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クリニックにおけるお返しの原理(返報性の原理)の活用

新型コロナウイルス感染症流行後以降感染症の流行防止のため、医療機関においては特に人と人との接触を出来るだけ少なくする取り組みを進める医院が多くなりました。
最近では、受付で直接患者さんとやり取りをしないクリニックもあり、患者さんも抵抗なく受診しているところもあります。

今後も診療の効率化や人手不足の解消のための医療DXの推進に伴い、さらに患者さんとクリニックとの接触機会は減少していくと考えられます。

人と人との繋がりが希薄になってきている昨今だからこそ、人間本来が持っている人情や義理に近い感情を利用した集患が奏功するケースが増えています。

そこで今回は「返報性の原理」を活用したつい来院したくなる医院の仕組み作りについてご紹介します。

例えば身近な事例として洋服屋の試着が挙げられます。
商品を買うつもりがなくても、店員が親切にしてくれたり、試着でサイズ違いの服を何度も持ってきてくれたりするなどで、つい購入してしまったケースが返報性の原理によるものです。

この“借り”が大きくなればなるほど、「やっぱり買いません。」とは言いづらくなったりします。
「本当は購入するつもりはなかったけど、断り切れず、つい服を買ってしまった。」
という経験をお持ち先生方もいるのではないでしょうか。

このように人間の行動原理を読み解くことは、集患対策を実行する上でとても重要です。
報性の原理には相手から「何を受け取り何を返すか」によって、次に4つの種類に分類されます。

1.好意の返報性

これは、相手から受けた好意を返したくなる心理のことです。
誰かに褒められると、「次は自分も相手を褒めてみよう」という気持ちになることはないでしょうか。
この気持ちの動きが好意の返報性によるものです。
患者さんに好意を持ってほしいなら、まずはクリニックから親切になり、喜ばせる仕組み作りが大切です。

2.敵意の返報性

相手から敵意を向けられたとき、無意識のうちに敵意を返したくなる感情を言います。

「悪いことをするとバチが当たる」と言うように、相手に向けた悪意は、高い確率で自分の跳ね返ってくることが往々にして存在します。

3.譲歩の返報性

相手が譲歩してくれたら、次は自分が譲ろうという心理を譲歩の返報性と言います。
購入しようか迷っている商品を特別に値引きしてもらうと、結果的に予算オーバーにも関わらず、購入を決断してしまうケースがまさにこれに挙げられます。

4.自己開示の返報性

相手がオープンな態度で接してくれると、つい自分も心を開いて接したい心理が働くことがあります。
例えば業者を選定する際に、電話対応だけの会社よりも自院に訪問して丁寧にヒアリングしてくれる業者と契約したいと思う先生も多いのではないでしょうか。
このように訪問を重ねて話を聞いてくれたことで、そのお返しがしたいという想いからくるものです。

自己開示の返報性は、特に初診患者さんに対して有効的な手法です。
では、ここで、内科医院経営における返報性の法則の活用事例をご紹介します。

まず1つ目は返報性の原理の王道とも言える患者さんに無償で何かを提供して“貸し”を作る方法です。
内科医院では患者さんにサプリメントの無料サンプルを配布することが例に挙げられます。

よく健康食品や化粧品などのCMで謳われている

「無料サンプルをプレゼントします」
「全額返金保証します」

というキャンペーンも“貸し”を作る手法から成り立っています。

このように患者さんに上手く“貸し”を作ることで次も困ったことがあればこのクリニックに来院しようと思ってもらえやすくなります。

2つ目の方法としては、患者さんに特別感を与えることです。
内科医院の中にはLINEやメルマガなど、年齢別にメッセージの内容を変えて配信しているクリニックもあります。
このときに自費診療やサプリメントなどの割引のクーポンも添えるとさらに特別感が増し、患者さんも来院しようと思ってもらいやすくなります。
また、来院された患者さんの症状に合わせて対処法などをまとめた医院オリジナルのシートを配布することも、特別感が出る方法といえます。

ただし、返報性の原理は使い方を間違えると患者さんとのトラブルのもとにもなります。
のため次の点には注意が必要です。

【見返りを迫る】

“貸し”を作ったからといって、見返りを求めすぎてはいけません。
当たり前ですが、患者さんが求めていない治療を過度に提案することは、返って患者さんからの反感を買う要因となります。

【高価なものを提供する】

いくら“貸し”を作りたいからといってあまりに高価なものをもらうと、患者さんもかえって委縮してしまいますし、場合によってはクリニックに不信感を抱かれるケースもあります。
このように返報性の原理は、その効果を期待しすぎてしまうと相手の気持ちをないがしろにした行動をとってしまうことになり、かえって患者さんを不快にさせてしまうことになります。

しかし、上手く医院経営で活用することで、患者さんが来院しやすい仕組み作りを構築できる可能性もあります。

本コラムが少しでもクリニック経営のヒントとなれば幸いです。