検査の価値
検査の価値
耳鼻咽喉科においては、切っても切れない関係にある『検査』。もちろん検査の第一目的は、医師が患者さんの状態を知ることにある訳ですが、一方で患者さんへの満足度をどれだけ意識されているでしょうか?耳鼻咽喉科の先生方にあてはまりそうな、検査に関連しての懸念事項の例を挙げてみました。
1、検査をしたものの医師だけが結果を確認して患者へ説明はしない。もしくは、「大丈夫ですよ」と一言だけ言う。
たしかに究極的には医師のみ結果がわかれば良いのかも知れませんが、患者さんの支持・納得は得られず、下記の4で挙げたクレームに繋がる典型例になります。
2、検査をして説明はするが患者が本当に理解しているかどうかは疑問に思うことがある。
3、検査の説明はしているが、ちょっとした一言から話が長くなってしまい想像以上に検査説明に時間を取られることがある。
これらは当てはまる先生が多いのではないでしょうか?知識の無い患者さんに限られた時間の中で過不足なく伝えることは大変なことでしょう。全ての患者さんに伝わるような明瞭性、簡潔性が求められます。
4、会計時に金額が高いという声があっても、患者に納得できる説明を行えず不満に思わせながら帰してしまうことがたまにある。
根本的には診察室内での説明不足が原因です。説明力に長けた受付が入れば良いのですが、そうでなければ納得できずに帰られた患者さんは基本的に二度と来院されないでしょうし、場合によっては負の口コミを喧伝することもあります。
5、検査をしたが(特にファイバー)、患者から高いと思われるのを懸念して算定しないことがある。
たしかにお優しい先生の中には、患者さんの負担を懸念し「それならば・・・」とついつい、費用を頂かない所謂「サービスファイバー」を実施してしまいがちですが、これを多発すると実際にファイバーを算定する患者さんと算定をしない患者さんの区分けが付けにくくなり、結局はファイバースコープ検査自体がその医院の中では算定しないことが当たり前のようになってしまう場合があります。
以上、順にお伝えしましたが、上記を解決し得る手段としてお勧めしているのが、「検査に対する“患者さんにとっての”価値を上げる」ということです。
「そんなことわかってるよ!でもいちいち私が懇切丁寧に説明していたら今度は患者の待ち時間が長くなるじゃないか!」
というお叱りのお声が聞こえてきそうですね。確かにおっしゃる通りだと思います。
お時間にゆとりのある先生であれば、やはりドクターの説明に勝るものはありませんので、時間の許す限り先生から説明をして頂きたいのですが、なかなかそうはいかない先生が多いでしょうから、実際にはスタッフに稼働してもらったり、説明素材を使うことで検査の価値を高めていただく流れを作っていただくことになります。
患者の検査に対する理解を深め、検査結果について納得してもらうことで安心を得ていただく。これこそが満足度向上につながり、会計でも納得の上でお支払をしていただくことができるというものです。具体的なポイントを下記に列挙致します。
① 検査前にその検査の目的・意味・意図を患者さんに理解してもらう
② 検査実施後、ドクターから検査結果の報告を聞く前に患者が自分自身の検査データを凡そ読み取れるよう(ドクターから検査結果を伝えられた際に理解できるように)スタッフが資料や画像などを用いて「検査結果の見方」を説明する(特にレントゲンや聴力検査結果など)。
③ 検査結果そのもののフィードバックは必ずドクターが行う。
④ 菌検査の結果や血液検査の結果などは、「出てきたデータが何を意味するのか」が、素人でもわかるような解説資料を検査結果を持ち帰ってもらう際に添付する。
⑤ スタッフによるアフターカウンセリング(指導)を行う(検査結果後の個別フォロー、特にアレルギーの検査結果など)
⑥ 上記①~⑤まですべて簡潔に、明瞭に、なるべく絵や図解などを使ってイメージで理解してもらうようにする。
もちろん全ての検査において一律で上記をやってくださいという訳ではありません。例えば、鼻汁好酸球検査などは診療の流れの中でするものですが、そこに途中でスタッフが割って入って「これからアレルギー性鼻炎があるかを確認するため・・・云々」とやられたらいちいち診察が止まってしまいますので、こういう場合は流れのなかで院長がひとこと事前説明をしていただくのが良いでしょう。それぞれの検査ごとに、最適な説明の流れを作り上げるようにしてください。聴力検査で有無をいわせず聴力検査室に患者さんを入れ、ボタンの押し方など事務的な説明をしただけで検査を始めるのと、予めスタッフから聴力検査で何を測定するのか、どのように測定するかなどを事前に説明ができているのとでは、患者さんの満足度は大きく異なるものになるでしょう。
最初は演劇の台詞のような形で院長がそれぞれの検査の説明方法を定め、それらをスタッフさんが覚え、その通りに説明ができるようにする。そのようにしてどのスタッフであっても過不足のない説明ができるようにしていただくところから初めていただくのが良いと思います。今から準備を勧め、夏の時期に集中してトレーニングを行えば、秋以降、一回りも二回りも成長した診療体制が構築できることでしょう。