地域格差の活用
地方と都市部の地域格差とその活用法とは
“地域間格差”
と聞くとネガティブな印象を受けられるかもしれませんが、今回は「この地域格差を是非有効に活用しましょう」というお話しです。
地方の耳鼻咽喉科と都市部の耳鼻咽喉科には様々な差異があります。
- 都市部は競合が多く、地方では耳鼻科医が不足しているエリアも存在する。
- 地方はテナントが少なく最初から建てるケースが多く初期投資が多大にかかる場合がある。
- 一方で都心部はテナントが多い為、診療所そのものの初期投資は比較的少ない。
- 地方になればなるほど医師会の影響力が強くなる傾向がある。
ただ、様々な地域間格差はあれど、保険診療を主体とする耳鼻咽喉科医院において最も地域間格差があるのは、逆説的ですが、
“全国一律に、保険点数は同じ”
であることです。
[それはむしろ格差じゃないだろう?]と思われるかも知れませんが、これこそが非常に大きな格差なのです。
エリアによって物価・人件費・賃料が異なるにも関わらず日本全国どこの医院でも初診料は288点なのです。
耳鼻咽喉科で最も固定費として大きなものは人件費・賃料であり、例えば人件費をとってみると、東京都心では常勤の医療事務を採用する際の税引き前総支給額での募集平均額は約21万円にもなりますが、我々が知っている限りでは地方での最安値は税引き前の総支給額は13万円です。そしてこの13万円でも応募があるという状況です。
これだけで3割から5割程度、人件費に差がある訳です。ですから、地方の耳鼻咽喉科医院は、それらの差を自らの懐に入れるのみで終わらせず、是非うまく活用して頂きたいです。
単純に言えば、同じ金額で都市部であれば3人分の給与で4人~4.5人の方を雇用できるため、クラークの複数配置や受付人数に余裕を持たせるなど、患者さんをお待たせしないための取組や患者さんの満足度の向上に人海戦術を行っても、人件費そのものは都市部とさほど変わらないということになります。
つまり、都市部と同定度の人件費でありながら、地方の周辺の競合医院に比べて差別化が可能になる、ということです。この人件費の格差を活用して、一層クリニックを成長させることが可能になる訳です。
あるいは医療事務の新規採用の相場が16~18万円程度のエリアで21万円~という打ち出しで募集をおこなえば、応募者の母数を多く確保でき、優秀な方が働いてもらいやすい環境にすることも可能です。
一般に耳鼻咽喉科医院に於けるスタッフ人件費は約20%(法定福利費・福利厚生費を含む)が適正と私は考えていますが、やはり地方の耳鼻咽喉科医院では15%程度となっているとこも多くあります。
「人件費が安く済んでいるのだからいいじゃないか」
と単純に考えるのではなく、
「患者満足度を上げたい」
「診療効率を上げたい」
「検査体制を充実させたい」
とお考えであれば、そういった地域格差をうまく利用して頂くことは大局的見地でみると大変重要なことです。
では逆に都市部はどうすればよいか?
それは主にインターネットマーケティングの部分になるでしょう。
インターネットによるホームページなどの集患媒体は都心部であればあるほど反響が大きくなりやすいです。
例えば、東京都区内に耳鼻咽喉科は数多くありますが、仮に東京駅にある耳鼻咽喉科にアクセスするには23区内であればほぼ1時間以内で通院ができるでしょう。
そうなってくると、今までのセオリー通りの「家から一番近い近所の耳鼻科」から、多少遠くてもインターネット検索で調べて「しっかり治してくれそうで、対応の良い耳鼻咽喉科」と、患者さんの志向が変わってくるわけです。
(この「治してくれそう」というのがインターネットマーケティングのミソです。)
都心ならではのアクセス時間と患者の「より良い診療を受けたい」という潮流が大きくなってきていることを見逃してはいけません。
そうなってくると、都市部、特に東京都区内、名古屋市内、大阪市内などでは開業時に必ずといっていいほど検討される「診療圏」という指標が実は当てはまりにくく、実は使いづらくなってきているのです。
都市部でのメリットを最大限に生かすにはホームページを主としたインターネット上でのマーケティングを上手く活用されるとインターネット上だけでも200人単位での新規の患者さんが毎月お越し頂くことも可能です。
また、人が密集しているという意味では患者さんだけでなく、ドクターも同様で、常勤・非常勤を問わず、セカンドドクター(代診や、2診を担ってくれる医師)を募集する場合に都市部のほうが圧倒的にお越しいただける確率は高いです。
都市部にて非常勤医であれば、紹介会社などの活用も含め、しっかりと募集をおこなえば半年に1名程度であればお越し頂くことは十分に可能です。
今後はセカンドドクターを活用する耳鼻咽喉科医院が一層増えるのではないかと予想しています。
都市部で開業されている耳鼻咽喉科医院
地方と呼ばれるエリアで開業されている耳鼻咽喉科医院
その中間くらいのエリアで開業されている耳鼻咽喉科医院
と、形態は様々にあろうかと思いますが、それぞれの立地特性をよく分析頂いた上で、「地の利」を上手く活用した耳鼻咽喉科医院経営を行っていくようにしてください。