医療機能情報提供制度の刷新においては、従来都道府県ごとに個別に運用していた医療情報を提供するシステムと、そのデータを集約して、全国で統一された医療情報提供システム(医療情報ネット:ナビイ)を再構築しました。
ナビイURL:https://www.iryou.teikyouseido.mhlw.go.jp/znk-web/juminkanja/S2340/initialize
この医療情報ネット(ナビイ)を通じて各医療機関が有するかかりつけ医機能が国民に周知されることとなります。
■かかりつけ医機能報告制度の概観
かかりつけ医機能報告制度の大枠は以下のように整理することができます。
(1)各医療機関が「厚生労働省の分科会が定めるかかりつけ医機能を有しているか、有している場合、具体的にどのような機能があるか」をG-MISで都道府県に報告する
(2) 都道府県は報告内容をもとに、「どの地域の、どの医療機関が、具体的にどのようなかかりつけ医機能を持っているのか」を、医療機能情報提供制度(医療情報ネット:ナビイ等)を活用して公表し、住民の医療機関選択をサポートする
(3) 地域の協議の場において、「各地域に不足しているかかりつけ医機能は何か」を明確にし、関係者で「不足する機能を補うまたは充実させるためにどうすればよいか」を協議し、各地域におけるかかりつけ医機能の向上を図る
2. 報告内容について
かかりつけ医機能とは、具体的にどのような機能または体制を指すのか、ということについてですが、改正医療法第6条の3においては「身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能」とされています。
今回施行されるかかりつけ医機能報告制度において、報告が求められるより具体的なかかりつけ医としての機能に関しては、「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」において、議論が進められてきており、2024年7月19日に開催された分科会で、かかりつけ医としての機能の報告内容の大枠が決定されました。
また、10月18日には厚生労働省による自治体向けの説明会が開催され、医療機関・都道府県の自治体に求められる対応内容について説明が行われました。
その結果、全国の医療機関(特定機能病院、歯科診療所を除く)は、まず「継続的な医療を要する者に対する発生頻度が高い疾患に係る診療、そのほかの日常的な診療を総合的かつ継続的に行う機能」(1号機能)を持っているか否か、その内容は具体的にどのようなものかを、都道府県に報告することが求められることとなりました。
更に、1号機能を有すると都道府県が確認できた医療機関においては、「時間外の診療、入退院時の支援、在宅医療への対応、介護サービスへの連携機能」(2号機能)を持つか否か、その内容は何かを報告することになります。
1号機能、2号機能の具体的な内容については、以下の通りです。
参考▼厚生労働省ホームページ
かかりつけ医機能報告制度に係る第1回自治体向け説明会 資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44427.html
報告はG-MIS(医療機関等情報支援システム)を用いて行われる予定です。
G-MISアカウントを有さない医療機関は、新規ユーザー登録機能を用いてアカウントを発行する必要があります。
※G-MISのアカウントについては、医療機能情報提供制度で利用しているアカウントと同一のものを使用する想定とされています。
なお、かかりつけ医機能報告制度は2025年4月から施行予定ですが、各医療機関が実際に「かかりつけ医機能報告」を行うのは、2026年1月~3月を予定されています。
3. 医療機関に求められること
厚生労働省は、今後「人口動態」「医療需要」「マンパワー」の3つの領域において、以下のような変化が起こるとしています。
■人口動態
・2025年以降、85歳以上を中心に高齢者が増加し、現役世代が減少する。
・地域ごとに65歳以上の人口が減少し、生産年齢人口が減少する。
■医療需要
・全国の入院患者数は2040年ごろにピークを迎える。
・外来患者数は2025年ごろにピークを迎えることが見込まれ、65歳以上の割合が増加する。
・在宅患者数は2040年以降にピークを迎え、要介護認定率は85歳以上で高くなることから、医療・介護の複合ニーズを持つ者が一層多くなることが見込まれる。
・死亡数は2040年まで増加傾向にあり、年間約170万人が死亡すると見込まれている。
■マンパワー
・2040年には医療・福祉職種の人材は現在より多く必要となる。
・病院や診療所に従事する医師の平均年齢が上昇しており、60歳以上の医師の割合も増加している。
このような状況の中で、一人一人の国民が受ける医療サービスの質を向上させるため、地域の医療体制の実情に対して、各医療機関が持つ機能(医療技術・診療体制)や専門性に応じて連携しつつ、各医療機関が担うかかりつけ医機能の具体的内容を強化すること等を目的に、今回「かかりつけ医機能報告制度」等の枠組みが新たに施行されました。
つまり、「かかりつけ医機能報告制度」は、自院が厚生労働省が定めるかかりつけ医機能を有しているのか、また具体的にどのような機能があるのかを、報告事項にそって現状を報告することが求められる制度です(2024年10月時点)。
さらに、今後多様化する医療機関へのニーズに対して、質の高い医療を提供していくためには、まず各医療機関が1号機能・2号機能の要件に沿ってかかりつけ医機能を充実させ、地域間での医療体制の連携強化を図っていくことが求められています。
4. まとめ
2023年の医療法改正で、「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」が発足され、「かかりつけ医機能報告制度」を含む3つの枠組みが施行されることとなりました。
かかりつけ医機能の報告内容は、1号機能と2号機能の2段階があり、1号機能を持つとされた医院のみ2号機能の報告が求められます。
その報告内容をもとに、各医療機関かかりつけ医機能の有無、そしてどのような機能をもつかについて、医療情報提供制度(医療情報ネット:ナビイ)を通して、国民に公表されます。
医療DXの推進や新たな診療報酬体制への対応等、日々医療機関に求められることが増えていく中で、かかりつけ医機能の報告開始は2026年の1月~3月とまだ先ではありますが、今のうちにかかりつけ医機能報告制度について理解し、開始時によりスムーズに報告ができる体制を整えておくことが大切です。
本記事が少しでもご参考になれば幸いです。
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