皮膚科医院のDXでオペレーション改善

■2025年問題と皮膚科医院運営

突然ですが『2025年問題』はご存じでしょうか?
急速な少子高齢化が進んでいる日本は2022年現在、モナコに次いで65歳以上の人口比率が世界2位の超少子高齢化社会になっています。
それに加えて団塊世代が75歳以上になる2025年には、生産人口の低下が顕著になると想定されています。
これが2025年問題です。

【出典】総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」

 

その結果、皮膚科医院に来院される高齢者の割合は増えますが、若年労働力人口のクリニック間での奪い合いが一層激しくなり、クリニックで働く優秀なスタッフを確保することが難しくなる可能性があります。
また来院患者さんが多くなりやすい皮膚科医院では、新型コロナウイルスが流行したことによって、患者さん同士の接触機会を減らし院内滞在時間を短くすることが、患者さんのニーズとして高まったこともあり、診療を効率よく行うオペレーションの重要性が同時に高まりました。

 

皮膚科医院のDX化によるオペレーション改善例

生産人口の将来的な減少傾向、そして接触機会を減らし院内滞在時間を削減する対策として「DX化」が挙げられます。
『DX』はデジタルトランスフォーメーションの略で、IT技術などのデジタル技術を駆使して企業のビジネスモデルを変革するとともに、業務、組織、企業文化などを変革し、競争上の優位を確立することが目的とされています。

そしてDX化は2025年問題を解決するための一つの柱として、国が積極的に進めている施策でもあります。

生産業や小売りなどの他業界では、DX化は競争上の優位性を生み出すため多種多様な形で進んでいますが、医療業界では他業種と比較してなかなか進んでいませんでした。

しかしコロナ禍で受診抑制の気運が高まったことにより、来院患者が減少しオンライン診療に取り組んだクリニックが増えたことからも分かるように、医療業界でもDX化が急速に進んでいます。

ではここで皮膚科医院におけるオペレーションを効率的にするためのDX例をご紹介します。
(1) WEB問診
(2) 自動精算機
(3) オンライン資格確認

(1)WEB問診
・HP上にWEB問診への動線を作ることで、来院前に問診票の記入ができ、院内での問診記入をなくすことができます
その結果、車で待機してもらうことや外出してもらうことができるなど院内滞在時間の削減、効率化につながります。

・皮膚科では「市販の塗り薬はどのようなものを使っているか」など、事前に確認しておきたい質問をクリニックで自由に作れるため、紙ベースの問診票よりも柔軟に質問内容を変更しやすくなります。

・受付スタッフが問診票に記載された内容をカルテに転記する時間を効率化できるため、患者対応などの接遇に余裕が生まれます。またクラークがカルテに転記する場合も同様に業務の効率化に繋がります。

(2)自動精算機
新型コロナウイルス感染拡大を機に、自動精算機を導入する皮膚科医院が徐々に増えてきました。
自動精算機の導入はクレジット払い、QRコード決済に対応可能なものが多いため、高額な自費診療の支払い、もしくは現金をあまり持ち歩きたくない方にとって利便性が向上します。

他の診療科目に比べて一般的に患者数が多い皮膚科では、レジ誤差が発生しやすくなります
自動精算機であれば各会計のお釣りに間違いがないため誤差が発生しにくく、レジ締め作業の負担が少なくなり残業時間が短縮されやすくなります。

処方箋を先に渡すかオペレーションを検討する必要はありますが、会計の作業自体はなくなるので業務の効率化に繋がります。
また自費診療と保険診療の会計を分けているクリニックもあるかと思います。
その場合は受付スタッフがレジ会計を2回行わなければなりませんが、自費診療のレジ会計を窓口で行い、その後患者さんに自動精算機で保険診療の会計をしてもらえば、受付スタッフのレジ会計は1回で済むため業務負担の軽減に繋がります。

(3)オンライン資格確認
オンライン資格確認システムが義務化されたことにより、運用を始めているクリニックも増えてきましたが、まだ完全に普及しきっていない印象はあります。
マイナンバーカードを利用する患者さんが少ないため、有用性を感じることができないことが理由であると推測しますが、マイナンバーカードに保険証情報を登録することが十分に普及していない今の段階でも、運用を始めていただければ以下のオペレーション改善のメリットはあります。

・カードリーダーを使わず、保険証記号番号から患者保険情報を取得することが可能であるため、受付スタッフが全て手入力で行っていた作業が少なくなり、作業効率の向上が見込めます

資格過誤によるレセプト返戻の作業を削減できます。

以上がクリニックにおけるDX化の一例となります。

 

■まとめ

今後、皮膚科医院でのDX化が進む可能性は極めて高いと思われます。
上手くオペレーションに取り込むことで下記のメリット(効率化)を実感していただけることと思います。

・少ない人材でも効率的なオペレーションを実現できる。
・スタッフの負担を減らし人材不足を補うことに繋がる。
・患者さんの院内滞在時間を短くすることができる。

皮膚科医院の経営では「1患者さんにかける時間を1秒短縮する、効率化する」だけでも大きな意味があります。

患者さんの待ち時間に対する1秒、先生が皮膚科医院経営を考える時間を増やすための1秒、スタッフさんが美容部門活性化のためにSNSのツールを作成するための1秒。

1秒短縮、1秒短縮の積み重ねが今後の皮膚科医院経営を活性化させることにつながります。

 

ご参考いただけますと幸いです。

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