皮膚科・美容皮膚科医院経営におけるウィンザー効果との付き合い方

Chat GPTをはじめとしたAIの台頭によりHP検索の仕方や、価値観が多様化していく昨今において皮膚科・美容皮膚科医院経営を取り巻く状況は日々変化しています。
今月は、患者さんに満足してもらうための変化しないテクニックの1つとして、「ウィンザー効果」と上手に付き合う方法をお伝えさせていただきます。

■ウィンザー効果とは?

皮膚科・美容皮膚科で日々診療していく中で患者さんが先生の助言ではなくネット情報や口コミの方を強く信頼し、診療内容に納得いかないとお困りになったことがあるのではないでしょうか?
この第三者から得た情報に対して、高い信頼性を感じること“ウィンザー効果”と言います。
人間は当事者からの直接的な情報よりも第三者から発信された情報の方が、「第三者は利害関係がないので信頼できる情報を発信しているに違いない」と感じる傾向にあります。

例えば、『うちのクリニックはお子様に優しく診療する通いやすいリニックです!』とクリニックから言われるより、『あそこのクリニックは子供にも優しくてすごくいいクリニックだよ。』という口コミを聞いた方が信頼できるのはこのウィンザー効果の働きによるものです。

信憑性の低いネット情報や口コミ対応において、このウィンザー効果に悩まされることも多いかもしれませんが、上手く付き合っていく必要があります。

■ウィンザー効果との付き合い方

・統計結果を活用する
ウィンザー効果活用の初歩的なものとして統計データを掲載する方法があります。
例えば皮膚科医院であれば「シングリックスの帯状疱疹発症予防効果は、50歳以上で約97.2%、70歳以上で約89.8%あり、初回接種後効果が9年間持続することが確認されています。」というように、詳細な統計データを掲載することで信憑性が増します。
他にも、「当院は2020年~2022年の期間にほくろ手術を2020年は450件、2021年は470件、2022年は500件実施しています。」というように、手術件数の実績を訴求することで安心感を抱き、不安感を払拭する効果が生まれます。

・Google口コミ対策
第三者意見の最たるものとして口コミの影響力は年々増しています。
つい先日にも、グーグルマップに投稿された不当な口コミが削除されず利益が侵害されたとして、全国の医師や歯科医師らが、運営する米IT大手グーグルを集団提訴したニュースがありました。

つまり、低評価の口コミによって点数が下がり、医院経営が左右される状況が起きているこということです。
残念ながら怒りのパワーの方が口コミを投稿する原動力になりやすいため良い口コミより悪い口コミの方が書かれやすい傾向にあります。
良い口コミは予想をはるかに超える出来事があってはじめて書かれると思った方がいいかもしれません。
Google口コミが投稿用URLを発行していることからも分かるように口コミを患者さんに依頼することは決して悪いことではありません。
実際のところ短期的に、QRコードを配布して口コミを集める皮膚科クリニックも近年は増加傾向にあります。

口コミを集めることで悪い口コミも増えてしまうのではないか?という不安もありますが、
ウィンザー効果は良い口コミしかない場合「サクラでは?」と疑われることもあるため悪い口コミも含めてリアルな口コミの数を増やすことが重要です。
もちろん本質的な対策として、患者さんが良い口コミを書きたくなるような医師、スタッフの接遇力向上も必要です。
また、美容皮膚科では、「X(旧Twitter)」におけるリアルな口コミを重視する方も増えています。
ニキビ跡やたるみ治療のダウンタイムなどの施術経過を発信している方がいる場合は、美容皮膚科クリニックがInstagramで発信しているビフォーアフター写真よりも信憑性が増す傾向にあります。

・バイアスを解こうとしない
よくある状況としてご自身の症状をネット検索し、この病気であると信じきって患者さんが皮膚科クリニックに来院するケースがあります。
患者さんが信じている病名と診断が違う場合、なぜか不満そうに帰っていったり、質問攻めにあい困ってしまうケースもあるのではないでしょうか?
美容皮膚科においては、施術料金がかかるため、カウンセリング時間が大幅に伸びることもあるかと思います。
ChatGPTのように、検索せずとも聞きたい内容を会話するように打ち込めば回答が得られる時代となり、この現象は加速することが予想されます。

このような場合、患者さんは強くウィンザー効果の影響を受けている状態であるため、先生が不要と感じたとしても、本当にその病気ではないか判別する検査を提案することで逆に安心してもらえるケースがあります。

ほくろが悪性腫瘍かもしれないと不安で受診された患者さんに、ダーモスコープで皮膚の状態を確認した上で、「専用のカメラで確認しますね。」と伝えていただき、「確かにこの大きさでは不安になるお気持ちもすごくわかります。斑点や肌の状態を確認したところ、大丈夫だとは思うのですが、念のため、皮膚の一部を切除して病理検査を行いますか?」
とお伝えすることで、
●安心感
●検査への納得感
が伝わり、患者さんの信頼につながります。

このように、強いバイアスがかかっている場合は否定したり、正論を突き付けるだけでなく、あえて感情に寄り添って患者さんのペースに合わせてみることもひとつかもしれません。

■まとめ

情報が溢れる社会ではAI機能やネットからの情報、口コミからの影響は切っても切り離せない存在となりました。
人々が第三者意見を信頼する傾向にある以上クリニックとしては向き合わざるを得ない大きな問題です。
患者さんの心理を理解し、いち早く自身にとっても患者さんにとってもプラスとなるよう柔軟に行動できた皮膚科クリニックから恩恵を受けていくように思います。

本コラムの内容を皮膚科医院経営のご参考にしていただけますと幸いです。

 

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