経営計画

MRI導入を「コスト」から「投資」へ           整形外科クリニックの戦略的活用

整形外科クリニックにおいて、診断の精度向上と患者様の満足度は、経営の両輪です。
特に運動器疾患の精密な診断に欠かせないMRIは、今やクリニックの格を決定づける存在といっても過言ではありません。
しかし、多額の投資を伴うMRI導入に対し、「本当に採算が取れるのか」と二の足を踏まれる院長先生も多いのではないでしょうか。
今回は、単なる機器のスペック比較ではなく、整形外科クリニック全体の経営基盤を強固にするための「戦略的なMRI活用法」について考えます。

<目次>

1.骨塩定量検査の見直しの背景
2.MRI撮影1件当たりの診療報酬は?
3.年間収支のシミュレーション
4.MRI導入を「コスト」と捉えるか、「成長への投資」と捉えるか

1. MRI購入に伴う諸経費の整理

諸経費を大きく分けますと以下の3通りとなります。

・MRI装置の本体費用と関連工事費
・運用に伴う電気代・環境費
・保守費用

費用は減価償却の考え方で計画します。
例えば、1.5T未満のMRI機種を関連工事費込みで約7,500万円と仮定し、耐用年数を6年とする定額償却を適用すると、1~6年目の減価償却費はおおよそ1,250万円/年、7年目以降は0円となります。

電気代については、診療所が日8時間・月20日稼働の場合、単価を20円/kWhと仮定して年間約130万円、チラー(冷却装置)を含めると約180万円程度が目安です。

保守費用は、1年目が無料、2年目以降は約500万円程度と想定します。
以上を合算すると(ここでは保守・電気代はチラー込み180万円で試算)、初年度は約1,430万円、2年目~6年目は約1,930万円、7年目以降は約680万円(=電気代等180万円+保守500万円)程度の年間支出となるケースが想定されます。

2. MRI撮影1件当たりの診療報酬は?

放射線診断専門医が常勤せず、画像診断管理加算がない施設を想定した場合、例として
磁気共鳴コンピュータ断層撮影料 900点(1.5T未満)+コンピュータ断層診断料 450点+電子画像管理加算 120点=合計1,470点
といった組み立てで試算することが可能です。

※点数や算定要件は改定・施設基準で変わるため、実運用では最新の算定基準に基づき確認してください。
実務上、1日あたりの撮影件数が増えるほど年間の診療報酬収入は上振れします。
仮定の例として、日次件数を5件・6件・7件・8件・9件と設定すると、年間の診療報酬収入はおおよそ次のように推移します。

・5件/日:約1,760万円
・6件/日:約2,120万円
・7件/日:約2,470万円
・8件/日:約2,820万円
・9件/日:約3,180万円

※上記は「点数・稼働日数などの仮定」に基づく概算です。
 実際の換算や稼働日数、読影体制等により変動します。

3. 年間収支のシミュレーション

まず、5件/日を基準とした年間収支のモデルケースを紹介します。実務では稼働日数、保守契約内容、電力単価などで数値が変わります。

前提条件

・設備費用(本体+工事)約7,500万円、耐用年数6年、定額償却
・減価償却費:1~6年目 約1,250万円/年、7年目以降 0円
・年間電気代等:180万円(チラー含む)
・保守費用:1年目 0円、2年目以降 500万円/年
・初年度の診療報酬収入:5件/日で約1,760万円

撮影件数/日売上(万円)減価償却費(万円)電気代等(万円)保守費用(万円)合計費用(万円)利益(万円)
1年目51,7601,25018001,430330
2年目51,7601,2501805001,930-170
3年目51,7601,2501805001,930-170
4年目51,7601,2501805001,930-170
5年目51,7601,2501805001,930-170
6年目51,7601,2501805001,930-170
7年目51,76001805006801,080

上記のように、保守費用が発生する2年目以降に収支が重くなる一方、7年目以降は減価償却費がなくなり収支が大きく改善します

次に、6件/日を基準とした年間収支のモデルケースです。

前提条件

・設備費用(本体+工事)約7,500万円、耐用年数6年、定額償却
・減価償却費:1~6年目 約1,250万円/年、7年目以降 0円
・年間電気代等:180万円(チラー含む)
・保守費用:1年目 0円、2年目以降 500万円/年
・初年度の診療報酬収入:6件/日で約2,120万円

撮影件数/日売上(万円)減価償却費(万円)電気代等(万円)保守費用(万円)合計費用(万円)利益(万円)
1年目62,1201,25018001,430690
2年目62,1201,2501805001,930190
3年目62,1201,2501805001,930190
4年目62,1201,2501805001,930190
5年目62,1201,2501805001,930190
6年目62,1201,2501805001,930190
7年目62,12001805006801,440

撮影件数が1日当たり6件あれば、1年目から黒字になるうえ、継続して利益を計上することができます。したがって、もし検査収益単体で黒字を目指すのであれば、今回のシミュレーション上の結果からは「1日6件」がひとつの目安となります。

3. MRI導入を「コスト」と捉えるか、「成長への投資」と捉えるか

MRI導入は高額であるがゆえに「コスト」として捉えられがちですが、見方を変えれば、診療の質と患者体験を底上げし、クリニック全体の競争力を高める「投資」になり得ます。
まずは、今回のように前提を置いたシミュレーションで費用構造を可視化し、自院の運用設計とセットで導入判断を進めることを推奨いたします。
本記事が整形外科クリニック経営のご参考になれば幸いです。