
訪問リハビリテーションにおいて、介護保険と医療保険では、利用できる回数や時間の上限に違いがあることをご存じでしょうか?
今回は、この2つの制度の違いを簡潔に、分かりやすくご紹介します。
<目次>
1. 訪問リハビリテーションとは
2. 介護保険による訪問リハビリテーション
3. 医療保険による訪問リハビリテーション
4. 訪問リハビリテーションの役割と意義
5. まとめ
1. 訪問リハビリテーションとは
訪問リハビリテーションとは、病院・診療所・介護老人保健施設に勤務するリハビリ専門職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)が利用者のご自宅に訪問し、運動療法や作業療法、嚥下訓練などを通じて、心身機能の維持・回復、日常生活の自立を支援するサービスです。
また、福祉用具の活用や自宅環境・介護環境に関するアドバイス、ご家族からの介護相談にも応じており、在宅介護を行うご家庭にとって大きな支えとなっています。
2. 介護保険による訪問リハビリテーション
介護保険を利用した訪問リハビリは、1回20分以上、1週間あたり6回まで(1回40分であれば週3回まで)を上限に提供されます。
つまり、
〇40分間の訪問リハビリであれば週3日まで可能
〇60分間の訪問リハビリであれば週2日まで可能
ということです。
そして、介護保険で利用する際には、3か月に1度、主治医による訪問リハビリの指示書が必要となります。
3. 医療保険による訪問リハビリテーション
医療保険を活用した訪問リハビリは、正式には「在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料」として位置づけられています。
【医療保険での対象者】
・要介護認定を受けていない方(例外あり)
・通院が困難で、自宅療養を行っている方
・訪問診療を受けている方(月1回以上)
原則、要介護認定を受けている方は介護保険が優先されるため、医療保険での利用はできません。
ただし、65歳未満の方や、65歳以上でも要介護認定をまだ受けていない方は医療保険での利用が可能です。
この場合、訪問リハビリの指示書は毎月1回主治医から発行してもらう必要があります。
【利用上限と例外】
・基本的に1回20分以上、週6回まで利用可能。
・ただし、以下のケースでは制限が緩和されます。
⇒末期がんの方:回数制限なし
⇒退院後3か月以内:週12単位まで
⇒急性増悪時:1日4単位まで
4. 訪問リハビリテーションの役割と意義
訪問リハビリは、通院が困難な方を対象とし、在宅環境の中で本人の残存能力を最大限に活かす支援を行います。
施設で行う通所リハビリや外来リハビリと違い、実際の生活空間でマンツーマンのサポートが受けられるのが大きな特長です。
訓練内容は医師の指示やリハビリ計画に基づき、本人やご家族の希望を反映しながら進められます。
また、以下のような具体的な日常生活支援も行われます。
・歩行・トイレ・入浴・家事動作などの実践的訓練
・外出練習や社会参加への支援
・ご家族への介助指導
・自宅内環境の調整や福祉用具の提案 など
このように訪問リハビリは、身体機能の回復だけでなく、自宅で安心して暮らし続けるための多面的なサポートを提供する重要な役割を担っています。
4. まとめ
医療保険と介護保険、それぞれの訪問リハビリテーション制度には、対象者や算定条件、回数制限など、運用上の明確な違いがあります。
特に整形外科医院においては、退院直後の患者様や通院が困難な方への継続的なリハビリ提供という観点から、医療保険での訪問リハビリの活用は非常に実用的です。
一方で、介護保険を活用する場合は、中長期的な機能維持・在宅生活の質の向上を目的とした支援が中心となるため、通所リハビリとの住み分けも含め、体制整備が不可欠です。
本記事が、整形外科医院の先生で訪問リハビリ導入を検討される際の参考となれば幸いです。
制度や運用に関するご相談も承っておりますので、必要があればお気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。