
2024年10月、厚生労働省から「2024年度・地域別最低賃金の改定額」が発表されました。
全国平均は1,055円となり、すべての都道府県で50円〜84円の引き上げとなりました。実は4年連続での大幅な引き上げでした。
これまでも医療機関にとって人件費は大きなウエイトを占める経費項目でしたが、今後はさらに戦略的なマネジメントが求められます。
そこで今回は「今後のさらなる最低賃金の引き上げで起こる課題」と、その「具体的な対策」について、4つのポイントに分けてご紹介します。
●今後のさらなる最低賃金の引き上げで起こる4つの課題
まず、今回の最低賃金アップに伴って、現場で起こりやすい課題を整理してみましょう。
1.人件費の増加
たとえば、時給が50円上がると、フルタイムのパートスタッフ1名あたり月に約8,000円の増加になります。
さらに社会保険や労働保険といった法定福利費も連動して増えるため、実質的な負担はそれ以上になる可能性があります。
人件費の増加はスタッフが多いほど、経営にとっては大きなインパクトとなります。
2.採用競争力の低下
周囲のクリニックや企業も同様に最低賃金を引き上げているため、「時給の差」では差別化しづらくなっているのが現状です。
結果として、採用がより困難になり、良い人材を確保するにはさらにコストをかける必要が出てくるかもしれません。
3.扶養内スタッフのシフト調整が難しくなる
最低賃金が上がれば、同じ給与内で働ける時間数が減ります。そのため、扶養の範囲で働いているスタッフはシフトの調整が必要になり、結果的に人手が足りなくなる場面が増えるリスクがあります。
4.常勤スタッフのモチベーション低下
パートスタッフの時給だけが上がり、常勤スタッフの給与は据え置き……。これでは「自分だけ評価されていない」と感じるスタッフも出てくるかもしれません。
公平感を保つことは、職場のチームワークやモチベーション維持において、見過ごせないポイントです。
●医院として取るべき、4つの対策
最低賃金の上昇をただ嘆くのではなく、「どう向き合うか」が医院経営の差になります。
ここからは、現場でできる具体的な対策を4つご紹介します。
1.医業収入を増やす工夫を
売上が増えれば、当然ながら増加する人件費を吸収する余地も広がります。
ですが、診療報酬の即時アップが難しい中でどう対応するか?
以下のような視点で見直してみてください。
検査体制の見直し
現在行っている検査は、本当に適切に実施できているでしょうか? たとえば、生活習慣病の患者さんに対する定期的な血液検査や画像検査は、過不足なく行えていますか?
また、内視鏡検査やCT・エコー検査など、自院で対応可能な検査の案内・訴求がしっかりできているかも見直してみましょう。「検査を受けられることを知らなかった」という患者さんがいないか、ぜひ一度確認してみてください。
患者数・レセプト枚数を増やすために
患者数を増やすためには、今こそ「クリニックに合ったマーケティング戦略」が重要です。 どの地域から、どんな手段で患者さんが来院しているのかをしっかり分析し、自院に合ったターゲット設定を行いましょう。
その上で、ホームページ、Googleビジネスプロフィール、地域媒体など、効果的な集患手段を選び、的確にアプローチしていくことがポイントです。
2.スタッフのスキルアップで“生産性向上”
人件費が上がった分、スタッフ一人あたりの仕事の幅を広げていかなければ生産性が低下してしまいます。
「完璧」でなく「まずは少しずつ」
スタッフのスキルアップを考える際、つい完璧を求めてしまいがちですが、まずはできる範囲で“横断的な仕事”を覚えてもらうことから始めましょう。
受付だけ、介助だけ、という固定化を防ぎ、柔軟に動ける体制を作ることで、シフトの穴も埋めやすくなります。
3.医療DXで“人手不足”に備える
人手が足りないなら、デジタルの力も借りましょう。
たとえばレセプトチェックや入力作業など、一定の手間がかかる業務にはレセプトチェッカーの導入も選択肢になります。
「人にしかできないこと」に集中を
ルーティンワークやチェック業務をDXで効率化し、スタッフが「患者さんへの対応」「現場判断」などに注力できる環境づくりを目指しましょう。
導入の判断基準は、「削減できる時間×人件費」と「導入するツールのコスト」とを比較して検討をいただくとよいです。
4.“慣例”を見直して、無駄な残業を削減
見落とされがちですが、“当たり前になっているムダ”こそ、コスト見直しの大きなチャンスです。
<たとえばこんなケース>
診療前の準備で全員が30分早く出勤しているけど、本当に全員必要?
診療終了後、受付が終わってもなんとなく残っている?
締めを一人がやっていて、他のスタッフはそれを待っている?
こうした“慣例的残業”を見直すだけでも、人件費のコントロールにつながるケースは少なくありません。
●最後に
最低賃金の引き上げは避けられない流れです。
ですが、対応を工夫することで、医院の組織力を高めるチャンスにもなり得ます。
「収益アップ×経費見直し」
「スタッフ育成×業務効率化」
この2軸を意識しながら、ぜひ今回の変化を“前向きな行動”につなげていきましょう。
スタッフの安心感と医院の健全経営、その両立のために。少しずつでも、できるところから始めてみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。今月の内容が、日々のクリニック運営のヒントになれば幸いです。なお、集患の具体的な方法や、院内オペレーション改善については、無料の経営相談で詳しくご案内しております。
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