スタッフを直接叱らずに教育するマネジメント方法とは?

【皮膚科医院におけるスタッフ教育の現状】

大多数の皮膚科医院において、スタッフ教育に頭を悩まされている先生方が多くいらっしゃいます。
むしろ悩んだことが無い皮膚科医院は皆無といっても過言ではありません。

特に、皮膚科・美容皮膚科を併設している皮膚科医院にとっては、美容施術を実施する看護師マネジメントにお悩みの先生方が多くいらっしゃいます。

皮膚科・美容皮膚科併設の皮膚科医院におけるマネジメント課題として

・美容皮膚科部門の施術教育がなかなか進まない
・スタッフのモチベーションが低く、リーダースタッフが育たない
・リーダーのスタッフマネジメントのスキルが低く、院長先生が全ての指示だしをしている
・皮膚科経験者の採用が難しく、未経験のスタッフ教育が追いつかない

などが挙げられます。

これらの皮膚科医院におけるマネジメント課題の原因は、院長先生から直接、スタッフに指示を出したり、スタッフ教育に関わったりするマネジメント体制が影響している場合が多くあります。

では、一体、どのようなマネジメントスタイルが皮膚科医院のスタッフ教育において効果的なのでしょうか?

【皮膚科医院におけるスタッフ教育に効果的なマネジメントスタイルとは?】

今回は、スタッフ教育にあたって院長先生がすべきことについて、具体的なマネジメント方法をお伝え致します。

まず大前提として知っていただきたいことは、スタッフの方に同じことを教えても、「伸びるタイプ」と「伸びないタイプ」がいるということです。

この大きな違いは「素直さ」です。

先生方のクリニックには、現に「伸びるタイプ」と「伸びないタイプ」のスタッフがいるかと思います。
それはつまり「素直な方」と「素直でない方」がクリニックには混在されているということです。

先生方にお願いしたいことは、どちらのタイプであったとしても、スタッフが出来るようになったことは全力で褒めてあげて頂きたい、ということです。

しかし、実態のない褒め言葉は絶対に避けてください。

具体的かつ定量的に褒めることが大切です。
また、褒め言葉を乱発してはいけません。

褒めすぎると院長の「褒める」という行動にロイヤリティをスタッフの方が感じにくくなるからです。

 

そして、伸びるタイプ・伸びないタイプに関わらず、成長する瞬間(教育しなければならないタイミング)はやはり「失敗」をした時です。

しかし、スタッフの方が失敗した場合も、院長先生から「こういう仕事をしてはいけない」という指摘はしてはいけません。
失敗した場合に個々で気づいて、苦しんでいるにも関わらず、行動レベルで注意したとしても追い打ちをかけているだけです。

失敗した際にも「頑張ろう!」というスタッフ自身のモチベーションを維持しつつ、周りのスタッフが「サポートしてあげよう!」となる風土づくりがスタッフ教育とマネジメントにおいて重要な点となります。

なぜ、風土が重要なのでしょうか?

多くの皮膚科医院では院長先生とスタッフの方が個別に接することができる時間はごくわずかです。
朝礼や終礼などをしていない場合であれば、スタッフの方と1度も会話することもない日もある院長先生もおられます。

そのため、人間関係の構築ができていない状況で失敗した時のみに院長先生に頭ごなしに注意されたらスタッフの方はどう感じるでしょうか?

「院長先生はわたしのこと、普段知らないのに・・・」とそっぽを向いてしまいます。

では、具体的にどういったマネジメントを実施すれば良いのでしょうか?

マネジメント方法のひとつの案として、
診療時間内にスタッフが携わる業務を大分した下記のような
2分類に各々リーダーを設け、リーダーが統括することをお勧めしています。

(1)院長先生(医師)の目が届く診察室内

(2)院長先生(医師)の目が届かない受付・会計

そして、

失敗がおきた背景や共有しなければならない情報があれば診療終了後に

(1)を担当したリーダー、
(2)を担当したリーダー

からフィードバックをしてもらうことを推奨しています。

このマネジメント体制において大事なことは当事者でもなく、院長先生でもなく、リーダーからフィードバックすることです。
そして、院長先生はもちろん、周りのスタッフがそのフィードバックに対して疑問点・不明点がある場合も当事者ではなく、リーダーに質問するマネジメントスタイルです。

 

このマネジメントスタイルには、以下の四つのメリットがあります。

【第一のメリット】

失敗した当事者が同僚から自分自身の失敗を報告されるということにより、「もう同じミスは繰り返したくない」という原因追求思考になり、失敗の再発防止につながります。

【第二のメリット】

リーダーを担当したスタッフは現状を把握しなければならないという責任者としての意識が芽生えます。

【第三のメリット】

「当事者はリーダーに」、「リーダーは当日のスタッフ全員に」抜け漏れがないように事実背景と今後の再発防止策を伝えようとするため、プレゼンテーション能力が向上します。(報連相のポイント把握)

【第四のメリット】

院長先生がイライラする負担の軽減です。

 

上記四つメリットを有しながら、即日に情報を共有し、二度と同じことが起きないための対応策をとることで翌日からの診療に活かすことができます。
このマネジメントスタイルを導入することで、スタッフ教育という部分において、リーダーと当事者の両方の育成が期待できます。

導入当初においては、改善や対応策をスタッフの方だけで考えた場合、解決の本筋から対応策の方向性がずれている場合もあります。
その際は院長先生が介入し、リードしてあげることが理想的です。

ただ、どうしても「リーダーを任せることができるスタッフ」となると、経験値が高く優秀なスタッフについつい任せてしまいがちです。
そうした状況に陥ると、ごく一部のスタッフの精神的負担が大幅に増加することがあります。

できれば、各パートリーダーは日毎にローテーションを設けて一定の皮膚科・美容皮膚科の業務経験を有しているスタッフであれば全員が担当できるようにすることです。

様々なスタッフに担当させることによって「自分がリーダーだったらこの行動はよくないと思う」という自発的思考を持ち始めます。

すると

「●●さんがリーダーをしてくれるから」
「●●さんがなんとかしてくれるから」

といった他者依存や、「この仕事はこれくらいでいいや」という業務に対しての手抜きが大幅に減ります。

 

一方で新人の方にもリーダーを任せることで自発的思考を育むことができます。
それは診療時間外の業務に関してリーダーを任せてあげることです。

皮膚科医院における診療時間外の業務といえば、掃除、院内の掲示物製作作業および掲示など患者さんに一番近い業務が挙げられます。

皮膚科・美容皮膚科の業務経験が浅い後輩スタッフの「自分が他の皮膚科医院に行って、患者さんの立場になったことを想定した場合、こういうところは嫌だな」という顧客目線は、業務に慣れてしまっている先輩スタッフより優れていることもあります。

この優れているという長所にスポットライトを当ててあげるマネジメントスタイルが、先輩スタッフに対しても意見を述べやすい体制を構築することの第一歩となります。

スタッフの方は勤続年数、仕事の出来の善し悪し、性格(キャラクター)など、それぞれの方に個性があります。
これら全てに目を向けて一人一人に合わせた教育を日々の診療と同時並行で院長先生が行っていくことは難しいでしょう。

 

院長先生が直接、スタッフ教育をするのではなく、スタッフ同士で指導しあい、主体的に立って動くことができる「風土」を構築する。
その環境において対策を講じなければならなくなったとき、善後策の最終決定を行うことそのものが、スタッフのマネジメントにおいて院長先生が行うべきことと言えるのではないでしょうか。

これらの点をご参考にいただきながら、スタッフ教育にお役立ていただけますと幸いです。

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