
クリニックにおけるスタッフの離職率の現状と特徴
近年の採用事情
売り手市場が続く中、企業間の人材獲得競争が激化し求職者側の選択肢が増えることにより、柔軟な働き方がますます重視されています。具体的には勤務形態の組み合わせや時短勤務など、勤務条件の柔軟性を打ち出すことが応募の決め手となることが多いでしょう。
医療業界とその他の業界の離職率および特徴
医療・福祉はサービス業に次いで高い離職率となっており、勤労環境の特性(不規則勤務・対人ストレス・責任の重さなど)が影響していると考えられます。そのため、医療現場では教育機会やキャリアパスの明確さ、職場の人間関係が離職抑止の鍵となるケースが多く、学べる機会や職場の支援体制が整っているかどうかが、長期的な定着に直結します。
<令和6年雇用動向調査結果の概況‐厚生労働省‐>

出典:厚生労働省「令和6年度雇用動向調査結果」
(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/25-2/dl/gaikyou.pdf)(2026年2月25日時点)
スタッフの離職がクリニック運営にもたらす影響
スタッフの離職は、引き継ぎにかかる業務負荷の増大と教育コストの上昇を招きます。さらに、新しいスタッフのオンボーディング(教育・育成)が長引くほど、既存スタッフの負担が増え、診療の質の低下や待ち時間の増加といった悪循環につながります。その結果、患者満足度が低下するリスクも高まります。したがって、欠員補充を目的とした短期的な採用にとどまらず、定着を前提にした戦略的な採用(受入体制の整備を含む)が必要です。
スタッフの離職原因と動機
長期的にスタッフを定着させるためには、スタッフの離職原因についての理解が重要となります。
原因カテゴリの整理
スタッフの主要な離職原因は以下の5つです。
● 勤務体系(シフト・休暇・残業):長時間労働や長い中休み、休暇の取りにくさ
● 評価・報酬:公正な評価の有無、適切な手当・報酬の提供
● 指導の質:OJTの質、教育機会の不足
● 人間関係:同僚・上司との関係性、チームの雰囲気
● 業務負荷:仕事量の増大、複雑な業務の負荷
これらは、スタッフの「働き続けたい」という意思に直結する要素です。たとえば、勤務条件が厳しいとワークライフバランスが崩れ、評価への不満は「頑張っても報われない」という感覚につながります。教育が不十分だと成長の見通しが立たず、人間関係の悪化は日々の出勤そのものを負担にします。さらに業務負荷が高い状態が続くと、疲労とストレスが蓄積し、心身の不調リスクも高まります。
動機・モチベーションの見極め
内発的動機(仕事そのものの納得感:やりがい・成長実感)を高めることは、離職抑止に有効になりやすいといえます。一方で、外発的動機(条件面の納得感:給与・手当・勤務条件・福利厚生など)も重要ですが、条件面だけでは離職リスクを十分に下げられないケースもあります。つまり、両者のバランスが重要であり、個々のスタッフが何に「やりがい」や「納得感」を求めているのかを把握することが必要です。
クリニック特有の要因
加えて、医療・福祉業界で離職が起こりやすい背景には、以下のようなクリニック特有の要因もあります。
● 業務が多様で繁閑差も大きく、教育が後回しになりやすいこと
● 看護師/受付・事務など職種間連携の難しさ(役割境界の摩擦)
● 人間関係が固定化しやすく、派閥ができやすいこと
● 医療現場特有の責任の重さと心理的プレッシャー
離職原因への対応
対策不足が招くスタッフ離職の負の連鎖
離職が続くと、「欠員が出る → シフトが逼迫する → 残ったスタッフの負担が増える → 教育が後回しになる → 新人が定着しない → さらに離職が起きる」という負の連鎖が起こりやすくなります。この連鎖を断ち切るためには、個人の頑張りに頼るのではなく、離職要因に対して“仕組み”として打ち手を整えることが重要です。
リスク回避策の基本
基本策として、導入教育の標準化(オンボーディングの型化)が有効です。新規採用者が「何を・いつまでに・どの水準まで」できるようになればよいかを明確にし、現場の教育が属人的にならない形に整えます。
マネジメントと組織づくり
離職を防ぐうえでは、不満や不安が大きくなる前に拾う仕組みが鍵になります。具体的には、定期的な面談(1on1)と、評価・フィードバックの透明性を整えることが重要です。
勤務条件・業務設計の最適化
勤務条件と業務設計は、離職の引き金になりやすい領域です。「休みにくい」「回らない」「一部に負担が集中する」という状態を放置しないことが重要です。
コミュニケーションとサポート体制
業務や人間関係の悩みは、表面化した時点で既に深刻化していることも少なくありません。相談しやすい環境を用意しておくことが、早期離職の抑止につながります。
離職対策がもたらす影響
既存スタッフのモチベーションUPと新規職員の定着率UP
前述した離職要因への対応を進めることで、現場には複数の好循環が生まれます。離職の抑止は“人が辞めない”ことにとどまらず、診療体制の安定や教育の質の向上にもつながる点が重要です。
期待される成果
離職対策を実施することで、離職率の低下と職員の定着が進み、診療体制が安定しやすくなります。その結果、患者対応のバラツキや待ち時間の増加といったリスクを抑え、患者満足度の改善にもつながります。また、勉強会などの教育機会を継続的に設けることで、学びを日常の文化として根付かせやすくなり、持続可能な人材育成と安定したクリニック運営を支える基盤が形成されます。
入職者の定着率向上
既存スタッフが安定して定着するほど、入職者への指導時間やフォローの余力が確保され、新人の不安やつまずきを早期に解消しやすくなります。勤務環境の改善と教育機会の整備が進むことで、入職者の早期戦力化が促され、結果として定着率の向上につながります。
受入態勢の整備と採用活動は同時進行が基本
受入態勢が整ってから採用活動に着手する場合、採用市場の状況によっては、良い人材が他クリニックや他業種へ流れてしまう可能性があります。そのため、受入態勢の整備と採用活動は「どちらか一方」ではなく、同時並行で進めることが、長期的に安定した人材確保につながります。
とはいえ、「応募が集まらない」「応募があっても途中で離脱してしまう」「音信不通になってしまう」といった悩みを抱えておられる先生も少なくないかと思います。
クレド事務長代行では、採用に関するサポートも行っております。特に、採用の初動対応に関する考え方は、採用成果を左右しやすいポイントの一つです。概要をYouTubeでも解説しておりますので、よろしければご覧ください。
