耳鼻咽喉科医院の繁忙期の対応
普段の診療の型に捉われない思い切った施策を導入し、繁忙期のシーズンを乗り切る

耳鼻咽喉科医院にとって、最も来院が増える繁忙期のシーズンは、大きな試練となります。
患者数の急増は、待ち時間の増加、スタッフの負担増大など、様々な問題を引き起こします。
そのため課題を事前に見据え、効果的な対策を講じることは、患者満足度の向上、スタッフのモチベーション維持に不可欠です。
本コラムでは、繁忙期に医院が取り組むべき具体的な対応策を、実践的な視点から解説します。
<繁忙期の雇用>
人員体制について、繁忙期に向けた準備をしておく必要があります。過剰人員を元から抱えている医院は問題ありませんが、多くの医院では2~4月は人手不足になるケースが多いです。
しかし常にピークシーズンに照準を合わせて人員を確保することは、コストの面でも運用面でも非効率であります。
そのため、不足する人材を確保するために、「臨時的な戦力」に医院を手伝ってもらうことをおすすめします。
具体的には、
・ナースや診療助手の派遣
・期間・時間帯を区切った契約パート、アルバイト
・OGの活用
特に看護師が1人もいない耳鼻咽喉科医院の場合は、週3日だけでも看護師を雇用することができれば、採血や点滴をしてもらえるだけで大きな手助けとなります。
(例えば看護師がいない日の採血希望者には、看護師の勤務日に改めて来院してもらうようにお願いするなど、ちょっとした工夫で院長先生の負担を軽減できる可能性があります。)
また、期間・時間帯を区切り、臨時的に雇い入れたパート・アルバイトスタッフには、一部の業務に特化した働き方をしてもらうようにすることをおすすめします。
期間限定のスタッフには沢山のことを教えるよりも、業務を絞って協力してもらうほうが上手くいくケースが多いためです。
<繁忙期シーズンの患者心理>
繁忙期では医院が忙しいだけでなく、患者の立場からしても長時間待たされることに不満を感じていることが多いです。
せっかく医院にお越しいただいた患者さんに、なるべく待たずに希望の診察を受けてもらえるように準備をすることが大切です。
花粉症シーズンに来院された患者さんが自分より先に待っている人の数を見て、帰ってしまうことも多く、そういった方々が離脱しないように患者さんが「何を求めているか?」をより深く掘り下げる必要があります。
そこで花粉症の患者さんが求めていることは、3つのパターンに分けて考えていきます。
①花粉症シーズンになるとお越しになる方で、自身の症状に合う薬の名前も分かっている
②自院を初受診ではあるが、過去に他院で花粉症について薬をもらっており、おおよそのことは分かっている
③初めて花粉症になった方で自分が本当に花粉症なのか、その原因が何なのかを知りたいと思っている
そして特筆すべきは、上記の①、②の患者さんと③の患者さんでは求めているものが大きく異なるということです。
①、②の方々の求めているものの多くは「早く薬を出してくれること」であり、③については「自分の症状に対して一定の診断をし、その上で症状を緩和させて欲しい」という診察ニーズなのです。
上記のように花粉症の患者さんを因数分解することで、それぞれのニーズに応えた診療を提供することが可能です。
①、②の方については自分が使い慣れている薬の名前や希望する投与日数、点鼻や点眼の必要の有無を受付で予め聞いておくだけでも、かなりの時間を短縮できます。
また、①、②の患者さんの診察はそもそもあまり時間を必要としないため、希望の処方薬がわかっている患者さんのための、特急レーンのような普段の診療順とは異なるルールを一時的に作ることも有効に働きます、
<まとめ>
混み合うことがわかっている花粉症シーズンだからこそ、普段の診療の型に捉われない思い切った施策を導入し対応することが、待ち時間の長さから患者さんを帰らせてしまうロスを防ぎ、尚且つ院長先生やスタッフが健全な時間に診察を終え、負担の少ない効率の良い診療に繋がります。
本コラムが先生方の医院経営の一助となれば幸いです。