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患者心理を左右する「ウィンザー効果」とは?

ウィンザー効果とは?

新型コロナウイルス感染症への対応が一段落してから、数年が経ちました。
内科医院の現場では、感染対策や診療体制の見直し、刻々と変わる情報への対応など、まさに試行錯誤の連続だったことと思います。

そうした変化の中で、近年ますます存在感を増しているのが、ChatGPTをはじめとする生成AIの進化や、Google口コミなど第三者による評価情報です。

日常診療の中で、
「先生の説明よりも、ネットで見た情報や口コミのほうを信じているように感じる」
と戸惑われた経験をお持ちの先生も少なくないのではないでしょうか。

このように、当事者からの直接的な情報よりも、第三者から得た情報をより信頼してしまう心理効果
「ウィンザー効果」

と呼びます。

人は、利害関係のない第三者の意見のほうが“客観的で正しいはずだ”と感じやすい傾向があります。
たとえば、

「当院は患者さんに寄り添った、通いやすいクリニックです」

と自ら発信するよりも、

「あそこのクリニックは、先生もスタッフも優しくて安心できるよ」

という口コミを耳にしたほうが、信頼できると感じるのは、このウィンザー効果によるものです。

信憑性の低いネット情報や、真偽不明の口コミに振り回される場面も多く、医療者側としては悩ましい効果でもありますが、今後は「避ける」のではなく、「上手に付き合う」姿勢が求められそうです。

今回は、ウィンザー効果を診療やクリニック運営に活かす視点について考えてみたいと思います。

統計データを活用する

ウィンザー効果を活用する、比較的取り入れやすい方法のひとつが、統計データの提示です。

たとえば内科診療であれば、

「一人ではなかなか成功しにくい禁煙も、禁煙外来での治療成功率は7~8割とされています。自力での禁煙と比べ、3~4倍成功率が高いとも言われています。」

といったように、数値や根拠を示すことで、情報の信頼性は大きく高まります。

また、

「当院では上部消化管内視鏡検査を、2023年は200件、2024年は230件、2025年は260件実施しています」

といった実績の提示も、「多くの方が選んでいる=安心できる」という心理を後押しします。

これはまさに、第三者的な事実を通じて信頼を得る、ウィンザー効果の一例と言えるでしょう。

口コミとどう向き合うか

第三者意見の代表格である口コミの影響力は、年々大きくなっています。

一般的に、強い不満や怒りのほうが投稿の動機になりやすいため、良い口コミよりも、悪い口コミのほうが目に付きやすい傾向があります。良い口コミは、「予想を超える体験」があって初めて書かれる、と考えておいたほうが現実的かもしれません。

現在では、患者さんに口コミ投稿をお願いすること自体は、決して特別なことではなくなりました。
Google口コミでも、投稿用URLの発行が容易にできるようになっています。QRコードを活用し、一定期間で口コミを集めるクリニックも増えています。

「口コミを集めると、悪い口コミも増えるのではないか」という不安もあると思います。
しかし、良い口コミしか存在しない場合、「本当に実態を反映しているのか?」と疑われてしまうこともあります。

ウィンザー効果の観点では、【良い評価も悪い評価も含めた“リアルな声の数”】が重要です。

もちろん、最も大切なのは、患者さんが「自然と良い口コミを書きたくなる」診療や接遇を積み重ねることです。医師だけでなく、スタッフ全体の対応力向上は、遠回りのようで最も確実な対策と言えるでしょう。

バイアスを無理に解こうとしない

近年よく見られるのが、ご自身で症状を調べ、「この病気に違いない」と強く信じた状態で来院されるケースです。

診断結果が患者さんの想定と異なると、不満そうな表情をされたり、質問が続いたりする場面もあるかもしれません。生成AIの普及により、検索せずとも“会話するように答えが得られる”環境が整い、この傾向は今後さらに強まると考えられます。

このような場合、患者さんは強いウィンザー効果やバイアスの影響下にあります。
そのため、医師が「不要」と感じた場合でも、不安を払拭するための検査をあえて提案することで、安心につながるケースがあります。

たとえば、ほてりやしびれなどの症状に対して一通り検査を行い、

「この検査結果から、重い病気は否定できます。現時点では心配いりませんよ」

と、客観的な結果をもって説明することで、納得して帰られることも少なくありません。

強い思い込みに対しては、正論で否定するよりも、いったん感情に寄り添い、患者さんのペースに合わせることが、結果的に信頼関係を深めることもあります。

おわりに

情報があふれる現代において、AI、インターネット、口コミといった第三者情報の影響は、もはや切り離せない存在となりました。

人が第三者の意見を信頼しやすい以上、クリニックとしても、この心理と向き合わざるを得ません。

患者さんの心理を理解し、自院にとっても患者さんにとってもプラスとなる形で、柔軟に対応できたクリニックほど、今後の時代の恩恵を受けていくのではないでしょうか。

口コミ対応など、心が消耗する場面もあるかと思いますが、本コラムが一度立ち止まって考えるきっかけになれば幸いです。