耳鼻咽喉科に限らず、診療所の院長先生方はその特性上、診療時間中は「医師としての診療業務」を最優先させなければならず、午前、午後とその診療を終えると疲れ果ててもはやそのような時間が確保できない、ということです。

確かに一般的な企業のトップに比べてプレイングマネージャーの特性が強く、特にプレイヤー(医師)としての比率が高い為、なかなかマネージャー(経営者)としての時間の確保に難渋することは否めません。

実際に我々のクライアントの先生方も経営について考えたり、行動できる時間を増やしさらに発展を遂げておられる方の多くは2診制や代診のドクターを招き入れ、それによって日々の診療の時間的拘束を削減し、経営に時間を費やす時間を増やされた先生方です。

しかしながら、よくよく見直してみると、実はそのようなことをせずとも院長先生方はやろうと思えば時間を確保することは容易にできるのです。
更に言えば、実は院長先生方の勤務時間は一般的な経営者よりも概して短いことが多いのです。
それが昼休みの再定義、ということになります。

一般的に先生方の昼休みは概して長いです。
地域・医院形態によって時間の幅はあるものの、午前の診療終了時間と午後の診療開始時間の間に存在する昼休み時間は、2時間~4時間程度あるのではないでしょうか?
繁忙期の時間延長に備えて、あるいは夕方以降の時間に診療を開始したほうが患者さんが多くこられる、等々理由は様々あることでしょう。
ただ、その昼休みを先生方はどのように使っているか?が問題なのです。

昼休みに経営に使う時間、経営について学ぶ時間を1時間~2時間、何とか確保して頂きたいのです。
それをして頂くだけで半年後、1年後には随分と医院は変わってくるはずです。

先生方の昼休みの使い方を問うた時にいただく回答で代表的なものを挙げると、
1.診療中にはできないようなオペや専門外来
2.フィットネスクラブやゴルフの練習
3.銀行への窓口現金の入出金や請求書の支払
4.MRとの面会
5.昼寝
といったところです。

1などは必要なことだとは思いますので、医師として是非実施して頂きたいと思います。
ただ、闇雲にスケジューリングをしてしまうと1日中医師としての仕事に追われる日々が続く、ということになりかねません。

2については「日中にけしからん!」と思われるかも知れませんが、こちらは過剰でなければ、先生方の最大のリスクは先生方自身の健康問題であるため、健康の維持に寄与するのであればむしろ良いと考えています。
定期的に時間を作れる習慣を持っている方は、むしろ経営についての時間を確保する習慣も受け入れやすいことでしょう。

改善すべきは3~5のような項目です。
無駄に1時間以上もMRの方と本題と逸れた雑話をしている、といったことは先生方も経験はあるのではないでしょうか?
銀行の入出金についても、果たして日々ATMに並んでお金を出し入れしたり、両替することは経営者としてやるべきなのか?ということです。

「スタッフにはまだお金のことは任せられない」と仰るかも知れませんが、院長先生方の時間は時給に換算すると1時間当たり数万円にも及びます。
例えば毎日2万円の手数料を払って、入出金や請求書の処理を行っている(しかも自分が)と考えると馬鹿らしくなりませんか?経営は判断も重要ですが、スタッフにお金を誤魔化されるリスクと毎日先生の貴重な時間を犠牲にしているリスクとどちらをなくしていきたいか?ということです。
現在は下手に従業員がお金を誤魔化したりできないようなネットバンキングなどの仕組みもありますので、そのようなことを日々のルーティンにされている方は是非ご再考ください。

昼寝については短時間の15分~20分程度で効率的に摂られている先生であれば良いですが、中には食事をして午後の診療までグッスリ、そして午後の診療開始時間にも少し遅れてしまい、寝ぼけまなこでドクターチェアに座る、といった状況にはっと思い当たる先生もいらっしゃるのではないでしょうか?
生産性を高めるためにも一定の休息は必要ですが過剰な休憩は怠惰な時間の使い方を習慣化してしまい、結果として大切な経営に関する業務を後回しにしたまま、日々の診療に疲れ、結局は「時間が足りない」とまたつぶやいてしまうのです。

客観的にみて、一般企業の経営者で日々恒常的にこれだけの休憩時間を確保できる業種は診療所の院長ぐらいではないでしょうか?

お昼休みの1時間、どうしても難しい場合は30分でも結構ですので時間帯を決めた上で、その時間帯は「経営に使う時間」と再定義して頂き、それを習慣化して頂くことをまずはお奨めします。
その時間帯はMRの面会も謝絶とし、雑務をするのではなく、はたまた昼寝を嗜むのではなく、医院の経営を考えたり行動に移すための時間とするのです。
最初は何をして良いのかわからないのであればスタッフと面談を行い人心を把握するところから始めるのもよいでしょうし、経営に関する基礎を学ぶ時間として頂くのも良いでしょう。

話は逸れますが、先生方にとって経営者として必要な知識の中で特に不足していると思われるのが「財務」「計数管理」に関する知識です。
財務や計数に関する知識をしっかりと得ていれば、無駄のように思われる生命保険をかけ続けることもあるいは、新規患者の減少に気付かずに半年後1年後に肝を冷やすようなこともなくなります。
基礎レベルで十分ですし、医学知識に比べれば何のことはない分量かと思いますので是非そのあたりを把握するところから始めて頂いても良いでしょう。

 

現状の毎日の時間の使い方やマネジメントに十分ご満足されている先生はそのままで結構ですが、患者さんにもっときてもらいたい、あるいは無理の無い診療体制、スタッフに長く勤めてもらえる組織体制を作りたいなど、医院を発展させたいとお考えの先生は、まずは何よりも時間の確保が大切です。

 

上記をご参考いただき、経営に専念できる時間の確保とその習慣化に是非チャレンジしてみてください。半年後、1年後にこれまでとの発展のスピードの違いにきっと驚かれるはずです。