先生方は人を叱ることは得意でしょうか?

人を叱る時に
・感情のままに叱ってしまう
・ミスをしつこく責めてしまう
・スタッフの反応が気がかりで叱れない
など、人それぞれに叱ることに対する苦手意識があるようです。

しかし、院内で起こる事象に関して間違っていることは間違っていると指摘する必要があります。
間違いを放置すれば、さらなる問題を生み出す可能性や、スタッフ自身の成長の芽を摘んでしまうことになるからです。

間違いを是正することは経営者や上司としての義務であるとも言えるのです。
では、どのように叱ることが必要なのでしょうか?

まず、叱るとは決して
・怒鳴る
・罵倒する
・責め立てる
・否定する
といった言葉と同義語ではありません。

作業の手順を間違えたスタッフに対し、「なんでこんなことができないんだ。仕事に対する考えが甘いからこんなこともできないんだ。」と頭ごなしに怒鳴りつけては、スタッフも前向きに成長しようという気持ちにはなれません。

 

スタッフに持続的で前向きな改善を求めるには
怒鳴ったり、責め立てたり、相手の内面を否定する「痛みで動かすマネジメント」ではなく、「喜びで動かすマネジメント」が求められます。

 

時には「痛みで動かすマネジメント」も必要かもしれませんが、常態化すると常に精神的負荷がかかり続けるため、スタッフの疲弊や反感を招き、離職率が高まります。
自院の離職率が高いと感じられている場合は、先生ご自身やリーダーのマネジメントが「痛みで動かすマネジメント」になっていないかを今一度確かめてみてください。

 

それでは、「喜びで動かすマネジメント」とはどのような叱り方をするのでしょうか?
正しい叱り方には一種の「型」があります。

以下スタッフが納得し、問題点の是正に前向きに取り組むことが出来る叱り方のフローです。

(1)相手を認めること。
(2)事実関係を明確にする。
(3)自身の見解を述べる。
(4)相手の見解を尋ねる。
(5)問題の解決策を考えさせる。
(6)実行する上で、自分ができる支援が何かを問う。
(7)感謝と激励の言葉を添える。

まず、叱るという行為は、叱られる側に少なからず屈辱感や反発心を抱かせます。
叱られる側は無意識に「自分が悪いわけじゃない」と心理的なバリアを展開してしまいます。

ですから、まずはこの防御を外すために相手を認めること、褒めることが必要になります(1)
この際に大げさに褒めたり、事実でないことを褒める必要はありません。
「いつも頑張ってくれているね」といった、日々の小さなことで良いのです。

こうした称賛を前提とした導入で、相手のバリアが緩み、この後の内容が伝わりやすくなります。

そして次のステップ((2)(3)(4))は叱る内容を明確にすることです。
ここでの最初のポイント(2)は主観ではなく、客観的な事実を述べて確認することです。

たとえば、出勤時間ギリギリにクリニックに滑り込んできたスタッフがいたとします。
「クリニック到着が時間ギリギリだった」ことは客観的事実です。
しかし、「時間ギリギリに来るのは、行動に余裕がないからだ」、
「仕事を軽視している」と考えるのは主観です。

同じようにこのスタッフにも
「出勤時間はわかっていたが、子供が保育園でクズってしまい出勤がギリギリになった(仕方がないことだ)」などの主観があります。

解釈や評価が入った主観的事実で頭ごなしに叱れば、スタッフは
「そんなこと言われてもどうしようもない」
「こちらの都合もわからないくせに」
と反発心だけを抱き、この先の言葉に耳を傾けることをしなくなります。

ですから、「今日はクリニックに来るのがギリギリだったみたいだね」と客観的な事実だけを確認します。

そして、続けて自分がどう感じたかを伝えます(3)
このときに重要なのは、「君は行動に余裕がないよ」など、その感想を絶対的な事実として伝えないことです。

相手に「君は~だ」という決めつけではなく、あくまでも感想として「私は~と感じた」と伝えるのです。
これを“Iメッセージ”と言います。

そして、「私には、行動に余裕がないように感じられたけど、○○さんはどう思う?」と相手の認識をたずねます(4)

「自分はこう感じたがどうだろうか?」という確認を挟む意味は、お互いの異なる
主観的事実ではなく、共通の客観的事実を軸にした話し合いをするためです。

共通の課題意識を共有し、ともに解決を目指すのですが、その際に重要なポイント(5)は解決策を押し付けないことです。

まずは、スタッフに「どうすれば良いと思う?」と解決策を考えてもらいます
スタッフから出てくる解決策を一緒に検討します。
これは「こうしなさい」と他人から押し付けられたことは、なかなか守れないことが多いからです。
あくまでも自分で考えて自分で決めることが重要です。

決定した解決策を実行するためにできる支援はないかを申し出(6)をし、最後に「ありがとう。うまくいくように祈ってるよ」と感謝と励ましの言葉を述べます(7)。

こうした一連の「型」に則った叱り方をすることでお互いの誤解が生じる隙がなく、無用な軋轢を生むことなく、建設的に物事を進めていくことが可能となります。

 

是非、今後の叱り方の参考にしていただければ幸いです。