マネジメント
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求人における給与の見せ方と工夫

以前から日々のコンサルティングの中で採用に関するご相談を多くいただいておりますが、今後さらなる人口減少・高齢化により、ますますクリニックにおける採用事情は厳しくなっていくと予測されます。

また、ここ数年は大幅な最低賃金の上昇が続き、採用に関する悩みに拍車をかけているように見受けられます。
そこで今回は、求人における給与の見せ方と工夫についてお伝えいたします。

採用において給与が重要であることは先生方も実感としてお持ちかと思います。
改めてデータで確認してみると、人材大手のマイナビが実施した転職同行調査2024年度版において、転職活動を始めた理由として最も多いものが「給与が低かった(11.5%)」であり、転職先を決めた理由として最も多いものが「給与が良い(14.1%)」となっていることから、数字の上からも「給与」が多くの転職者の重要な要素となっていることが読み取れます。

こうした話をすると、「給与を上げれば応募が増えるのはわかるが人件費が経営を圧迫するので給与の改定は現実的では無い」「新入職員だけ給与を上げるわけにはいかず募集賃金を上げるとすると全員の給与を上げることになるが、一度給与を上げると下げられないから容易には募集賃金を上げられない」などのお声を頂戴します。

勿論、先生方がおっしゃる通り経営上適切とされる人件費の目安は存在しており、応募が無いからと言って闇雲に給与を上げることは好ましくありません。

そこでお伝えしたい方法が給与の見せ方の工夫です。

例えば、常勤職員の場合であれば、

①常勤職員の採用においては通年で一定の残業が発生している場合

常勤職員の固定残業制度を導入
⇒実質の人件費増加を抑えながら求人に掲載できる月給の額を上昇させる

②明確な支給基準が決まっておらず、毎月定例で手当を支給している場合

毎月支給している手当てを基本給に組み込む
⇒月給の額面額を上昇させる

などの方法を取ることで、採用募集時の給与を高く見せることになります。

ただし、これらの方法は給与が高く見えるというメリットだけでなく、以下のような注意点がありますのでご注意ください。

固定残業制を導入する場合は求人票に
・固定残業代を除いた基本給の額
・固定残業代に関する労働時間数とその金額等の計算方法
・固定残業時間を超える時間外労働、休日労働および深夜労働に対して割増賃金(残業代)を追加で支払う旨の説明
の3点を記載する必要があります。

参考:固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。(厚生労働省HP):https://jsite.mhlw.go.jp/shizuoka-roudoukyoku/news_topics/topics/2016topics/_120316.html

手当を基本給で吸収する場合は賞与や退職金など、基本給に連動するものが自動的に増加してしまいますので、基本給の昇給額を小さくしたり、一定年数(10年程度)経過時に定期昇給が止まるような給与制度を導入したりする、といった出口戦略を併用することで人件費の上昇を抑えることができます。

短期的に見ると手間がかかりそうに思えるものでも、制度を変更し、求人に掲載できる給与を上昇させることができれば採用状況の好転が期待できます。
慢性的な従業員不足は患者満足度を低下させ、中長期的な医院の衰退を招くため、目先の手間や負担に惑わされず、対策を講じていただきたいと思います。

また、パート職員に賞与を出している場合でも、以下のような工夫もできます。

③パート職員に賞与を出している場合
賞与を時給に組み込み募集時給を向上させる

「寸志しか出していない」とおっしゃる場合でも、例えば夏冬にそれぞれ3万円を支給している場合、年間の勤務時間で割り戻すと数十円は時給を上昇させることができます。
このようにすることで医院側が負担する実際の支払い額は変わらないのですが、募集時給は上昇します。

今回は採用における給与の見せ方についていくつかの方法をお伝えしました。

求人票で他の医院や企業と差別化し、まずは求職者の注目を向けてもらうために給与の見せ方を工夫することは大切です。
しかし、入職してから想定していた給与と違うなど、トラブルにならないように、面接や内定面談時に給与体系、雇用契約内容のすり合わせを行っておくことも忘れてはいけません。
冒頭でもお伝えした通り、給与については退職理由にもなりやすい要因であるため、あくまで応募を集めるための方法として、ご理解いただければ幸いです。

給与に関わるものは適切な手順を踏む必要がありますが、実施することで人件費の総額をそれほど変えずに、募集賃金を上昇させることができます。
採用難の時代を乗り切るためにも是非ご検討いただければと思います。

固定残業時間やその金額の決定や給与制度の変更につきましては、労働条件の不利益変更となることがないよう、社労士の先生にご相談の上、進めていただくことをお勧めいたします。

本コラムが先生方のお役に立てば幸いです。

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