クリニックにおけるKPIの活用
院内で取得できる数値でKPIを設定し、取り組みを客観的に評価する
院長先生方はクリニック経営において、どのような目標を立てておられますか?
クリニックによっては先生方だけでなくスタッフさんが目標設定をされているクリニックもあるかと存じます。
目標を設定したけれど、、、
・目標達成のための取り組みが明確に決まっておらず、
目標が宙ぶらりんになっている
・新患対策やリピート率の向上など、マーケティングに関する取り組みに対して成果を数値ベースで振り返れていない、または院長先生の感覚で成果を判断している
・どんなデータを用いて何を基準に振り返ればよいか分からない
などのお悩みはありませんでしょうか?
このようなお悩みを抱えておられる先生方に今回お伝えしたいのが「KPI」の設定です。
【KPIとは】
KPI(Key Performance Indicator)は、「重要業績評価指標」というものです。
目標達成をするために必要な取り組みが、プロセスを追って適切に実施されているかを数値ベースで評価するための指標です。
クリニックであれば、
・新患数や新患リピート率(又は離脱率)
・声掛けの回数や処置検査の算定率
などがKPIとして設定されます。
KPIを具体的に設定すれば、売上目標や目標患者数などクリニックで定めた目標に到達するための進捗度合いを把握できます。
【KPIを設定するメリット】
・数値化することで目標達成へのプロセスが明確になる
・PDCAサイクルが回しやすくなり、成長が加速する
・取り組みの継続もしくは中止、目標の是正などを客観的に判断できる
【KPIの設定例】
耳鼻咽喉科の場合ですと、「舌下免疫療法開始患者数を年間○○人にする」という目標を設定した際に、その目標を達成するためにはまず1月当たりの目標人数を算出する必要があります。
次に1月当たりの目標人数をクリアするための行動を考えると…
【スギ花粉症シーズンに事前告知と事前予約を行う】
【舌下免疫療法開始時に見込み患者に告知できる連絡ルートの獲得】などが院内で実践できる取り組みになります。
これらに関してKPIを設定する場合、【スギ花粉症シーズンに事前告知と事前予約を行う】ですと、
花粉症シーズンに来院した患者さんに舌下免疫療法を啓蒙する冊子を配布(KPI①)、
会計窓口で取れた舌下免疫療法開始初回来院の予約数(KPI②)
などが挙げられます。
冊子の配布枚数については診療の前と後での冊子の残数の差で求められますし、会計窓口で取れた舌下免疫療法開始初回来院の予約数は受付で用紙等にカウントすれば集計できます。上記の数を来院患者数で割れば何%の人に冊子の配布や予約を取れたかが分かります。
【舌下免疫療法開始時に見込み患者に告知できる連絡ルートの獲得】ですと、
花粉症シーズンに何名に公式LINEアカウントに登録してもらえたか(KPI③)を集計することで、患者さんへの連絡ルートの獲得率が分かります。
最終目標の年間舌下免疫療法開始患者数に対して、毎月の舌下免疫療法開始患者数はどの程度か?開始患者数を増やすために、どれだけ事前告知、事前予約を促せているか⇒KPI①,②
見込み患者にアプローチする連絡経路があるか⇒KPI③
この様に院内の取り組みを実数ベースで振り返ることで、最終目標の達成に向けてどこがボトルネックなのか明確になります。
皆が積極的に取り組んでいるのにKPI①,②,③の到達が厳しい場合、年間目標で立てた「舌下免疫療法開始患者数を年間○○人にする」の目標人数が高すぎる可能性があります。
一方で、KPI①,②,③が100%近いにも関わらず目標人数に到達する見通しが立たない場合、KPIの設定が低すぎる可能性があります。
上記のような場合、年間目標やKPIを見直す他、KPIを達成するための新たな取り組み(集患対策やオペレーション改善)を検討するなど、KPIを指標にすることで目標達成に向けた別のアプローチを取ることができます。
このように、クリニックで取得できる数値を用いてKPIを設定し、そのKPIに基づきPDCAサイクルを回すことで様々な取り組みを客観的に評価できます。
その評価をクリニック全体で共有することでスタッフのモチベーション向上や成長スピードの加速も期待できます。
年間の目標を考える際などにも今回ご紹介した内容を参考にしていただけますと幸いです。