自院の理念を理解・浸透した新卒採用の育成術

突然ではありますが、先生方のクリニックでは「新卒採用」を行っていますでしょうか?

慢性的な人手不足のクリニックでは、スタッフさんの突然の退職や高い離職率のせいで人材が思うように育たないなど、解決すべき悩ましい課題が数多くあると思います。

そこで今回は、「新卒採用」という点から人手不足の解消に繋がるいくつかの手法をご提案します。

< 新卒採用の前準備~業務整理編~ >
まず、クリニックに横たわる「離職」の問題から考えてみましょう。
例えば、ベテランのスタッフさんや良くできるスタッフさんが突然退職してしまう原因の一つは、そうしたできるスタッフさんに頼ってしまっているということが考えられます。
仕事がよくできるスタッフさんに様々なことを任せている間、他の方ができない業務が増えているということです。

そうした状況になりますと、その方が退職すると他のスタッフさんでは誰も対応できないということになって、結局院長先生が対応せざるを得なくなり、診療効率が低下したり診療以外の業務で院長先生の負担が増えたりします。

例 )
事前問診から処置までできる看護師さんが足りず、診療効率が下がる。
返戻・減点への対応やシフト組ができるスタッフさんがいなくなり、先生が対応する。

このような状況に陥らないように今の内から、どのスタッフさんがどの業務をできるのか、
また新卒スタッフさんでもどの業務ならできるかを、
リストにして可視化することで業務レベルの均一化を図りましょう。

< 新卒採用の前準備~教育体制編~ >
次に、新卒採用を受け入れるための教育体制を整えましょう。
せっかく新卒採用を行ってもスムーズに教育が行われなければ、新卒スタッフの成長が遅れ、また教育体制が整っていないことへ不安を感じて、最悪離職に繋がってしまいます。
このように、教育体制を整えておくことは新卒採用において非常に重要です。
そして教育体制を整えるとは、マニュアルの整備や教育係の任命、教育方法の統一などを指します。

教育係を任命されるとき、クリニックでよくあるパターンが勤続年数の高い人をそのまま教育係に任命するというものです。勤続年数の長い方が複数人いればよいのですが、一人に教育係が集中すると、前述の通り、特定スタッフへの業務偏重から離職の危険性があります。
そのため、3年目の先輩スタッフさんにも教育係を分散して担ってもらうことがよいです。
ただし、注意点が3つあります。
1つ目は、必ず指導した内容をベテランスタッフさんに確認していただくこと。
2つ目は、教育係への任命の仕方です。

教育係への任命時には、理由をつけて任命してあげてください。
「この仕事はあなたしかできなくて負担がかかっていると思うから皆ができるように教えてあげて欲しい。」などと、『自分が教育する手間 < 将来的に自分の負担が減る』メリットを伝えてあげてください。

3つ目は、教育係の「教え方」です。
次の3STEPで教えてあげるように、指導してください。
① 業務のやり方を教える。その際、実演を1度してあげる。
② 実際にやってもらう。
③ フィードバックする。間違っていたポイントや重要な点はメモする様に促してあげる。

以上のような流れを繰り返し行うことで、効率よくかつ漏れなく教育しやすくなります。

< 新卒採用~採用編~ >
よくある失敗として、求人票を出してそのままにしていたら何の音沙汰もなく10月くらいになってしまった、というケースがあります。

専門学校へは可能な限り先生が出向いて一度ご挨拶をしていただき(4月頃)、就職活動が解禁になったのちは、こまめに専門学校へ就職活動状況を問い合わせたりしましょう。
(問い合わせ自体は、事務長や先生方の奥様等で問題ありません。)

< 新卒採用~クレド編~ >
新卒採用を行うにあたって、もう一つ整えていただきたいものがあります。
それが、医院のクレド(理念)です。

クレドは新卒のみならず、採用の時の大義名分になります。
「私たちのクリニックはこういう理念の基、日夜、地域医療に貢献しているのです」と明確な旗印があると、応募者からもクリニックをイメージしやすいです。
また、そうしたクレド(理念)に共感していただける方は、長く続けてくれる傾向があります。

また、クレドは院内のルールを作る際の指針にもなります。
例えば処置の時、「必ず○○という治療カードを見せながら説明してほしい」というルールを作る場合、スタッフさんはやはり「なぜ、その手間をかけなくてはならないのか」と思ってしまいます。
そこで、クレドに「患者様には十分に納得してもらう治療を心がけている」という文章があれば、「理念に則って」と言えることができます。

特に皮膚科は看護師さんが処置を全て行われることもあり、先生の目が届かないことがあります。そうした所をルール化する際の、明文化された「お題目」としても活用していただけます。

もし、まだクレド(理念)を持っていないクリニック様や有効に活用できていないクリニック様で、クレド(理念)を浸透させたい・作りたいというクリニック様は、下記の方法をお試しいただいてはいかがでしょうか。

■クレド(理念)が既にあるクリニック
既に理念があるクリニック様の場合、それが浸透しているかを確認してください。
作ったきり、誰も知らない・わからないではもったいないです。
ミーティング時に一人ずつ読み上げてもらう、クレドカードを作成して常に持ち歩いてもらうなど、工夫をして理念の浸透を図ってください。

■クレド(理念)がまだないクリニック
ミーティングの議題などに設定していただき、スタッフさんと一緒に理念を作り上げると良いです。
様々なアイデアを出していただいて、組み合わせて1つの理念にするも良いですし、いくつかのグループに分けてそれぞれのグループから1つずつ出してもらうというやり方もあります。
この辺りは、クリニックのイベント感覚でやっていただければ良いのではないでしょうか。

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