皮膚科医院で働くスタッフのモチベーションを上げるためのマネジメント

Motivation (2)

皮膚科医院経営を行っていく中で、先生は診療という業務を行いながら安定した組織構築をしていかなければいけません。

クリニックにおける「マネジメント」で頭を悩ませている先生は多いのではないでしょうか?

安定した皮膚科医院経営を行っていくにはスタッフさんの働く意識と仕事に対するモチベーションの高さが大きく影響してきます。

しかし、スタッフさんの働く意識を向上させること、仕事に対するモチベーションを上げることは
一筋縄ではいかず、先生が中心となって定期的なミーティングを行うなどの様々な工夫が必要です。

また、スタッフさんを教育する過程においては「ダメなことはダメ」としっかり伝えなければいけない場面に必ず遭遇します。
そのような場合においては、いかに相手のモチベーションを下げずに「叱る」ことができるかが安定した組織構築におけるマネジメントでは重要となってきます。

 

■ハーズバーグの二要因理論から考える「賞与はモチベーションを向上させるか?」

皮膚科医院経営者である先生からすると大きな出費になるのですが、
スタッフさんの仕事に対するモチベーションを上げて欲しいという願いから
賞与を出す、給与を上げるといった先生はいらっしゃいますでしょうか?

結論から言いますと、どうやらその期待に叶うとは言い難いようです。

これを明らかにしたのがハーズバーグの二要因理論です。

ハーズバークが提唱したこの理論では仕事への満足度は

  • 「動機付け要因」
  • 「衛生要因」

の2つから成り立つとされており、
「動機付け要因」は仕事への満足度に、「衛生要因」は不満足に関わる要因と扱われています。

「動機付け要因」は満足度に関わっている要因ですので高いレベルで満たすことができれば
従業員の満足度も上がり、モチベーションアップにつながるのですが、
「衛生要因」は不足すると不満足に感じる要因とされており、
高いレベルで満たしても満足度の向上に繋がらず、モチベーションアップにも繋がりません。

ハーズバーグの二要因理論

上記の表から分かるように、「給与」は「衛生要因」として扱われています。

そのため、この理論では給与を上昇させてもスタッフの満足度はそれほど高くならないと考えられています。

そのため「賞与はモチベーションを向上させるか?」という問いに対しては
「全く上がらないわけでは無いが、賞与だけでモチベーションが上がると考えるのは危険」
という回答になります。

ただ、だからといって賞与を出さない、給与を下げるといった行為は不満足を招き
仕事に対するモチベーションも低下する原因になりますので注意が必要です。

 

■皮膚科医院経営に活かす新庄監督のチームマネジメント術

では、モチベーションを上昇させるためにはどのようにすれば良いかと申しますと、
「動機付け要因」である「達成」や「承認」をスタッフさんが感じられるようにしていただくと良いことになります。

皮膚科医院の組織構築におけるマネジメントでは、BIGBOSSこと新庄監督の姿勢は非常に参考になる部分が多いです。

清宮選手の減量について例を出しますと、「プロなんだから身体を絞れ」とただ命令をするのではなく、
「ちょっとデブじゃね? ちょっとやせない?」と声をかけ、
「やせてしまったら打球が飛ばなくなるのが怖いです」と返されると、
「今もそんなに打球は飛んでないよ。昔のほうがもっとスリムで飛んでいた。それはキレがあったから。
やせたほうがモテるし、かっこいいよ」とストレートな言葉で減量をアドバイスした上で、
実際に減量に成功した清宮選手に対して「この短期間で想像を超える減量に驚いています」
とすぐさま褒める行動をとっています。

これも全て個人間のやり取りではなく、メディアを通して発信されたため、
新庄監督は目的を「達成」するまでの方法を教えてくれ、
達成した時には褒めることで「承認」をしてくれる監督だということをチーム全体に浸透させています。

 

これを皮膚科医院の業務に置き換えると、

  • 〇月までにクラーク業務を覚えてもらう。
  • InstagramのフォロワーやLINE友だち追加の目標人数を〇人に設定する。
  • 美容皮膚科のおける美容カウンセリングからの施術予約を〇人達成する。

というような目標をスタッフさん本人と先生で共通認識として定期的に確認し、
達成した段階で院長先生が褒める、認めてあげることで「達成」と「承認」を満たすことができます。

また、その中で特に頑張った人に対してはミーティング時に皆の前で発表することも
モチベーションを向上させるには効果的かと思われます。

 

■家康の叱り方

最後に、マネジメントで重要な「叱る」という行為についてお伝えします。

まず前提として、そもそも「叱る」という行為は

  • 怒鳴る
  • 責め立てる
  • 罵倒する
  • 相手の内面を否定する

というものでは決してありません。

 

「叱る」という行為は
「相手がちゃんと納得した上で、問題点の是正に前向きに取り組む」
「スタッフさんの仕事に対する意識を変化させつつ、モチベーションの低下を防ぐ」
ことが一番の目標です。

それでは、どのような「叱り方」をすれば、当事者との関係をできるだけ悪化させず、
それでいて問題解決へ歩を進められる、そんな理想的なアプローチができるのでしょうか?

戦国時代に終焉を告げ260年の太平を築いた、徳川家康は部下を叱ることに関して優秀だった
という逸話があります。かの徳川家康が部下(家臣)の信頼をつかんだ叱り方をご紹介します。

 

【家康の叱り方: 5ステップ】

1: ミスをした本人、そしてその人と親しい人を呼び出す

2: いつもより語気を和らげる

3: まずは今までの功績をたたえて感謝する

4: そして「今回のミスは君に似合わない」と伝える

5: 今後もこれまで通りの活躍を期待している、と伝える

 

この逸話、ご存じの方も多いとは思いますが、改めて見てみると非常に分かりやすく効果的な叱り方をしています。

「ミスがあったこと」をまず伝え、「改善し、活躍してほしいという意志」も伝えています。

同時にミスを「責め立てる」という空気を出さないよう「日頃の感謝」とともに伝えることで
部下自身の納得感、自戒の念をより強く引き出しています。

そして、「人が身動きできない状況」「逃げ場のない状況」を作り出さないようにしている工夫が
随所に見て取れます。

このステップに沿って相手に伝えることができれば、
働く意識の向上を促した上でモチベーションの低下を防ぐことができます。

ただ、「人を人前で叱責する」という叱り方には注意が必要です。
叱っている側からすればそこまで思い至っていなかったとしても、
「人前で叱責する」というのはその人のメンツをつぶし、必要以上の反発や恨みを買う可能性があります。

 

安定した皮膚科医院経営を行っていくための組織構築には時間がかかります。

日々の診療で忙しい先生にとって少しでもマネジメントの参考になることができれば幸いです。

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