ランチェスター戦略から学ぶ 保険診療による皮膚科経営・自由診療による美容皮膚科経営

ランチェスター戦略は企業経営において古くから取り入れられている戦略でいかにして競合企業との競争に勝ち残っていくかということに着目した戦略です。
この戦略の基となるのは、「ランチェスター法則」と呼ばれる戦争理論です。
ランチェスター戦略は現代の経営においても競合との競争に打ち勝つ戦略として有効であると認められています。

今回取り上げる考え方はランチェスター戦略の中でも市場シェアに対する考え方と対応策です。
人間が2人いれば自ずと優劣がつくと言われますが、「皮膚科経営」「美容皮膚科経営」でも同じです。
ランチェスター戦略では“強者”と“弱者”を判断する際に市場シェアを用います。
この戦略において強者とは市場シェア1位の企業のことで2位以下は全て弱者です。
この戦略で2位以下が全て弱者と呼ばれる理由は「ほとんどの人が日本で2番目に高い山を知らない。」ということに通じます。
日本で1番高い山は?と聞かれた時に富士山を答えられない人はいませんが、2番目に高い山を知っている人はまれです。

このように市場シェア1位企業は認知度が高く自らで市場を動かしていくことができるので強者となるのです。
今回は厳密な市場シェアは使用せず、明らかに地域で一番集患しているクリニックか否かを判断基準にします。
明らかに地域で一番集患しているクリニックはこの戦略で言うところの“強者”です
それ以外のクリニックはこの戦略では“弱者”となります。
自院が強者であるのか、弱者であるのかが判断できればその後取る手段が明確になります。

市場シェア2位以下である弱者の戦略としては「差別化」を意識することが最重要項目でしょう。
保険診療における皮膚科経営では一例を挙げると、先生の診察が終った後にスタッフさんから補足説明をすることで患者満足度を高める取り組みをする、あるいは診療効率を高めることで院内の待ち時間を徹底的に短くするなどです。
美容皮膚科においては、地域には導入されていない新しい美容機器を導入すること、既に取り扱っている施術は勿論、今後強化していきたい施術においても地域における価格を調査し、患者さんにとって魅力的な価格に改定するなどが挙げられます。
上記のような差別化戦略を行うことで、市場シェア1位である強者が持っていない「強み」を手に入れることができた場合には、強者を脅かす、あるいは打ち負かす存在になることが可能です。

診療内容そのもので明確な差別化を図ることは難しいですが、同じ治療方法でも自院ならではのこだわりや先生の経験の深さを周知できるのであればそれも一つの差別化に繋がります。
保険皮膚科で差別化を図るのであれば「ニキビ外来」や「アレルギー科」などわかりやすいフレーズを使い、HPで打ち出すことも有効でしょう。
美容皮膚科では、美容キャンペーンの促進、ホームページ内で先生の動画を埋め込んで文字だけでなく視覚的にも訴求することなどで差別化に繋がります。

これらのように競合医院が行っていないこと、競合医院に勝っている部分で局地的に強者となることが弱者の戦略です。

一方強者の戦略は同質化です。
分かりやすく説明すると、弱者が差別化のために取り組んでいることを自院にも取り込むということです。
差別化を潰すことができれば強者は市場シェアの高さから競争を優位に進めることができます。
例えば、飲料業界最大手のコカ・コーラはUCC上島珈琲の缶コーヒー「UCCコーヒー」に対して「ジョージア」を、大塚製薬の「ポカリスエット」に対しては「アクエリアス」を販売することで差別化を潰しています。
皮膚科で言うと例えば今までは〇〇皮膚科でしか受けられなかった□□治療が、人気のある△△皮膚科でも受けられるようになったから今後は△△皮膚科を受診しようということです。
これは美容皮膚科でも同様です。
このように強者は同質化を行うことで弱者の戦略を潰すことができます。

ただ、実は同質化戦略は強者で無くても使える戦略です。
方法としては自院より市場シェアが低い=患者さんがあまり集まっていないクリニックの差別化を取り込むということです。
中堅規模のクリニックであれば他院が実施している特徴的な取り組みを自院にも取り込むことで自院の強みとすることができます。
人口が減少する日本において今までと同じことをしていては患者さんが減少します。

今後自院が永続的に発展していくためには

1. 自院が地域において“強者”か“弱者”か判断する
2. 強者になれる分野・治療・施術があるかを検討する
3.競合医院の取組みを調べ自院に無いものがあれば積極的に取り入れる

という動きが必要となります。

「自院を末永く繁栄させる」という大きな目的のために是非とも必要な行動を起こしていただきたいと思います。

 

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