本記事では、整形外科クリニックの現場で発生しやすい「整理・整頓の課題」を取り上げ、現場の負担軽減・診療効率の改善につながる考え方と運用方法を解説します。リハビリ室・受付・診察室など、多職種が動く整形外科ならではの視点から、すぐに実践できる整理・整頓の進め方をまとめています。
<目次>
1.はじめに
2.整理・整頓がもたらすメリット
3.整理・整頓の進め方
4.受付エリアで使える整理・整頓の工夫
5.まとめ
1. はじめに
整形外科クリニックでは、医師・看護師・受付・理学療法士・リハビリ助手・放射線技師など、多くの職種が院内を行き来しながら業務を進めています。動線が複雑で扱う物も多くなるため、「どこに何があるのか」が曖昧になりやすく、知らないうちに作業効率を下げてしまうケースが少なくありません。
実際に散らかりやすいクリニックに共通する背景には、
・スタッフの困りごとが院長先生に届いていない
・業務時間内に整理・整頓する時間を確保していない
・捨てるものと残すものの基準が曖昧
という3つの問題があります。
整形外科は特に「スタッフや患者さんの動く回数」が多い診療科目です。整理・整頓が少し整うだけで、診療全体の流れが驚くほど滑らかになることがあります。
2. 整理・整頓がもたらすメリット
整理・整頓は「片付いたら気持ち良いからやる」ものではありません。クリニック運営においては、次の2つの実務的メリットがあります。
① 無駄な探し物が減り、診療のスピードが上がる
院内のどこに何があるかが不明確だと、ちょっとした探し物でも診療の流れが止まります。
例えば、
・必要な書類が見つからない
・備品の置き場所が統一されていない
・誰かが別の場所に戻してしまう
このような状況は、スタッフの動きが多い整形外科では特に起こりがちです。
1日数分のロスでも、月単位では大きな時間の損失になります。探し物を減らすだけでも、業務効率は大きく向上します。
② 新人スタッフの負担が減り、教育がスムーズになる
整形外科は覚えることも多く、最初の数週間は新人スタッフが戸惑いやすい時期です。
物の場所が決まっておらず、その都度人に確認しなければならない環境では、
・気を遣いすぎて相談しづらい
・周囲に迷惑をかけていると感じる
といった心理的負担が重なり、教育が進みにくくなります。
逆に、置き場所が整い、院内のどこに何があるかが可視化されているだけで、新人教育のスピードが上がり、定着率にも良い影響を与えます。
3. 整理・整頓の進め方
ここでは、整形外科クリニックで無理なく実践できる流れをまとめています。
■ステップ1:院長先生が「なぜ行うのか」を伝える
整理・整頓はスタッフ任せにすると続きません。
「働きやすい環境にしたい」「業務の負担を減らしたい」という目的を院長先生から言葉で共有することが、最初の一歩になります。
■ステップ2:現場の困りごとを整理する
スタッフ全員が参加する形で、受付・診察室・リハビリ室などの場所ごとに困りごとを出し合います。
付箋などを使って可視化すると、
・どこに負担が集中しているか
・何がネックになっているか
が一目でわかり、取り組むべき順番が決めやすくなります。
■ステップ3:役割分担とスケジュールを決める
「誰が」「どこを」「いつまでに」「どう進めるか」を明確にし、業務時間内で作業できるように計画します。
整理・整頓は仕組み化しなければ維持できないため、時間の確保が非常に重要です。
■ステップ4:不要物・保管物を見極める
最も難しいのは「捨てる基準」を決めることです。
迷う物は一時的に印をつけて残し、次回の見直し時に再度判断できるようにしておくと、スムーズに進めることができます。
4. 受付で活用できる整理・整頓の工夫
受付を整えることは、患者さんへの印象だけでなく、スタッフの動きやすさにも影響します。
例えば、
・電話とパソコンの位置を固定し、作業動線を乱さない
・文具や書類は「重ねない」ことを徹底する
・机の上に置いてよい物を決めておく
・返却忘れ防止のため、保険証・診察券をひとまとめに管理する
・コード類はケースにまとめて足元の危険をなくす
100円ショップのアイテムでも改善が可能で、すぐに取り入れられる工夫ばかりです。
5. まとめ
整理・整頓は、院内をキレイに見せるための活動ではなく、
スタッフが動きやすく、患者さんをスムーズに案内できる環境をつくるための仕組みです。
整理・整頓が整えば、
・無駄な探し物が減る
・新人教育がスムーズ
・ストレスが軽減
・診療効率が改善
といった効果が期待できます。
まずは、院内のどこか一箇所から「置き場所を決める」ことを始めてみてください。それだけでも、現場は確実に変わります。