医療機関における承継と継承の違い
本記事は「医療機関における承継と継承の違い」について、チーフ経営コンサルタントの多田が医師のために記載した文書です。
より詳しく知りたい先生はこちらからお問い合わせください。
〈目次〉
1. 医療機関の承継とは
医療機関の承継いわゆる「医業承継」とは、すでに開業しているクリニックを受け継いで運営していくことを言います。
例えば、勤務医からの独立・開業を考え、クリニックの新規開設を検討する先生も多いと思いますが、近年ではクリニックを新規開業するのではなく、既存のクリニックを承継するという方法で独立を検討される医師も増えています。
このような医業承継のニーズが高まる中、一方で「医業継承」という言葉が用いられることもあります。
どちらも「~を受け継ぐ」という意味で用いられる言葉ですが、どちらが正しい表現なのか、または医業承継と医業継承の意味の違いや使い方および医業承継の概要を今回のコラムで解説します。
2. 承継と継承の違い
「承継」とは先代から「地位や精神、身分、仕事、事業を受け継ぐ」という意味があります。
一方で、「継承」とは先代から「義務や財産、権利を受け継ぐ」ことを意味しています。
どちらもクリニックを「受け継ぐ」という点では意味は同じですが、「承継」に関して、前院長が守ってきた「理念」「使命」などの抽象的なものも受け継ぐという意味合いが強く、一方で「継承」は、前院長が所有していた形あるものを受け継ぐという意味が強いです。
法律上では「事業承継」が用いられ、これにならって中小企業庁でも「事業承継」という言葉が用いられていますが、実際はそこまできっちり使い分けされていない場合がほとんどで、総じて「医業承継」の言葉が使用される場合が多いです。
3. 医業承継の種類
医業継承の種類は、大きく分けて2つのパターンがあります。
【親族間承継】
医業承継の中で最も多いものが親族間承継で、勇退される院長の職を医師の資格を持つ息子や娘、甥、姪などの親族に引き継がせる方法です。
個人のクリニックの場合で相続する場合は、譲る側の親がまだ生きているうちに承継を行う「生前の医業承継」と譲り手である親が亡くなってしまってからクリニックの承継を行う「相続の医業承継」の2つに分けることができます。
前者は贈与として行われる場合が多いのに対して、後者は財産の相続という形で承継するのが特徴です。
ただ、どちらにしても、親族間承継の場合、M&Aなどの会社を介するわけではないため、対価や仲介手数料を支払う必要がない場合が多いです。
相続税や贈与税に関しては税理士などに確認する必要があります。
【第三者承継】
近年増えてきている親族関係にない第三者からクリニックを承継する第三者承継もあります。
当然ですが、第三者承継は譲渡側と承継側どちらもまずは相手を探さところからのスタートとなり、医療機関を売却する金銭的なやりとりが譲渡側と承継側で発生するため、M&Aの仲介会社や承継の専門家などに依頼することがおすすめです。
これらの承継はクリニックが個人のクリニックだけでなく、医療法人である場合でも手続き自体に大きな違いはありませんが、譲渡する側のクリニックが医療法人の場合で、2018(平成19)年4月以前に設立された場合においては、出資者が保有する出資持分の承継手続きも行う必要があります。
2018(平成19)年以降に設立された医療法人においては、出資持分がなくなり拠出型となっているため、この手続きは不要です。
4. 高まる医業承継のニーズ
高齢化社会が叫ばれて久しい昨今、クリニックを開業している医師も同様に高齢化が進んでいます。
そのため、体力的にも精神的にも限界に達してはいるものの、通院してくれる患者さんのことを考えるとどうしても閉院に踏み切れず、日々診療に向かわれている院長も少なくありません。
このような状況の中、今来院してくれている患者さんを守るために、今あるクリニックを閉院せずに済む医業承継という選択肢が注目を浴びてきています。
このブログをお読みの先生方には、承継について考えはするもの、実際調べてみると専門的な語句が並び、なかなか理解することが難しい場合もあるかと思い、まずは「承継」と「継承」の違いを含めて概要を説明させていただきました。
このブログがクリニックを経営する院長にとって少しでもお役に立てば幸いです。
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