皮膚科・美容皮膚科クリニックの経営において、患者満足度の向上は安定した集患と再来率アップのための重要な要素です。
特に自由診療を扱う美容皮膚科においては、診療そのものの質だけでなく、来院前後を含めた全体的な「患者体験」がクリニックの評価を左右します。
本コラムでは、皮膚科・美容皮膚科の経営において「患者満足度を高める診療体制」について、実践的な視点から詳しく解説します。
<目次>
■皮膚科経営における「数を診る」必要性とその課題
一般皮膚科の診療報酬は、他科と比較して相対的に診療単価が低い傾向があります。
一般的に皮膚科の診療は1人あたり5~10分程度で完結することが多く、1日あたりの患者数が経営の安定に直結します。
しかし「数を診る」ことに注力しすぎると、どうしても「流れ作業」のような診察になりやすく、結果的に患者満足度の低下を招くリスクがあります。
つまり、「効率性」と「丁寧さ」を両立させる診療体制の構築こそが、皮膚科経営の大きな課題であり、差別化ポイントでもあるのです。
■患者満足度はどのように醸成されるのか?
患者満足度は、診察の質だけでなく、予約時の対応、受付、待ち時間、問診、説明の丁寧さ、支払いのスムーズさ、院内の清潔感など、多くの接点の積み重ねによって形成されます。
とくに初診患者にとって、受付から会計までの体験すべてが「このクリニックにまた来たいか」の判断材料になります。
厚生労働省の調査(受診動向調査)によれば、不満足の要素が大きかったのは「診察までの待ち時間」「診察時間」「医師との対話」とされています。
そのため、この3つを高水準で維持することが、リピート率やクチコミの向上に直結します。
注:厚生労働省 令和5(2023)年受療行動調査(概数)の概況から抜粋
■「待たせない」診療体制の仕組みづくり
皮膚科・美容皮膚科における「待ち時間対策」は、患者満足度を向上させる上で非常に重要です。
以下に、待ち時間を短縮し、診療の質を担保するための具体的な施策を紹介します。
・予約システムの導入と活用
予約制を導入することで、患者の来院時間をコントロールでき、無駄な待機時間を削減可能です。予約システムはただ導入するだけでなく、予約と直接来院の割合を最適化することやキャンセルポリシーの徹底等の運用面で試行錯誤することが重要です。
近年は、LINE連携型予約システムや時間帯別枠設定機能を活用することで、キャンセル率の低下やリマインド通知による来院率向上施策をする皮膚科も増えています。
・WEB問診の活用
来院前にスマートフォンやPCから問診票を入力してもらうWEB問診は、受付後の処理時間を大幅に短縮し、問診の質も向上します。
特に皮膚科では視覚情報が重要なため、患部写真を事前にアップロードしてもらうことで、より効率的な診療が可能になります。また美容皮膚科においても、カウンセリングで聞くことを事前に確認できるため、事前準備が可能になります。
・医療クラークの育成と配置
皮膚科にとっては診療の流れをスムーズにするために、医師のカルテ補助を担う医療クラークの配置は非常に効果的です。
診察中のカルテ入力や検査準備をサポートすることで、医師は診療に集中でき、結果的に診療時間の短縮と質の向上を両立できます。特に医師が対面で患者と対話することが可能なため患者満足度向上に大きく寄与します。
・自動精算機の導入
会計待ちによる滞留を防ぐために、自動精算機の導入は有効です。
特に美容皮膚科では複数メニューの併用や継続通院が多いため、ミスのないスピーディーな精算は、患者満足度に直結します。
また、スタッフのレジ締めにかかる時間を大幅に削減することにもつながります。
■患者の心を掴む「話し方」
医師と患者の信頼関係を築くうえで、言葉の選び方や話し方のトーンは重要な要素です。皮膚科は特に「目に見える悩み」が多く、患者は心理的な不安を抱えて来院します。
「症状を否定しない」「患者の話を遮らない」「安心感を与える言葉を使う」など、ちょっとした配慮が診察後の満足度を大きく左右します。
また美容皮膚科では、自費診療の選択に不安を感じる患者も多く、治療の必要性だけでなく「費用対効果」や「他の選択肢」についても誠実に説明する姿勢が信頼を生みます。
医師が全てを話すとなると、診察時間がかさんでしまいますので、スタッフに説明を委譲することも皮膚科・美容皮膚科経営において重要な要素です。
■処置・検査の重要性
皮膚科においては、視診だけで診断がつく疾患も多い一方で、真菌検査やダーモスコピー、病理検査などの実施によって診断の正確性が大きく向上します。
患者にとっても「検査を受けた」という安心感が得られるため、満足度向上につながります。
美容皮膚科でも同様に、VISIAなどを用いた肌診断は、単なる施術の提案ではなく「科学的根拠に基づいた美容医療」であるという信頼感を醸成するツールとなります。
■患者満足度を高めることが皮膚科・美容皮膚科経営を安定させる
患者満足度を意識した診療体制は、単なるサービス品質の向上にとどまらず、再診率・紹介率の向上、Google口コミの評価、ひいてはクリニック経営の安定化に直結します。
とくに競合が増え続ける美容皮膚科市場においては、価格競争ではなく「満足度競争」にシフトしていくことが求められています。
時間をかけるところとかけないところ、医師がすることとスタッフがすることを明確にルール設計しておくことが、皮膚科経営において「効率化」と「満足度」を両立につながります。
私たちは、皮膚科・美容皮膚科クリニックの経営において、患者満足度向上に特化したコンサルティングを提供しています。
診療フローの改善からスタッフ教育、WEB問診の導入支援まで、多角的なサポートで医院経営の質を高めるお手伝いをしています。
本記事が、少しでも皮膚科・美容皮膚科経営の一助となりましたら幸いです。