「1人あたりの診療時間」短縮のポイント
1人あたりの診療時間とは
耳鼻咽喉科医院では花粉症の時期など患者さんが増える時期があるかと思います。
そのような時期に特に意識していただきたい点として「1人あたりの診療時間」の短縮が挙げられます。
今回お伝えをする「1人あたりの診療時間」とは患者さんを診察室に呼び込んでから、処置、検査の説明などを行って、患者さんが診察室を出ていき、次の患者さんが入ってくるまでの時間です。
ただ、「1人あたりの診療時間」の“短縮”だけを意識すると、患者さんへの説明が疎かになったり、処置がじっくりできなくなってしまうといった弊害があります。
そのため、1人あたりの診療時間の短縮は診療時間を細分化した上で自院の状況をよく考えながら、「どの時間」を短縮できるかを見直していただく必要があります。
診療時間を細分化すると以下の5つに分けることができます。
- 呼び込みから着席にかかるまでの時間
- 処置前会話を行っている時間(問診etc)
- 処置にかかる時間
- 処置後会話を行っている時間
(病状の説明や今後の治療計画etc) - カルテ記入指示もしくはカルテ記入時間
この中で処置前会話や処置に要する時間、処置後の会話を短縮することは“医療”に直結する内容なので、
明らかに短縮したとなると、患者さんの満足度が低下してしまいます。
そのため、まずは
- 呼び込みから着席にかかるまでの時間
- カルテ記入指示もしくはカルテ記入時間
この2点から意識していただくと良いでしょう。
それぞれの時間の目安時間とそれらを超える場合の対処法をお伝え致します。
■「呼び込みから着席にかかるまでの時間」
こちらの目安は15秒以内です。
理想値は8秒です。
15秒を明らかに超えているケースとしては以下の状況が考えられます。
パターン1
スタッフが呼び込むべきタイミングを理解していない
パターン2
中待合室からユニットまでの距離が長い
パターン1の場合は
呼び込むスタッフが医師の指示を待っているという状況が一番よく見受けられます。
そのため、時間の短縮のためには院長先生から「○○をしたら、次の患者さんを呼び込む」といった“ルール設計”をする必要があります。
パターン2の場合は
明らかに遠い場合であれば、1つの方法として“パイプ椅子”と“パーテーション”などで簡易の中待合室を設ける対策が有効です。
呼び込み時間の短縮施策は医院の動線によって異なりますが、「どこまで短縮できるか」という視点を持って、短縮を心がけていただく事が必要です。
■「カルテ記入指示もしくはカルテ記入時間」
こちらの理想時間は30秒以内です。
30秒以上かかっている場合にはクラーク制度を導入していただくことを推奨しております。
ちなみに紙カルテの場合でも「医師が確認した」という意味合いでクラークが紙カルテにかいたものに医師が承認印を押すと、法的に問題ありませんので紙カルテの医院さんにもクラーク制度の導入を推奨しております。
そして、このクラーク制度は既に導入していらっしゃる医院さん、まだ導入していない医院さん、様々いらっしゃいますが、重要なことは
「各医院のレベルに応じた指標を踏まえた」
上でステップアップしていくことです。
クラークの運用について初級、中級、上級と三つに分けてお話をします。
◆初級
まだクラーク制度を導入していない
◆中級
クラーク制度を導入しているが、まだ定着していないもしくはうまく運用できていない
◆上級
クラーク制度の運用がある程度うまくいっている
まず初級の場合ですが、この状況に陥っている院長先生は「スタッフを信用できていない」場合が多いようです。
成長するには時間はかかりますが、導入しない限りは今の体制から脱却することはできません。まずは思い切って、医師の横に座っていただきましょう。
そして、所見の入力のみといった、基礎的な内容から始めてもらうと良いでしょう。
次に中級の場合ですが、この段階の医院さんは「うまく運用できていない」理由として特定の人ばかりにクラークを担当してもらい、全員ができる仕組みにしていない場合が多いようです。
医療事務の常勤スタッフがいる医院さんでは全ての事務スタッフがクラークをできるようになることを目標としていただく必要があります。
そのためには誰もが一定レベル以上の業務品質が提供できるよう、「業務の基準」を明確に作った上で常に運用していただくことが良いでしょう。
また並行して「クラークの教育体制」を整備していただくことも必須です。
1カ月目は○○まで
3カ月目は○○まで
といった時期別に応じた教育マニュアルや入力するポイントをまとめたクラークマニュアルの整備を早急に行った方が良いでしょう。
最後に上級の場合ですが、この状況に到達している医院さんでは「クラークに任せる内容のレベルを上げていきたい」もしくは「優秀なクラークの人数を増やしたい」といった想いが存在するでしょう。
まずは「クラークに任せる内容のレベルを上げていきたい」とお考えの医院さんでは薬剤や処置、検査など入力する項目を増やしたいと考える内容は医院によって様々だと思いますが、クラークが暗記するためのマニュアルを整備することは必要でしょう。
弊社でも以下のようなものをクライアント様の医院で整備しております。
- 病名とリンクしている薬剤の一覧表
- 病名と検査処置名の一覧表
このようなマニュアルを整備し、クラークの知識レベルを上げる必要があります。
その上で徐々に任せていく範囲を広げていくことが重要です。
但し、いきなり範囲を広げすぎるとスタッフから大きな抵抗にあう可能性が高いので、その点はうまく状況を勘案しながら進めていただく必要があります。
そして「優秀なクラークの人数を増やしたい」とお考えの医院さんでは、情報共有をしていただくことが最良でしょう。
「優秀なクラーク」であるスタッフの方にファシリテーターとなっていただき、クラーク業務に関するミーティングを定期的に行っていただくと良いでしょう。
このミーティングにおいて優秀なスタッフさんが優秀である“ノウハウ”を共有することで能力の引き上げにつながります。
自院の状況と照らし合わせながら、「自院で短縮できるポイントは何か?」を常に意識していただくことが独自の最良の診療体制を構築することにつながります。
忙しくなると多くの人は心に余裕がなくなり、考える時間が減ってしまう傾向にあります。
だからこそ、“どのようにすれば多くの患者さんが来院されても忙しくならないのか”といったことについて考えていただき対策を進めていただければと思います。