
<目次>
1. はじめに:整形外科クリニックにおける「待ち時間」という課題
2. 待ち時間を生む2つのボトルネック
3. なぜ受付・会計の改善が重要なのか
4. 目指すべき待ち時間の目安
5. まとめ:業務プロセスの見直しという視点
1. はじめに:整形外科クリニックにおける「待ち時間」という課題
スポーツ外傷、慢性疾患、術後フォロー、高齢化に伴う患者増…。
整形外科クリニックが日々多くの患者様で賑わうのは、地域医療への貢献と信頼の証です。
しかし、その一方で「待ち時間」は、多くのクリニックが抱える共通の悩みではないでしょうか。
患者満足度を下げ、クリニック運営の効率を妨げるこの問題を、どうすれば解決できるのでしょう。
「待ち時間」が発生する場面は主に二つ。
『診察を待つ時間』と『会計を待つ時間』です。
本稿では、これらの待ち時間を短縮する上で見落とされがちながら、実は大きな改善効果が期待できる「受付・会計業務」に焦点を当て、その問題点と改善のヒントを探ります。
2. 待ち時間を生む2つのボトルネック
診察までの待ち時間が長くなる要因として、丁寧な診察やレントゲン撮影、処置に時間がかかるのは整形外科の特性上、避けられない面もあります。
しかし、それだけではないケースも多いのです。問題は、2つの主要なボトルネックが待ち時間を引き起こしている点にあります。
①診察前の「受付業務」の処理能力
受付業務の処理能力が、来院される患者様の数や業務量に対して追いついていないことにあります。
例えば、来院が集中する時間帯の受付対応、ひっきりなしの電話応対、詳細な確認が必要な問診票の対応や処理、保険証確認やカルテ準備…。
これらに追われ、スタッフが他の業務(例えば診察室への案内)に手が回らず、結果的に患者様をお待たせしてしまうのです。
②診察後の「会計業務」の処理能力と複雑さ
診察が終わったのに会計で待たされるという状況も頻繁に見られます。
これも主な原因は受付・会計にあります。
診察室からカルテ情報が連携されても、受付スタッフが他の業務(電話、新患対応など)に忙殺されていれば、会計処理は後回しになりがちです。
また、整形外科では診察のほか、リハビリテーションのみで来院される患者様や、同日に診察とリハビリテーションの両方を受けられる患者様も多くいらっしゃいます。
こうした多様な患者様の流れや、それに伴う部門間の情報連携(例:医師からリハビリへの指示、リハビリ実施状況のフィードバックなど)、そして各々に合わせた会計処理は、受付・会計業務を複雑にし、結果として会計待ち時間を延伸させる要因となり得ます。
もちろん、診察室からの情報連携の遅れが原因の場合もありますが、多くの場合、受付・会計プロセスの非効率さが、患者様の最終的な待ち時間として表れているのです。
3. なぜ受付・会計の改善が重要なのか
「スタッフのスキル次第」と思われるかもしれませんが、業務プロセスそのものに改善の余地があるケースがほとんどです。
受付・会計の効率化は、単に待ち時間を短縮するだけでなく、以下のような好循環を生み出します。
・患者満足度の向上
スムーズな案内と会計は、痛みや不安を抱える患者様の信頼を得る上で不可欠です。
・スタッフの負担軽減
業務効率化はスタッフのストレスを減らし、働きがいと定着率を高めます。
・クリニック全体の生産性向上
患者様の流れが円滑になり、より効率的な診療運営が可能になります。
受付・会計業務の改善は、患者様、スタッフ、そしてクリニック経営の三方にとってメリットが大きいのです。
4. 目指すべき待ち時間の目安
自院の現状を把握するため、以下の時間を目標値として参考にしてみてください。
・受付後、診察(中待合含む)に呼ばれるまで ⇒ 25分以内
・診察終了後、会計に呼ばれるまで ⇒ 3~5分以内
これらはあくまで目安ですが、改善目標を設定する上で役立ちます。
5. まとめ:業務プロセス見直しという視点
整形外科クリニックにおける待ち時間の問題は、受付・会計業務の効率化によって大きく改善できる可能性を秘めています。
特別なスキルや高価なシステム導入を検討する前に、まずは現在の業務プロセスを客観的に見直し、どこに時間がかかっているのか、連携はスムーズか、改善できる点はないか、といった視点を持つことが重要です。
受付・会計の業務プロセスを見直し、改善を図ることは、患者様から選ばれ続けるクリニックであるための、未来への重要な投資となるのでしょう。