■皮膚科医院における美容施術の価格戦略とプロスペクト理論とは?

美容皮膚科を併設する皮膚科医院の経営において、価格戦略は新規患者の集患だけでなくリピート率の向上にも直結する重要な要素です。
とはいえ、多くの皮膚科医院では自費施術の価格設定を近隣の相場だけで決めがちです。
「これくらい妥当かな・・・?」といった感覚で決めてしま
いがちですが、患者心理を理解した価格設計へと切り替えると、同じ施術でも受け止め方が大きく変わり、来院患者さんの納得感と再来意欲が高まる可能性があります。
本コラムでは、「プロスペクト理論を軸」に実践的な価格設計における考え方のヒントをお届けします。
特に「松・竹・梅」の価格設定が、患者視点の心理でどう作用するのかを分かりやすくお伝えします。
●「プロスペクト理論」とは?
ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンが提唱したこの理論は、行動経済学の基盤として重要です。
損失回避性に重きを置き、人は利益を得る喜びよりも損失を避ける不安の方が強く反応する傾向があると指摘します。
皮膚科医院の美容領域においては、患者は「確実に得られる利益」を求め、損失を回避したいという心理が購買判断に大きく影響します。
この心理を理解することは、皮膚科医院の美容施術や自費施術の価格決定を考えるうえで非常に重要です。
顧客は「確実な選択を好む」傾向があるため、適切なマーケティングやプロモーション設計を組み立てることで、皮膚科経営の成果として、美容施術の購買判断を高めることができます。
●損失回避性と「松・竹・梅」の価格設定とは?
「松」「竹」「梅」といった価格設定は、日本で古くから使われる手法で、この中で「松」が基準点(参照点)となり、高い方から順に「松」→「竹」→「梅」となります。
プロスペクト理論の観点から見ると、多くの顧客が「竹」を選ぶという傾向にあります。
これは「梅」を選んで品質に不安を感じたり、「松」を選んでコストをかけすぎたと感じる可能性を避けるためです。
●基準点(参照点)の概念とは?
プロスペクト理論では、参照点が「利益」と「損失」の判断基準となります。
に参照点は扱う金額の大小によって、損得の感じ方に影響を与えます。
具体な例を挙げますと、、、
□【日常の買い物】日用品を買う際には、100円の価格差が大きく感じられます。
これは、小さな金額に基づく参照点では、わずかな違いでも敏感に反応するためです。
□【高額な買い物】対照的に、住宅購入のような高額な買い物では、数10万円のオプション費用も特に気にならないことがあります。
全体の価格が高く、参照点が上昇するため、小さな価格差が重要視されないためです。
□【美容皮膚科併設の皮膚科医院】
この参照点の考え方について、美容皮膚科での例を挙げると、5万円以上の美容施術を受けた後に、「この化粧品を使うと普段お使いのものより施術効果をより持続させることができます」として1万円台の化粧品を勧められると、普段1,000円から3,000円の化粧品を使っている人であっても、その化粧品が高くないと感じる可能性があります。
施術そのものが新たな基準(参照点)となっているため、1万円という価格が相対的に安く感じられるからです。
また、「施術効果を長持ちさせる」という言葉により、損失を避けたいという心理が働き、1万円台の化粧品購入を「投資に対する付加価値」と判断しやすくなる傾向もあります。
●まとめ:継続的アプローチの重要性
プロスペクト理論を軸にした価格戦略は、損失回避性を前提に「確実性の高い選択」「適度な価格帯の訴求」「限定性のあるキャンペーン」を組み合わせることで、新規患者の獲得と既存患者のリピートを両立させやすくします。
松竹梅価格設定と参照点の考え方を通じて、「竹」の価格帯を魅力的に感じてもらい、施術の価値と長期的な関係性を高めることが効果的です。
美容皮膚科併設の皮膚科医院における価格設定や、美容施術におけるキャンペーン戦略の実例などをお聞きしたい院長先生は、お気軽に「無料経営相談」をご利用ください。