式年遷宮と耳鼻咽喉科
式年遷宮と耳鼻咽喉科
式年遷宮とは、20年に1度、伊勢神宮の正殿などを新たに建て、ご神体を遷す営みとされています。
式年遷宮の目的の大きなものとして、神宮の社殿の尊厳さを保つため20年を区切りとして生まれ変わりを図る、というものがあるそうです。そこに派生して、永続性の確保のための合理的な仕組みを見出すことができます。
ご存知の方も多いでしょうが、その1つとして、建て替えの為の技術の伝承が挙げられます。
掘立柱に萱の屋根、といった古い建築様式故に、その技術の伝承が必須となるのです。
20年ごとの遷宮であれば、10代~20代の若手の大工が下働きとして式年遷宮に携わり、その20年後には彼らは30代~40代となってまさに大工としての一番脂の乗った時期で式年遷宮に主体的に関わり、そして下の世代に技術を伝え、さらにその20年後には、もし健在であれば後見役として後進を指導し、遷宮を見守るということが可能になります。
このようにして1300年もの間、その建築様式と伝統は守られてきた訳です。
式年遷宮は7世紀ごろから始まったとされるため、日本の平均寿命が50歳に満たなかった頃から実施されているので当時は2代程度での継承を想定したものではないかと思われますが、いずれにせよ、非常に理に適った仕組みであることがお分かりいただけるかと思います。
やはり1300年に渡って存続しているのにはそれなりの理由があり、伝統は勿論ですが、合理的なシステムが確立されているのです。
話は戻って耳鼻咽喉科医院の話になりますが、上記のように現在の体制を将来に渡って維持、あるいは向上させていく仕組みを整えている耳鼻咽喉科医院はどれだけあるでしょうか?
耳鼻咽喉科では1代あたり平均的には30年程度診療を続けてゆきます。
その中でマネジメントの分野においては、常勤を採用している医院(特に若手の)については平均的には3~5年程度でスタッフは入れ替わって行く訳です。
パートの方主体の医院であればもう少し間隔は長くなるでしょうが、開業した時のスタッフが、数十年の後に閉院する際まで全員残っていた、という話は非常に珍しいケースです。
- 医院の理念
- 医院の診療方針
はもちろん、例えば
- 接遇時のスタンス
- 声掛けの、お詫びの際の言葉づかい
- 医師のサポートのタイミング(器具出しや頭持ちなど)
- 各検査の正しい手順、声掛け・説明のタイミング
- 消毒滅菌の手順や間隔
- 病状の説明
といった細かい内容まで、しっかりとそれぞれの医院の考え方ややり方を伝える仕組みを築いていきたいものです。
耳鼻咽喉科のように小規模の経営体ではそうした「考え方ややり方を教える際の体系」を仕組みとして構築していない場合が殆どです。
そうなってしまうと、それらを正しく受け継いでゆけるかどうかは「教える人間の力量に依存する」ということになってしまいます。
これではまさに、「運を天に任せる」と同じことになってしまいます。
また、「仕事がよくできる人間」が必ずしも「教え上手」とは限りません、
(むしろ「なぜこの程度のことがすぐに覚えられないの?」とイライラしてしまい、どちらかというと割合的には教えることが不得手な方が多いような気が致します。)
よって「考え方」や「仕事」をまずは書面などに残しておく。いわゆるマニュアルは最低限必要になります。なおかつそのマニュアルを更新し、常に新しいものにしておくことが重要です。
仕事の部分は最近身近になった映像(動画)で残しておくことも良いでしょう。
弊社のクライアントの中には、1年に1度、これまで作成してきたマニュアルを、一通りの業務を覚えた新人が更新を行う耳鼻咽喉科クリニックがあります。
この1年で新しくルール化されたことを付け加えたり、廃止になったところを修正していくのです。
そしてそれを最後にベテランの方にチェックしてもらう、ということを繰り返していらっしゃいます。
そうすることで新人は仕事内容を再度確認することができ、尚且つマニュアルを最新の状態に保つことができます。
こちらのマニュアルをスタッフ全員が読み合わせることで、個々の業務のズレを修正することも可能です。
(特に長年勤務されている方は段々と我流に仕事内容がずれていく場合があり、それを防止することも大切です。)
伊勢神宮までとは申しませんが、院内に教える・伝えるシステムを構築し、安定して新しい方に教育を施すことができればまた一歩、永続する耳鼻咽喉科医院に近づけると思います。
繁忙期を経験する度に、スタッフ教育や体制作りの大切さを痛感さられる先生も多いかと思います。
ぜひ、上記をご参考にされてください。