皮膚科医院のラインロビング(増患・単価対策)

■ラインロビングの発想

小売業界の集客手法の1つに「ラインロビング」という考え方があります。

「ラインロビング」とは新しい商品カテゴリーや、特定の品種(ライン)を自店で新たに取り扱うことで、競合店や他の業態から売上とシェアを奪う(ロビング)ことを言います。

数年前から小売業では、競合店の増加やネット販売の伸長により、商圏がどんどん狭くなっており、集客が厳しくなっていました。
そこで自店の取り扱いカテゴリーを増やすことで、本来ターゲットとする顧客ではない別の目的を持った顧客を新たに集客してきました。
さらに目的以外の商品を配置することで、いわゆる「ついで買い」を誘発し、買上げ点数を増やし、客単価UPを行ってきました。

一例を挙げると、ここ最近のコンビニはイートインスペースが増えてきています。
イートインスペースが設置されるまでのコンビニは、商品を買う事だけを目的とした顧客をメインとしていました。
しかしイートインスペースが設置されることで、コンビニで買った食品をその場で食べることができ、休憩もできる場となったので、食事や休憩を目的とした新しい顧客を集客できるようになりました。

またコンビニのイートインスペースの設置は、ファミレスやカフェなどの外食産業からの顧客を奪う戦略ともいえ、例えば雑誌だけを買いにきた顧客がもし疲れていたとすれば、食事や休憩をするために食品や飲料をプラスで購入するチャンスが増えたことにもなります。

人口が減少している日本の小売業界では、近年この「ラインロビング」の戦略が多く取り入れられていました。

■皮膚科医院におけるラインロビング

皮膚科医院は小売業ではなく医療業界ですので、皮膚科医院における「ラインロビング」は「奪う」という発想ではなく、「新しいことに取り組む」という考え方の方が適切かと思います。

美容皮膚科診療を行っていないいわゆる一般皮膚科医院であれば、美容皮膚科診療を始めることで、新しいメニューが増え新規患者を呼び込むことに繋がります。
もしくは保険の皮膚科診療においては、例えば皮膚科よりも耳鼻咽喉科で実施しているイメージが強い、舌下免疫療法を新規メニューとして追加し積極的にアピールすることも、新規患者の来院に繋がるかもしれません。
また美容皮膚科診療を積極的に行っている皮膚科医院では、逆に保険診療に注力しアピールすることで、新しいメニューが増え新規患者の取り組みに繋がるかもしれません。

また化粧品、ボディソープ、シャンプー、サプリメントなどを扱っている皮膚科医院は多いかと思います。
これらをトータルで扱うことで、皮膚の健康向上、美容のサービスを1つのクリニックで受けやすくなり、患者にとってはより便利で、より治療効果が得やすく、お悩み改善に繋がりやすくなり、満足度の向上に繋がります。
皮膚科医院にとっては買上げ点数が増え、客単価UPに繋がります。

しかし「ラインロビング」をする上で注意すべき点があります。
それはメニュー数を増やしすぎると、患者が何に特化したクリニックかわかりにくくなり、自院のブランディングが失われ、差別化しにくくなることです。
そのため「ラインロビング」を実施する場合は、自院の強みをしっかりと明確にしブレないようにすることが大切です。
このバランスが崩れるとメインの患者層が離れてしまう可能性もあるので、メニューのバランスと打ち出しは慎重に検討する必要があります。

 

人口が減少していく今後の日本においては、客数が減少する危機感を早くから持っていた小売業に習い、増患対策、単価対策に繋がる「ラインロビング」の発想を皮膚科医院でも参考にしていただければと思います。

 

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