長期収載品の選定療養に対する皮膚科医院の対応

1【長期収載品の選定療養とは?】
選定療養とは、社会保険に加入している患者が、追加費用※を負担することで保険適用外の治療を、保険適用の治療と併せて受けることができる医療サービスの一種で、これまで入院時等に病室を個室に変更する際の差額ベッド代や金歯等が対象とされてきました。
2024年10月1日からは、医療上の必要性がないにも関わらず、患者さんが「後発品でなく先発品(長期収載品)を使いたい」と希望した場合にも、両者の差額の4分の1を患者自身が負担する仕組み(選定療養)が導入されています。
長期収載品の患者自己負担について詳細はコチラをご覧ください。
2【該当医薬品】
2024年4月19日の事務連絡にて、長期収載品の処方等又は調剤にかかる選定療養の対象医薬品についてリストが発表されました。
リストは全部で1095項目に渡りますが、皮膚科医院においても、処方頻度の高い保湿剤やアレルギー薬も含まれています。
また経過措置はありますが、HP・院内掲示が必須となるため、患者さんへの周知は必須になります。
経過措置の期限については令和7年5月31日となります。
対象となっている医薬品のリストはこちらからご覧ください。
(令和6年4月19日 厚生労働省からの事務連絡より)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001247591.pdf
3【医療上の必要性が認められる場合とは?】
厚生労働省保健局医療課より発表されている疑義解釈では、以下の4つの場合に医療上の必要性が認められると記載されています。
①長期収載品と後発医薬品で約事情承認された効能・効果に差異がある場合であって、その患者の疾病の治療のために必要な場合
この場合は、とある効能・効果についてはまだ特許が切れていないなどの理由でジェネリック医薬品には反映されていないものもあります。その場合は、先発品を使わざるを得ないため、医療上の必要性が認められるということになります。
効能・効果の差異に関する情報が掲載されているサイトは以下をご参考ください。
PMDAの添付文書検索サイト:https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/
日本ジェネリック製薬協会が公開する「効能効果、用法用量等に違いのある後発医薬品リスト」:https://www.jga.gr.jp/2023/09/14/230914_effectiveness.pdf
②その患者が後発医薬品を使用した際に、副作用があったり、先発医薬品との間で治療効果に差異があったと判断する場合であって、安全性の観点から必要な場合
こちらに関しては、有効成分は同じであったとしても、添加物等によって副作用が生じたり、治療効果に差異が生じたりする場合を指します。
③学会が作成しているガイドラインにおいて、長期収載品を使用している患者について後発医薬品へ切り替えないことが推奨されている場合
こちらに関しては、例えば、てんかん診療ガイドライン 2018(一般 2 社団法人日本神経学会)では、「後発医薬品への切り替えに関して、発作が抑制されている患者では、服用中の薬剤を切り替えないことを推奨する。」、 「先発医薬品と後発医薬品の治療的同等性を検証した質の高いエビデンスはない。しかし、一部の患者で、先発医薬品と後発医薬品の切り替えに際し、発作再発、発作の悪化、副作用の出現が報告されている」とされており、このような場合をはじめとして医師が長期収載品を処方する医療上の必要性があると判断する場合であれば、保険給付となる、とあります。
④後発医薬品の錠形では飲みにくい、吸湿性により一包化できないなどの場合
この場合においては、医師への疑義紹介は要さず、薬剤師の判断によって処方を行うことが可能です。ただし、単に錠形の好みという理由では認められていません。
また、上記の理由により、長期収載品について選定療養の対象とはせずに保険給付とする場合には、レセプトに理由を記載する必要があります。
レセプト電算処理システム用コードについては下記をご確認ください。
https://ftp.orca.med.or.jp/pub/data/receipt/outline/revision/pdf/202410-kaisei-taiou-cyoukisyusai.pdf
4【医療上の必要性が認められる場合とは?】
Q1.ジェネリック医薬品を提供することが困難な場合とはどのような場合を言うのでしょうか?
A1. 出荷停止、 出荷調整等の安定供給に支障が生じている品目かどうかで判断するのでは なく、あくまで現に、当該保険医療機関又は保険薬局において後発医薬品を提供することが困難かどうかで判断してよいとされています。
Q2.使用感が合わないなどの理由で長期収載品の医療上の必要性を認めることはできますか?
A2.基本的には、有効成分等とは直接関係のない使用感などの理由については医療上の必要性には当てはまらないとされています。
Q3.院内処方のクリニックにおいて、先発品のみを処方しているのですが、この場合は「後発医薬品を提供することが困難な場合」に該当すると考えて保険給付しても良いでしょうか?
A3.この場合においては、患者さんがジェネリック医薬品を選択することができないため、従来通りの保険給付として差し支えないとされています。
Q4. 医療保険に加入している患者であって、かつ、国や地方単独の公費負担医療制度により一部負担金が助成等されている患者が長期収載品を希望した場合について、長期収載品の選定療養の対象としてよいでしょうか?
A4.国や地方単独の公費負担医療制度の対象となっている患者さんが長期収載品を希望した場合にも、他の患者さんと同様に長期収載品の選定療養の対象となるとされています。
Q5.生活保護受給者が長期収載品を希望した場合について、長期収載品の選定療養の対象としてよいでしょうか?
A5.生活保護の方は、生活保護法における医療扶助という仕組みで医療が提供されています。 その仕組みの中では、原則として後発医薬品を使用することとされているだけでなく、選定療養費は医療扶助の支給対象とはならないとされております。 よって、患者希望による長期収載品の処方は認められないと解釈できます。
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